「社員にならない?」の誘いを受けたことがある人が半数近くも! 知られざる「派遣」の実態

これまで仕事に多くの時間を費やし、バリバリ働いてきた女性も、結婚や出産など、将来のことを考えると「この先ずっと、今の働き方を続けるのは難しいかも」と思うケースは少なくないだろう。正社員より仕事の負担は軽くしたいけど、アルバイトやパートじゃ物足りない気がする。「間を取って派遣社員で…」とも思うけど、ちょっとマイナスなイメージがあるのが不安。
実際のところ、「派遣」という働き方はどうなのだろう? 株式会社キャリアデザインITパートナーズが運営する「typeのIT派遣」の派遣登録者、男女90人のアンケート結果から、派遣という働き方に対するギモンに迫った。

派遣の実態1:キャリア編
「キャリアアップできない」はウソ

●ギモン1、社員になれなかった人が派遣で働いているんでしょ?
⇒女性の場合、「仕事と私生活の両立」を目的とする人が最多。

派遣社員で働く道を選んだ理由を聞いたところ、女性の場合は「仕事と私生活の両立がしやすい」「すぐに仕事に就ける」と答えた人が最も多く、そのあと次に「働く期間や時間を選べる」という理由が続く。家庭や育児、趣味などの私生活を優先したい女性に支持されているようだ。

派遣社員としての働き方を希望した理由

●ギモン2、仕事熱心ではない人が多いイメージ。実際はどうなの?
⇒企業準備やスキルアップ目的の場合も。

「興味のある職種がいくつかあり、挑戦してみたい」(20代前半/女性/商品企画・マーケティング)、「将来起業するために勉強している」(30代前半/男性/一般事務)といった、自分の可能性を試したり、勉強の場として派遣を活用する人もいれば、「気学の勉強をしている」(30代後半/女性/接客・販売)、「ペット重視の生活がしたいから」(20代後半/女性/一般事務)といった、プライベートの時間を優先させるために、無理なく働く手段と考える人も。また、あくまでも「正社員で就職するまでのつなぎ」(30代後半/女性/経理・財務)として利用しているケースもあり、派遣で働く理由はさまざま。「派遣=仕事熱心ではない」というのは偏ったイメージかも。

●ギモン3、派遣社員として入社したら正社員にはなれないんでしょ?
⇒「ウチで社員にならない?」の誘いを受けた人が半数近くも!

派遣で働いたことがある、または働いている人に「派遣先から正社員や契約社員への切り替えを打診されたことがあるか?」と聞いてみたところ、なんと全体の半数近い46.8%が「ある」と回答! 派遣からのスタートであっても、仕事ぶりや勤務姿勢が評価されれば、社員登用される可能性は思いのほか高いのかも。その会社でのリアルな働き方が分かった上で、社員になるかどうかを決められるので、入社してみたら激務だった…なんて心配がないのは嬉しいところ。

派遣先から「社員にならないか」という誘いを受けたことがある

●ギモン4、派遣期間が終了した場合、すぐに次の仕事は見つかるの?
⇒約60%の人が1カ月以内に次の仕事を見つけている。

派遣社員で働くことのデメリットについて聞いたところ、「契約期間がいつ終わるかわからない」(30代前半・女性/一般事務)など、働ける期間に空白ができることへの不安を挙げる意見はやはり多かった。ただ、「派遣期間終了後、次の仕事が見つかるまでの期間は?」という質問に対しては、「就業中に決まることが多かった」(27.3%)、「1週間未満」(5.2%)、「1週間から1カ月未満」(26.0%)と、まとめると約60%の人が1カ月以内には次の仕事を見つけているという結果に。もちろん希望条件や案件の状況次第だが、早めに次の仕事を探すことがポイントになりそう。

次の仕事が決まるまでにかかった時間

派遣の実態2:環境編
「派遣=ゆるく働く」ではない

●ギモン5、派遣って、残業ゼロが当たり前でしょ?
⇒派遣先の会社によって、月平均で50時間近く残業があることも。

派遣で働いている、もしくは働いたことがある人に月間の平均残業時間を聞いたところ、「0〜10時間未満」が全体の36.4%と最多に。しかし、その一方で「40時間〜50時間」との回答も7.8%あった。残業時間は派遣先の会社次第。ただし、残業代はきちんと支給されるので、納得感を持って働くことができそうだ。なお、目安の残業時間は、事前に派遣会社を通じて確認することが可能。

残業時間

●ギモン6、派遣期間だけの付き合いだから、人間関係は希薄なんでしょ?
⇒派遣先の人間関係で困ったことがある人は半数以上!

