「プログラミング知識だけ」では実務で役立たない? 未経験“エンジニアデビュー”に必要なスキルとは
長引くコロナ禍の影響で、これからのキャリアに不安を感じている女性は多い。事実、以前Woman typeが取得したアンケートによると、20~30代の働く女性の7割以上が、「これからのキャリアに不安を感じる」と回答した。

不安感の高まりに比例し、「手に職を付けたい」という声も目立つ。
「コロナ禍以降、専門スキルが身に付くエンジニアへのキャリアチェンジを希望する女性は多いですね。一方で、 即戦力人材へのニーズの高まりや育成コストが課題となり、未経験者採用を行う企業は減少しています」
そうエンジニア採用の状況を語るのは、RPA導入支援などのIT関連事業を行うワークスアイディ上席執行役員の松本竜也さんだ。
これまで180名以上のエンジニア未経験者を採用してきた同社では現在、女性向けのエンジニアリングスクールの立ち上げを計画しているという。
さまざまなプログラミングスクールが乱立する中で、 同社が手掛けるスクールでは、プログラミングを学ぶだけではなく「エンジニアとして実務で活躍できるようになる」ことを目的としたカリキュラムが用意されるという。
では、実務の現場で生きるスキルはどうすれば養えるのか。また、未経験からエンジニアになる上で大事なこととは、何だろうか。
未経験からエンジニアへ転身し、同社でDX開発室長として働く折笠まゆみさんと、スクール事業の責任者も務める松本さんに話を聞いた。
30代目前、未経験から踏み出したエンジニアキャリアを支えた「学ぶのが楽しい」という気持ち

ワークスアイディ株式会社
DX事業統括本部 DX開発室長
折笠まゆみさん
派遣やアルバイトで事務やホールスタッフの仕事を経験した後、職業訓練校でプログラミングを学ぶ。2012年にワークスアイディ株式会社にエンジニアとして入社。現在は業務系システムの開発や保守を担当している。14年、17年の産休を経て、現在は二児の母。20年、DX事業統括本部のDX開発室長に就任
「この会社に入社する前は、派遣などで事務やホールスタッフとして働いていました」
そう過去の経歴を明かす折笠さんの現在の役職は、DX開発室長。開発業務のみならずチームマネジメントも手掛けている折笠さんだが、実は入社当時はエンジニアとしての実務経験がゼロだったというから驚きだ。
折笠さんは、エンジニアになりたての頃の自分を次のように振り返る。
「以前は青森で主婦をしていたのですが、なかなか仕事が見つからなくて……。なので、まずは職業訓練校に通うことにしました。もともとパソコンに触ることは好きでしたし、プログラミングスキルを身に付ければ仕事も見付けやすくなると思ったんです。
やがて夫と共に東京へ移住することになり、本格的に転職活動を始めました。その時、私は29歳。実務未経験だったこともあり、思うように選考が進まず苦労しましたね。そんな中で、内定をいただけたのがワークスアイディでした」

当時は社員数20名程度の小さな組織だったワークスアイディだが、現在では全国7カ所に拠点を持つほどに規模を拡大。折笠さんもまた、エンジニアとして経験を重ね、昨年にはDX事業部門の開発室長を任されるまでに腕を磨いた。
「実務経験ゼロで入社してから、もう8年以上が経ちます。最初は勉強することばかりでしたが、エンジニアの仕事は本当に面白くて。できることがどんどん増えていくのが楽しかったんです」
2度の産休を経験。活躍し続けるために大切なのは、現状に満足しないこと
入社3年目となる2014年、折笠さんは第一子の出産のために産休を取得。半年後に復職した後、17年には2度目の産休を経験している。現在は二児の母だ。
「最初の産休の時は、ちゃんと職場復帰できるか不安もありました。けれど、復帰の時期や勤務時間、業務内容など、無理なく働けるスタイルを会社が一緒に考えてくれたんです。そのおかげで、安心して2度目の産休に入ることができました。
エンジニアとしてのスキルが身に付いたことで、産休などで一定期間休んだとしても、ちゃんと戻る場所があるという自信にもつながりました。そう思うと、この会社でエンジニアになっていなかったら、子どもを持ちたいとすら考えられなかったかもしれませんね」

