04 JUN/2012

大事なのは自分が楽しむことよりも“みんな”が笑ってくれること【 今月のAnother Action Starter vol.3お笑い芸人 渡辺直美さん】

another action starter
渡辺直美

自分に対する怒りとほんのちょっとの勇気が
硬い殻を打ち破った

“緊張しい”の直美さんのコンプレックスは、「お笑いの真剣勝負」の経験が少ないことだった。
そんな直美さんが、去年、お笑い芸人が1対1のトーナメント形式で面白さを競い合う深夜番組『オモバカ』に参加した。

「視聴者として見ていて、『自分には絶対ムリ!』と思っていた番組なんです。お客さんの目の前で、お笑いの先輩方を相手にガチで勝負するなんて、想像するだけでお腹を壊してしまうぐらい緊張しちゃうんですよ」

それまで、『いいとも!』や『ピカルの定理』など仲間とともに笑いを作り上げる仕事が続いていた直美さんにとって、ピン芸人として真剣勝負の舞台に立つのは相当プレッシャーがかかることだった。

そんな極度の緊張感を抱えて臨んだ1回戦は、やはり女性芸人であるアジアンの馬場園梓さんとの対決だった。

「舞台に上がってふと感じたのが、お客さんの少し白けた雰囲気でした。多分、ベテラン同士の白熱した戦いを期待していたお客さんが発する、『女同士の戦いなんて』っていう空気だったんだと思います。その“期待されていない感”を感じたとたん、急に腹が立ってきたんです。こんな悔しい状況に立たされているのに、“緊張しい”で何もできない自分に腹が立ったんです」

その怒りをばねに「絶対にいいところまで行ってやる」と誓った直美さん。
その瞬間に、彼女の中で何かが吹っ切れた。

馬場園さんに続き、それまで“絶対王者”と呼ばれていた劇団ひとりさんにも快勝することができたのだ。
そのときに直美さんが感じたのは、「絶対王者に勝った」という満足感を遥かに超える、「自分に勝った」という達成感だった。

「ほんのちょっとの勇気と怒りが自分の殻を破ったんです。この経験で、私はひとつ大きくなれたんだと思ってます」

それからは『オモバカ』のような極度の緊張を伴う戦いにも積極的に取り組むようになったが、もちろん、新しい挑戦の全てが成功するわけではない。勇気を出した挙句に失敗し、とんでもない状況になったこともあるという。

「そんなときは『ファミレスバイトに戻りたい』なんて思いますよ(笑)。でも、お客さんの前でネタをやると、もうお笑いはやめられないって感じるんです。やっぱり、どんなに緊張しても、お客さんに笑ってもらうことが大っ好きなんですよね」

男の芸人に張り合うのはやめた。
男女の得意分野は違うのだから

渡辺直美

周囲の人の気持ちを考えるあまり発言ができなかったり、緊張し過ぎて体調を崩してしまったり。そんな直美さんの素顔は、仕事中にさまざまなストレスにさらされている、ごく普通の女性たちと何ら変わりはない。それは彼女自身が強く感じているように見えた。

そのことを直美さんに告げると、彼女はぐっと前のめりの姿勢になりこう言った。

「そう! そうなんですよ。男性に負けたくないと気を張っている女性であればあるほど、たくさんストレスがたまるはずなんです!」

直美さん自身、以前は「男芸人に負けるものか!」と、必要以上に気を張っていた時期があったという。

けれど、女芸人が男芸人と同じことをやってもウケるとは限らない。たとえ男芸人のように身体を張って笑いを取りに行ったとしても、なんだか痛々しくさえ見えてしまうことがある。

だから女性は、「出来ないことや弱い部分は男性に任せてもいいんじゃないかな」と、直美さんは笑う。そもそも男女の得意分野は違うんだから、張り合うんじゃなく補い合えばいいということをお笑いという仕事からも感じ取っているのだろう。

「もちろん働く女性も、男性と同じように一生懸命頑張ることが大切。それを前提とした上で、男性の方が得意なことはどんどん任せて、弱みを見せちゃってもいいと思うんですよね。いやらしい意味ではなく、“女の武器”を上手に使った方がお互いに働きやすくなると思うんです」

ただし、そう言う直美さん自身は、他人に弱い部分を見せるのが苦手なのだとか。
だからこそ直美さんは、思うように発言できない自分に落ち込んだり、時には真剣勝負の場に出て勇気を振り絞ってみたりという試行錯誤を、ひとり延々と繰り返している。そして、少しずつ、少しずつ、自分の限界を越えようとしているのだ。

お客さんと共に楽しみ
大笑いできるライブを計画中!

直美さんは、この夏、恒例の単独ライブを予定している。ここでも周囲に気を配る直美さんらしく、独りよがりにならずに、お客さんと楽しみを分かち合いたいという目標を持って内容を吟味しているという。

「単独ライブだからといって、自己満足ではダメだと思うんです。自分のやりたいことだけをやっていいんだったら、1時間半ずーっとビヨンセの当て振りをやっていたいんですよ、本当はっ!(笑)。でも、そんなことをしている自分を想像したら、お客さんが誰も笑ってない様子まで見えてきて、イメトレで絶望的な気分になっちゃいます。もちろん実験的なことも盛り込みますけど、みんなが笑ってくれることをやって、自分も心から楽しめるライブを作っていきたいですね」

今度のライブでは、グラミー賞歌手であるアデルのライブバージョンの当て振りをしたいという企みを思案中。まだスタッフにも相談していないので実現するか分からないと言いつつ、アデルを知っている人はもちろん、全く知らない人でも楽しめるネタを作りたいと意気込む。

「お笑い以外の仕事? 野望としては、シリアスな殺人鬼とか、暗-い役で映画に出てみたいなという気持ちもあるんですよ。いまの自分に求められる役とぜんぜん違うから。でもいまはとにかく、芸人として頑張っていくことだけを考えています。お笑いって、楽しいけどいろいろ大変ですから!(笑)」

よしもと芸人による笑えるニュース動画サイト JOOKEY
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