自らの希望で子連れ単身赴任! 結婚しても子供がいても「やりたいこと」は諦めない

20代後半の女性たちがよく口にする、「30歳になっちゃう」という言葉。なぜ私たちはこんなにも30代になるのが怖いのだろう?
これからの人生について、一人であれこれ悪い想像をしてしまうから? それなら、少し先の未来を歩く先輩たちが、何に悩み、何に喜びながら30代を過ごしてきたのかを知れば少しは不安がなくなるかも。すでに30代を乗り越えた“40’sウーマン”たちが語る等身大の言葉に耳を傾けてみよう。

自らの希望で子連れ単身赴任! 結婚しても子供がいても「やりたいこと」は諦めない

サッポロビール株式会社
人事部 シニアマネジャー
美野佳美さん(40歳)
1997年、サッポロビール入社。情報システム部を経て、大阪で営業企画部に配属となり、主にワインのエリアマーケティングを担当。29歳で結婚、翌年に出産。育休からの復帰と同時に総務へ移り、労務を担当。2010年、東京本社の人事部に異動。現在は組合との交渉や人事制度の設計などを担当している

キャリアアップのために異動を希望
夫を関西に残して、娘と二人で上京

私は現在、“子連れ単身赴任”の真っ最中。それまで住んでいた奈良に夫を残し、5年前に当時小学1年生だった娘を連れて母子2人で上京しました。私が35歳の時です。

実は東京への異動は、前々からの希望でした。20代のころは大阪の営業企画部で主にワインのエリアマーケティングを担当していましたが、30代に入ってから近畿エリアの総務部で労務関係の業務を担当することに。そこで人事の仕事の面白さに目覚めて、「人事でキャリアを積むなら、ぜひ東京の本社で仕事がしてみたい」と考えたのです。地方でも人事の仕事はできますが、どうしても業務範囲が限られますから、スキルや能力を伸ばすなら本社での経験が必須です。それで会社にも、たびたび異動の希望を伝えてきました。

ただ、私の夫は関西にしか拠点がない会社に勤めていたので、私が東京へ異動になれば、彼は今の会社を辞めて東京で就職するか、一人で大阪に残る以外に選択肢はありません。もちろん結婚した当初から、「自分は総合職なので全国転勤の可能性がある」とは伝えていました。その機会が目の前に迫って来ると、夫も簡単には受け入れられないようで、最初は話し合いをしようとするだけで「聞きたくない」とシャットアウト。それでもめげずに、ことあるごとに「もし転勤になったら、私は行くからね」と伝え続けました。そして念願がようやくかない、実際に辞令が出た時、夫がつぶやいたのは、「あなたは自分がこうと決めたらやるんでしょ」という一言。納得したというより、なかば諦めに近い気持ちだったのかもしれないですね(笑)

もう一つの問題は、娘のことでした。異動の希望を出していたころは、ちょうど娘が小学校への進学を控えていた時期で、実は関西で受験をしていたんです。ところが学力的には合格だったものの、最後に行われる抽選で、娘は次点となってしまった。その時に私は「これは神様が東京へ行けと言ってくださっているんじゃないか」と思ったのです。もし娘が抽選も通っていたら、私も東京へ行くのをためらったかもしれませんが、逆に誰かが背中を押してくれた気がして、上司にも「本社に異動するなら今しかありません!」と伝えました。

もちろん娘ともきちんと話し合いました。「あなたには3つの選択肢があるの。ママと一緒に東京へ行くか、パパと二人で奈良で暮らすか、ママともパパとも離れておばあちゃん家で暮らすか。あなたはどうする?」と聞いたら、「ママと一緒に行く」と言ってくれて。それで子連れ単身赴任をすることが決まりました。

どこが住みやすいのか、
異動が決まる前から周到に下調べ

自らの希望で子連れ単身赴任! 結婚しても子供がいても「やりたいこと」は諦めない

とはいえ、慣れない土地で育児と仕事の両立ができるのか、不安がなかったわけではありません。夫とは遠距離になるし、私の実家は関西なので、東京で頼れる人はいない。だから異動が決まる前から、周到に準備を進めました。学童保育が充実しているエリアを調べ、出張で東京に来るたびに実際に足を運んでみたのです。夜10時まで預かってくれる民間の学童施設が見つかったので、その沿線の駅を一つずつ降りて、どこが住みやすいかを確かめたりもしました。そうするうちに不安も薄れてきて、「何とかやっていけそうだ」という自信が生まれてきたのです。

最終的には会社の近くに住むことにしたのですが、それが大正解。自宅も娘の学校も近いので、仕事中でも何かあればすぐに行き来ができる。朝からPTAの行事に出席し、昼前には通常の仕事に戻るといったことも可能です。それに私は周囲の人にも恵まれました。ある時、翌日に日帰り出張をする予定だったのが、台風の影響で急きょ現地に前泊することになりました。学童に娘を迎えに行けないし、一人きりで一晩家に置いておくわけにもいかない。切羽詰まってあるママ友に連絡したら、「うちで預かるから、安心して行ってきて」と言ってくださって本当に助かりました。一人で子育てをしていると、「どうしよう!?」と思うことが次々に起こりますが、私が乗り越えてこられたのは周囲の助けがあったからです。

おかげで私自身は仕事に打ち込むことができて、ますます人事の仕事が楽しくなりました。最近は人事制度の設計を手掛ける機会も多いのですが、経営陣のメッセージを形にしたものが人事制度だと考えているので、それを作り上げることにやりがいを感じています。また、社内への影響力が大きい仕事を任されているという醍醐味も実感しています。今後は自分の経験を生かしながら、社内のワーキングマザーを支援する仕組みを会社に提案していきたいですね。

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