現在、育児に励みながらもフルタイムで勤務しているという折笠さん。「エンジニアになったことで満足してしまうのではなく、自分の可能性を広げていくことが大事」とキャリアに対する考えを聞かせてくれた。
「同じ仕事ばかり続けていても、自分の可能性を広げることはできませんよね。キャリアの選択肢を増やすためにも、自らさまざまな領域にチャレンジしてみることが大切だと思います。
私もワークスアイディに入社してから、たくさんのプロジェクトに携わってきました。実は私、ちょっと飽きっぽいんです(笑)。なので、個々の能力を認め、やってみたいプロジェクトを任せてくれる会社のスタンスがとてもありがたい。それに、さまざまな領域に携わることで、自身のスキルアップにもつながっている実感があります。
エンジニアの仕事の魅力は、身に付くスキルの多さです。あらゆる技術に触れ、スキルを身に付けていけばいくほど、自分自身の市場価値が高まっていくのを感じられますよ」
現在、折笠さんはWebアプリケーション領域の受託開発に加え、社内開発も担当しているが、これもやってみたかったことの一つだそう。折笠さんは、エンジニアの道に進んだことで「人から求められる存在になれた」と笑顔で語った。

「『こういう仕組みを作って』『こんな困りごとを解決してほしい』などの要望に対し、エンジニアリングで応えるのが私の仕事です。私自身の力を求めてくれることがうれしいですし、何のスキルも知識もなかった頃の自分とは違い、今では“替えの利かない存在”になれたと感じています」
「エンジニアになるため」のスクール。卒業後は確実な実務デビューを目指す
折笠さんを筆頭に、多くの未経験女性を採用してきたワークスアイディでは、現在未経験者を育成するエンジニアリングスクールの立ち上げを計画中だ。
スクール事業責任者を務める松本さんは、その背景についてこう話す。

ワークスアイディ株式会社
上席執行役員
DX事業本部 副事業部長
IT事業本部 事業部長
松本竜也さん
「コロナ禍以降、『手に職を付けたい』という思いからエンジニアを目指す人が急増しています。一方で、在宅ワークを導入した企業ではリモートでの教育体制が整わず、未経験者の採用は減っている印象です。
プログラミングスクールなどに通い、プログラミングスキルを身に付けてからエンジニアを目指す人も増えていると聞きますが、その後の就職先が決まらない人も多いという現状があります」
プログラミングスクールで学んでも採用に至らない理由について、松本さんは「プログラミングができること」と「エンジニアとして活躍できること」は同義ではないからだと説明してくれた。
「エンジニアとして働くためには、技術の応用やプロジェクトチーム内でのコミュニケーションが必要となります。スクールでプログラミングの方法を学ぶことはできても、実際のプロジェクト内でスキルを活用する術までは学べないケースが大半なのです」
そこでワークスアイディが目指すのは、「知識を身に付けるだけでなく、エンジニアとして実務デビューするためのスクール」の設立だ。

「弊社には200名以上のエンジニアが在籍していますが、うち8割は未経験での入社。多くの未経験者たちを現場に送り出してきた中で培われた育成ノウハウを、エンジニアリングスクールを通じて提供できればと考えています。
学んで終わりにするのではなく、卒業後はワークスアイディでの雇用を前提にする予定です。そのため、卒業前の約1カ月間はエンジニアデビューに向けた実践的な研修に切り替えていきます。
具体的には、個々のスキルや志向、人柄に合わせ、入社後のプロジェクトをマッチング。そのプロジェクトに必要な知識を学べるように、先輩社員を講師につけてサポートしたいと計画中です。自社雇用前提のスクールならではのカリキュラムを用意したいですね」
女性が持つ可能性を広げ、活躍をサポートしていきたい
ワークスアイディのエンジニアリングスクールは、2021年秋のスタートを見込んでいる。まずは「女性限定スクール」としてスタートする予定だ。
「専門スキルを持つことの重要性は、近年高まり続けています。女性の場合、出産などで現場を離れることもあるかもしれませんが、エンジニアであれば、復帰後も身に付けたスキルを生かして活躍し続けることが可能です。
私がそう思うようになったのも、折笠さんのように未経験で入社した女性の成長と活躍を目の当たりにしてきたから。産休を経て、育児をしながら生産性高く働く姿に大いなる可能性を感じ、同じような女性を増やしたい、応援したいと思ったのです」

実際、ワークスアイディでは在宅ワークやフレックス勤務などを導入している。折笠さんが二児を育てながらもフルタイムで勤務できている理由はここにもある。今後は多様化する家庭環境に視野を向け、シングルマザーのスキルアップも応援していきたいと考えているという。
「当社で活躍するエンジニアの、約4割は女性です。目標に向けて覚悟を決め、強い意志を持って突き進んでいく女性たちを尊敬しますし、コミュニケーション力やホスピタリティーなどのヒューマンスキルにも長けている人が多いと感じています。
エンジニアとして必要な技術スキルは、私たちがお教えできます。ですが、ヒューマンスキルについては、学んで身に付くものではありません。今回のスクール事業を皮切りに、女性が自分の可能性を広げていく機会を提供し、その活躍をサポートする存在を目指していきたいですね」
取材・文/上野 真理子 撮影/鈴木 迅