良い子でなくてもいい――「意思を貫くこと」で知った新しい幸せ【今月のAnother Action Star vol.17 植村花菜さん】

another action starter
 植村花菜

日本語で貫き通したストリートライブ
自分に正直に生きる大切さを学ぶ

ロサンゼルスに降り立った植村さんは、そこから、セドナ、グランドキャニオンと旅をし、サンフランシスコへ。そして、ジャズの聖地でもあるニューオーリンズの「ジャズ・フェス」を訪れ、本場の音楽を肌で感じていった。

 植村花菜

「時間を見つけては、ストリートライブをやったり、その場で知り合った人のツテでライブハウスに飛び込んで歌わせてもらったり。前年のナッシュビルで『日本語だから意味が分からない』と言われましたが、今の自分でどこまで通用するかを試したかったので、自分の歌をあえて日本語で歌っていました。やはり、『ここはアメリカなんだから英語で歌った方がいいんじゃない?』という人もいれば、『意味は分からないけれど気持ちが伝わった』と涙してくれる人もいらっしゃって。いずれの意見もありがたく、とても素晴らしい経験を積むことができました」

その後、列車やバスを乗り継いでメンフィス、そして前年に訪れたナッシュビルへ。その時にお世話になった方々との再会を果たした後、ニューヨークでもストリートライブやライブハウスでのセッションなどを楽しんだ植村さん。

当時、現地でデビュー7周年を迎えた植村さんのブログには、『自分の意見を貫き通すこと、時にそれは周りの人を傷つけたり、迷惑を掛けてしまったり理解してもらえないこともあるかもしれないけれど、私は自分の音楽を、正直に、素直に、これからもありのまま生み出していきたいと思います。(2012年5月11日)』という決意がつづられている。

「テレビの仕事で訪れたナッシュビルの経験も含め、アメリカで得たもので一番大きかったのは、自分に正直に生きることの大切さを教えてもらったことですね。それまでの私は、自分が良い子でいて、気持ちを抑えた方が周囲は幸せだろうと勘違いして、我慢している部分があったんです。でも、自分の本当の気持ちを抑えて周囲とのバランスを取ったところで、それは周囲にとっても自分にとっても本当の幸せではないことに気付かされました。自分の気持ちを正直に話して、それを分かってくれる人が、自分にとって一番大切な人。万人に好かれるのではなく、自分らしさを分かってくれる人と深く付き合っていき、その人たちを私なりの方法で幸せにしていきたい。アメリカの“正直文化”で、そんなことに気付かされました」

守るべきものは増やさない
手放す潔さが自分を向上させてくれる

今回リリースする洋楽カバーアルバム『The Covers ~60’s to 70’s~』は、ポップスをジャズテイストにアレンジしている。ニューオーリンズやニューヨークで本場のジャズに触れ、ジャズは決して難しくない、楽しい音楽なんだ、と感じたことを表現したかったという植村さん。ボーカルとギターを担当する植村さんを中心に、ピアノ、ベース、ドラムのカルテットで軽やかに曲の世界観を表現している。

植村さんは、Woman typeの読者に対し、「新しいことへのチャレンジは絶対にオススメ!」と、力強く話す。

「正直、英語もできない、知り合いもいないという状態ですから、行く前は怖かったです。事件に巻き込まれたらどうしようとか、普通に考えましたよ(笑)。でも、行ってみたら、あちこちで友達がたくさんできました。『ウチに来なよ』と言ってくれる人もいたので、ほとんどホテルに泊まらずに済んだほどです。新しいチャレンジには不安や怖さもあるけれど、それを乗り越えれば、必ず扉が開けるんですよね。旅を経験して、これからもずっとチャレンジ精神を忘れないでいたいと思いました」

新しいことへ臆することなくチャレンジすることができる自分でいるために、植村さんが心掛けていることがある。それは、「守るべきものを増やさないこと」。モノはもちろん、気持ちやスタンスなど、大人になるとどうしても手放すのが怖くなるものたちに執着しないというのが、植村さんの生き方だ。

「さすがに、ダンナさんや家族は捨てられませんけれど(笑)。守りたいもののために何もできなくなってしまうことが怖いんです。だから私は、あえて今持っている物や気持ちに執着しないように心掛けています。物も気持ちも、手放した分だけ新しいものが入ってくるんですよね。向上していきたいのなら、思い込みやしがらみから身軽でいないと。いつでもパッと手放して、すぐに先に行ける状態を作っておきたいと思っています」

30歳を過ぎ、結婚をしても変わらずに、自分に正直に。これからも植村さんは、ギター一本と共に、たくさんの経験を重ねていくに違いない。

『The Covers ~60’s to 70’s~』 2014年8月27日発売

『The Covers ~60’s to 70’s~』 2014年8月27日発売

スタジオセッションレコーディングによって表現された、植村さん初の洋楽カバーアルバム。時代を超え世界中で愛される60年代~70年代のスタンダードな名曲の数々に、ジャズテイストのアレンジを加え、透明感溢れる歌声で歌い上げている。また、新橋の『コンセプトカフェ』では、植村さんの「思い出の食卓」を再現した、『肉巻きとポテトサラダのランチプレート』が8月29日まで楽しめる。 コンセプトカフェ:http://shoku-plus.jp/concept

取材・文/朝倉真弓 撮影/竹井俊晴

  1. 1
  2. 2