「派遣先で人間関係に困ったことはありますか?」という質問に対し、「ある」と回答した人は51.9%と、全体の半数以上。一緒に働く上司や同僚との相性次第で人間関係の良し悪しが決まるのは、どの雇用形態でも同じであるよう。
ただ、「残業は多くできないと伝えてあったにも関わらず、40時間ぐらい残業しないと終わらない量の仕事を振ってくる若い社員さんがいたときは困りました。派遣会社を通じて上長に話をしてもらいました」(30代前半・女性/Webデザイナー)のように、直接言いづらいことも、派遣会社を通して相談することができる。

人間関係

●ギモン7、全く経験がない仕事でも、派遣されたらやらなきゃいけないの?
⇒即戦力が求められるので、未経験の仕事に派遣されることはほとんどない。

派遣社員は即戦力としての力が求められることが多い。企業側が「育成に時間をかけるなら社員で採用をする」と考える傾向にあり、そのため未経験者に向けた案件は少ない。しかし、だからこそ、「ピンポイントでスキルを伸ばせる」(30代前半/女性/一般事務)といった意見もあり、集中的にスキルを磨けることにメリットを感じている人もいるようだ。

派遣の実態3:待遇編
社会保険、雇用保険、労災に加入できるも、交通費は自己負担

●ギモン8、社会保険や有給がないんじゃないの?
⇒どちらもある。

健康保険、厚生年金保険、雇用保険などは、週の労働時間数や契約期間、雇用の見込み期間などが所定の要件を満たしていれば加入でき、労災保険も適用される。契約期間終了後も、1カ月以内に同じ派遣会社を通じて新たな派遣先が決まれば、社会保険の継続が可能だ。
さらに、有給休暇制度も、就業開始から半年を経過すれば取得することができる。ちなみに、派遣で働く理由を聞いたところ、「社会保険に入れるから」と回答した女性は全体の15.2%。(1ページ目のグラフ1参照)福利厚生面にメリットを感じている人も少なからずいるようだ。

●ギモン9、交通費が出ないって聞いたんだけど…
⇒交通費は全額自己負担が一般的。

派遣社員の場合、基本的に交通費の支給はなく、全額自己負担となるのが一般的。「交通費が出ないので遠いと残念」(30代前半/男性/Webデザイナー)といった声は多く、必然的に自宅からの距離や、交通費の安さを重視して仕事を探すことになりそうだ。

●ギモン10、正社員と派遣、やっぱり差はある?
⇒「差がある」と回答した人は約半数。

「正社員との派遣社員で扱いに差がある」と回答した人は46.8%と半数近くに上った。「仕事の進め方など、『もっとこうしたほうがいいのに』と思うことがあっても進言しづらい」(30代後半/女性/営業事務)、「契約外の仕事を手伝えない」(30代後半/女性/営業)など、意見が言いにくかったり、正社員と派遣社員の仕事の範囲に戸惑ったりするケースが多いよう。派遣先企業の考え方や風土によるところも大きいので、事前に派遣会社に確認してみると安心。

待遇の差

今回のアンケートから、さまざまな派遣の実態が明らかになった。すぐに仕事に就きやすく、私生活との両立もしやすいこと。今後の働き方を考える期間のつなぎとしてもいいし、派遣で働いてみた上で、自分に合いそうな会社であれば、そのまま正社員登用を目指してキャリアアップを図ることもできること。結婚や出産などで自分を取り巻く環境が変わったり、仕事とプライベートの両立に不安を感じた時に、選択肢の一つとして検討してみる価値はありそうだ。

【アンケート調査概要】
●調査方法:株式会社キャリアデザインITパートナーズが運営する「typeのIT派遣」の派遣登録者(現在の雇用形態は問わない)へのWebアンケート
●調査期間:2014年1月15日~24日
●有効回答者数:90名

文/上野真理子