「人種への先入観をなくしていきたい」イギリスを拠点に活動する女優・森尚子さんの目標


“NO!”から逃げなかった経験がベースにある
これだけの困難な仕事に挑戦できた背景には、「覚悟して飛び込めばなんでもできるという信念がある」と森さん。そう思うようになったきっかけは、17歳でデビューしたときに出演していたミュージカル『ミス・サイゴン』での出来事にあった。
「主役のキムの代役としてリハーサルを始めたばかりだったのに、幕が上がる数分前に『今日、あなたにはキムを演じてもらう』とスタッフから言われたことがありました。まだフルオーケストラをバックに歌ったこともなかったので、本能的に“NO!”と頭に浮かびましたが、他に演じられる人はいないし、やるしかない。その時の『逃げたい気持ち』を乗り越えて演じ切れた経験がベースにあります」
「私は運命を信じているんです」と森さんは続ける。
「本作はものすごくチャレンジングな仕事でしたが、このタイミングで本作のお話をいただけたことにはきっと意味がある。それに、できないと思っていても、いざやってみれば予想以上の馬力が出るものです。人間は誰しも、ものすごいパワーを秘めているんですよ。だから私はどんな困難なオファーでもできるだけプラスに、できるだけ引き受けるように心掛けています」
“日本人”をステレオタイプに捉えた役柄は絶対に引き受けない

そんな森さんだが、仕事を選ぶときの大きなこだわりが1つある。「“日本人”をステレオタイプに捉えた役柄は絶対に引き受けない」ということだ。
「もちろん私は日本人ですし、日本人としてのアイデンティティーを大切にしたいと思っています。でも一方では“日本人”というラベルのない女優になりたいという思いもあるんです。人種への、誰もが持つ先入観をなくしていきたい。なので、アジア人や日本人である必要のない役に、あえて積極的に挑戦しています」
森さんが日本人役を演じているのは、本作の難波康子さん役のほか、数作品のみ。日本人であることを特別視するのではなく、あくまでも“森尚子という女優”として見てもらいたい。それが、森さんの大きな目標だ。
「人生観が変わるほどの経験だった」という『エベレスト3D』。難波康子さんという稀有な女性登山家の冒険に思いを馳せるとともに、それを演じた森尚子さんのグローバルな生き方や考え方にも目を向けてみてほしい。

『エベレスト3D』
11月6日(金)全国ロードショー
1996年に起きた実話をもとにした作品。エベレストのベースキャンプ(標高5334メートル)での1カ月間にわたる入念な準備ののち、はるか3500メートル先の頂上を目指す冒険に出発した登山家たち。しかし頂上アタックの日、ロープの不備や参加者の体調不良などでスケジュールが狂い、下山が大幅に遅れる。さらに追い打ちを掛ける未曽有の嵐。ブリザードと酸欠との闘いの中、果たして全員がキャンプにたどり着けるのか? 公式サイト:http://everestmovie.jp/
『Another Action Starter』の過去記事一覧はこちら
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