「日本の伝統を次世代につなげたい」ミレニアル世代の起業家に聞くライフワークの見つけ方【和える 矢島里佳さん】
幸せな働き方は自分で選べる! 新時代に輝く女性たちへのインタビュー

「和える」代表取締役
矢島里佳さん
1988年生まれ。東京都出身。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時である2011年3月、株式会社和えるを創業。慶應義塾大学卒業
――あなたのお仕事は?
「日本の伝統を次世代につなげる」ことを目的とした会社「和える」の代表を務めています。
〝0歳からの伝統ブランドaeru〞、地域の伝統や文化を体感できるホテルの一室をプロデュースする〝aeru room〞、企業の持つ伝統を紐解き、次世代へのつなぎ方をともに策定する〝aeru re-branding〞など、複数の事業を手がけています。

2014年に事業拠点である東京「aeru meguro」を創設。翌年、京都「aeru gojo」も
――「和える」という名前に込められた想いとは?
伝統や先人の智慧(ちえ)と、現代を生きる私たちの感性や感覚、それぞれの本質を大切にしながら、「和える」様子を表現しています。
「ほうれん草の胡麻和え」は素材の味を残しながらも、両者が合わさることでよりおいしくなりますよね。まさにあのイメージです。
――この道でやっていこうと思ったきっかけは?
1988年生まれで、バブル崩壊以降の「失われた20年」に育った私にとって、「右肩上がりの社会」は当たり前のものではありませんでした。
経済的な豊かさだけでは豊かになれないことを、この現代史から学び、人間には心の豊かさを満たすことが必要であると感じて。
自然と日本の伝統文化や精神性を次世代に伝えることに惹かれ、道を歩んでいました。
――日本の伝統文化に注目した理由は?
子供時代は、千葉県のベッドタウンで暮らし、習い事も西欧由来のものが多く、日本の伝統からは縁遠い暮らしでした。
その後、中学・高校で「日本に憧れる」感覚で茶華道部に入って、その奥深さに魅了されました。きっと、同じように感じる同世代の方も多いのではないでしょうか。
私たち世代にとって、日本文化はかっこよくて、美しいもの。新鮮な魅力があるように思います。

――日本の伝統文化の情報発信を開始したのはいつから?
大学時代です。自分で企画書を作り、ご縁をいただき、全国の伝統産業の職人さんに会いに行くコラム連載を3年間雑誌に執筆しました。
20代から40代の若手の方を対象にしたので、私にとっては少し年上のお兄さん、お姉さんという感じの距離感で取材ができました。
そこで印象的だったのは、メディアで語られがちな無骨で気難しそうな職人像とは違って、ある意味〝普通に〞生き生きと働く職人さんたちの姿でした。
そのとき、伝統と共に暮らす豊かさに気づきましたが、私たちの暮らしで身近なものにしていくためには、言葉だけの発信では限界があることも感じて。
それでモノを通して、伝統を伝えようと考えたんです。
――モノに焦点をあてたということ?
はい。伝統を次世代に伝える循通環が途切れることがないように、まずは生まれたときから出逢えるように赤ちゃんや子供たちに向けて、モノを通して日本の伝統を伝える〝ジャーナリスト〞になろうと決めました。
しかし、そのような事業を行う企業はなかったので、ないなら自分で創ろうと起業することに。
資金は、東京都中小企業振興公社が主催する「学生起業家選手権」で得た賞金をあてて実現しました。
――起業してからうれしかったこと、困難だったことは?
お客様から「aeruの製品を家に迎えてからは、ほっこりする時間ができました」や、「親子の会話が広がりました」などといった言葉をいただくときはうれしいですね。

写真左:2箔にフランスの伝統技術「ギルディング」を採用した五十崎和紙の紙風船、写真右:グッドデザイン賞受賞の「こぼしにくい器シリーズ」
「和える」はジャーナリズムであると同時に、日本の伝統を通して、私たちの社会や暮らしが、より優しくより美しくなることを目指しているので。
困難だったことは、お金や人材の育成です。ただ、私は会社経営を「和えるくん」という存在の育児として捉えています。
その観点に立つと、社員は「和えるくんのお姉さん、お兄さん」として末っ子を一緒に育む存在。
こうした自分なりの発想が、助け合いの精神で生きて働く、赤の他人同士で行うファミリービジネスというスタイルを生み出しました。
――あなたにとっての理想の仕事(働き方)とは?
社会の役に立つ仕事。生きていることで、すでに誰かを幸せにしていると思いますが、大人になったらもう少し具体的に社会に関わり能動的に誰かを幸せにすることが、働くことの魅力ではないかと。
そして、「生きる」と「働く」は私の中で一体です。
「豊かに生きるから、豊かに働ける」という、日常の暮らしを大切にする姿勢は、自分の両親や、伝統産業の職人さんたちからも学びました。
――これから何かを始めたい人へのアドバイスは?
自分に素直に生きること。他の誰かや社会に合わせて生きたら、どこかで無理が生じます。
何か始めようとしたとき、最初の核となる本質がずれてしまうと、後で軌道修正がしにくくなります。
自分が幸せに生きるためにも、長期的に取り組めるような仕事にするためにも、まずは自分に噓をつかずに生きることから始めてみてはいかがでしょうか。
※この記事は『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)より、転載しております
『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)

本書は、自分らしい幸せな仕事や、固定観念にとらわれない柔軟な働き方を見つけた女性たちにスポットを当てたインタビュー集です。
「自分も何かやってみたい! 」と考える方に向けて、新しいロールモデルをご紹介する一冊となっています。この本を手に取った方が、少しでも何か前に一歩踏み出せますように……。
『これが私の生きる道!』の過去記事一覧はこちら
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