コロナ禍の今、改めて「女性のIT分野進出」が大事だと思う理由【連載:ITをカラフルにする現場から】
現在、日本のIT業界における女性技術者の割合は15%以下。日本で理系分野の学部に所属する男女比は、OECDワースト1位。この、テクノロジー分野のジェンダーギャップを解消するには…?一般社団法人Waffleの二人が「ITと女子」を取り巻く問題や、課題解決に向けての取り組みを発信していきます。
はじめまして。IT分野のジェンダーギャップの解消を目指し、女子中高生向けにIT教育や政策提言を実施しているWaffle Co-Founder & CEOの田中沙弥果です。
皆さんは、日本国内のIT業界で働く女性技術者の比率が20%以下と低く、将来IT業界を目指す学生についても、大学の工学部を例にとると女性比率は15%以下ということをご存知でしょうか(*1)。私たちは、そのような社会課題に対して、もっと多くの女性がIT分野に進出してほしいと考え、日々活動しています。
(* 1)文部科学省「令和元年度学校基本調査(確定値)の公表について」より
なぜ、そのように考えるかというと、今後社会の重要な基盤となるIT技術に、異なるジェンダー間での不平等や不利益が起きると、社会に実害が起こる可能性があるためです。
例えば、米国ではAIを活用した採用システムの開発中に、女子大生を選考で落とす出来事がおき、その後システムの開発中止に至りました。これからの社会にとって、IT分野の作り手が多様であることが、豊かな社会につながると考え、私たちは「 #ITをカラフルに 」と謳って活動しています。
私たちの主な活動は、女子中高生を対象にしたものですが、Woman typeをご覧になっている社会人の方々にも、ぜひ私たちの考えを知っていただき、IT分野にチャレンジしてほしいと思っています。
今回、Waffleの代表である私と共同代表の齋藤明日美(@AsumiWaffle)とで連載を持たせていただくことになりました。
ITをカラフルにする活動とは?
Waffleが女子中高生を対象に活動を行っている大きな理由は、日本の場合、中高生の時期に文理選択をしたり、大学でどの学部学科を選択するのかを決める必要があり、その後のキャリアに大きく影響を与える時期だからです。
例えば、私と齋藤が留学していたアメリカでは、リベラルアーツと言って大学進学後に教養科目を取りながらメジャー(主専攻)を決めたり、マイナー(副専攻)を専攻できたり、それらを柔軟に変更することができるのですが、日本では多くの人が10代でその後の進路を決めなければなりません。
私たちは、その大きな意思決定の段階でITが選択肢に入ること、そしてできれば理系に進んで欲しいと思いながら活動しています。
Waffleの活動内容は主に3つです。IT関連企業を中心とした企業とのコラボレーション企画(共同でのイベントやキャンペーンの開催)、女子中高生限定のコーディングコース「Waffle Camp(ワッフル・キャンプ)」の実施、女子中高生に限定した国際的なアプリコンテスト「テクノベーション・ガールズ」の日本支部の運営です。
その他にも、女子中高生自身の意思でIT分野への進路を選択しないのではなく、そもそも、日本国内の制度面や構造面での課題も大きく影響しているため、それらを抜本的に変えるべく政策提言も実施しています。
コロナ禍で表面化する女性の雇用問題
今、日本では新型コロナウィルス感染症拡大の影響が、女性の雇用・所得環境にも大きな打撃を与えています。
女性の非正規雇用者数は過去1年間で79 万人も減少しているといわれています(*2)。特に、非正規雇用が多い業態であるサービス業などで働いていた方々を中心に、収入が激減してしまったり解雇されるなど、生活が困難な状態に陥っている方々もいらっしゃいます。
(*2) 日本総研「コロナ禍で悪化した女性の雇用・所得環境」より
これらの状況に対し、もちろん短期的な対策として、収入減に対する給付金の実施などが有効ではありますが、中長期的には大人の学び直し、あるいはこのようなことが起こらないように、小中高生の段階からの専門教育も必要となってくると考えています。
これまで、いわゆる「手に職をつける」「食いっぱぐれない仕事につく」ということで、医療系の国家資格の取得や公務員試験などを勧められた方々も多いのではないかと思います。もちろん本人の関心や素養にもよりますが、今後「ITスキルを習得すること」が、その後のキャリアに与えるメリットも大きいことから、私たちはそれを推奨しています。
社会人の方には、ぜひIT分野での転職も視野に入れていただきたいと思います。
なぜIT分野に注目すべきなのか?
コロナ禍での日本のデジタル化の遅れが露見しながらも、今後、社会経済活動のデジタル化はさらに加速されることは明白です。そして、その社会基盤はIT技術によって支えられています。これからは、Society 5.0で謳われているような、例えば、自動運転、ドローン、AIなどの技術が、さらに私たちの生活基盤に当たり前のように普及していくのです。
しかし、経済産業省の調査(2019年3月)によると、2030年には最大でIT人材は79万人不足になるとの試算も出ており、IT分野は人材の需要が大きい分野です。したがって、今後どの産業にも必要なITスキルを身につけることが、キャリアへのメリットにつながります。
また、IT分野の仕事は比較的結婚・出産といった女性のライフイベントにも寄り添った働き方がしやすいと言われています。所属する企業にもよりますが、リモートワークなどがしやすく、自宅で働くことも選択できます。働く時間も超フレックス制などがあれば、例えば11時から16時までは働き、その後子どもの面倒を見るために仕事を抜けて、また夜に仕事をするといった、柔軟な働き方を選ぶことができます。
未経験からIT分野での仕事にチャレンジするには?
ここまででIT分野の魅力をご紹介してきましたが、これまで全くパソコンを触ってこなかった、あるいは、パソコンが苦手という方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、そういった方向けに、おすすめのサービスをご紹介します。
1.ミレニアル世代の女性向けキャリアスクール『SHE』
累計2万人が受講する女性向けキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」や、未経験でも4ヶ月で転職・副業を目指す「MULTI CREATOR COURSE Designer」など、女性の人生の伴走者として、転職または稼げるレベルまでのサポートがあります。Webデザイナーになりたい方やクリエイターになりたい方などは、ぜひチェックしてみてください。
2.ソフトウェア・エンジニアの転職を考えるなら!シリコンバレー式プログラミングブートキャンプ『Code Chrysalis(コードクリサリス)』
まずはお試しでプログラミングを体験したい方向けの1ヶ月間の「Foundation」コース、転職を目指す方は3ヶ月のフルタイムプログラム「Immersive」コースなどがあります。
事務職からソフトウェア・エンジニアに転職された方などもいらっしゃいますし、シングルマザーの方向けの個人奨学金募金制度『The Butterfly Fund』も立ち上げて、彼女たちのスキル習得支援もしています。
また、こういったサービスは男性が多いと思われるかもしれませんが、このサービスは、女性エンパワメントにも力をいれており、Immersiveコースでは女性比率が50%近くになった回もあるとのことです。
両者とも参加者のコミュニティをとても大事にしており、頻繁にイベントも開催しているようなので、気軽に参加してみるといいでしょう。ここまで、20代・30代の女性で初心者の方向けのサービスを紹介してきましたが、もし10代の方で興味のあるかたがいましたら、私たちWaffleも各種イベントやプログラムを開催していますので、ぜひ覗いてみて欲しいと思います。
『ITをカラフルにする現場から』の過去記事一覧はこちら
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