不妊治療の保険適用が働く女性に与える影響は?メリット・デメリットを知ってこれからのライフプランを考える

皆さんは、2022年4月から体外受精や顕微授精などの不妊治療が公的医療保険の対象となることをご存知ですか?
日本では約2.9組に1組の夫婦が不妊を心配したことがあり、不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は18.2%にのぼります。これは夫婦全体の実に約5.5組に1組の割合になります(※1)。
しかしながら治療による体力面・精神面での負担、通院回数の多さなどから「仕事との両立ができなかった(または、両立できない)」人の割合は34.7%を占め(下図)、大きな社会課題になっています。

「不妊治療の保険適用に関しては、『自分たちの費用負担が軽くなる』と期待する声や、『逆に受けられる治療の幅がせまくなるのではないか』という不安の声など、治療中の人たちからはさまざまな反応があります」
そう話すのは、LINEを活用した妊活コンシェルジュサービス『famione(ファミワン)』のアドバイザーであり、サービス設計を担う公認心理師・臨床心理士の戸田さやかさんです。不妊治療には自由診療のメリットもあると言います。

「この薬はAさんには合うけれど、Bさんに合わないといったことがありますし、受精卵をつくったあとの培養方式や技術もクリニックごとにかなり違うんです。
機材によってできることが異なりますし……高度な機械を使って高度なことをおこなう場合もある。それによって価格帯も変わってきました。
保険適用が始まり、一つの項目について一律の治療内容になることで、それを超える内容についてはオプションで対応するわけですから、クリニック側の負担は大きくなります」(戸田さん)
今後、4月以降のクリニック側の対応としては大きく三つが考えられると言います。
2.公的医療保険は適用せず、自由診療で治療を行うケース
3.公的医療保険を適用した治療と自由診療の治療を両方行うケース
「クリニック側がどういう対応をとるのか、また、それを受けて治療を希望する人たちがどういう治療を選ぶのか……流動的な部分が多いのです。
現在、不妊治療にあたって国からの助成金制度はありますが、令和3年度をもって終了となります(※経過措置あり)。一方、独自の補助金を出そうという自治体や企業も出てきました。
今後、地域や社会が不妊治療をサポートしてくれるようになることを期待しています」(戸田さん)
今分かっている情報で今できることを!

では、私たちは今回の不妊治療への保険適用をどのように受け止めていったらいいのでしょうか? 現在、不妊治療をしている女性にとっても、これから先に不妊治療を受ける可能性がある女性にとっても、気になるところです。
戸田さんは「今分かっている情報で、今できることをしていきましょう」と話します。
「今回の保険適用を受けて、4月からクリニック側の対応がどうなっていくのか、不明な部分は少なくありません。しかし、年齢が上がるにつれて妊娠率が低くなっていくのが現実です。誰でも今が一番若いですよね。
『もう少し全体像が見えてきてから動こう』と思っていると、貴重な時間を無駄にしてしまうかもしれません。できるだけの情報を集めて今できる最善の判断をしていくことをおすすめします」
自分の価値観を振り返り、将来のプランニングを!

その上で大切なのが「価値観の振り返り」です。
「親になること」「子どもがいること」がどれくらい自分の人生にとって重要なことなのか、なぜ自分は親になりたいのか、どういう人生が自分にとって豊かだと言えるのか。
振り返った上でやはり「子どもを持ちたい」ということであれば、具体的に計画していくことになります。
もちろんパートナーとの価値観のすり合わせも大切です。また、キャリアとの両立をどのように実現していくかも考えなくてはいけません。
本来、キャリアは仕事だけを意味するものではありません。妊娠や出産などのライフもふくめてプランニングしていきたいもの。
その中で、転職や独立などの意思決定もとらえていきましょう。
「現職に不満があり、転職したい。一方で不妊治療も行いたいので、どちらを優先したらいいだろうか……」
こんなお悩みの声をいただくことがあります。
そもそもどういう人生を送りたいのかを考え、プランニングをするのが先で、その中で必要に応じて転職や独立などのキャリア上の意思決定を行っていきましょう。
妊娠できる年齢には限りがありますし、治療を始めて妊娠に至るかどうかも不確実です。だからこそ、自分のありたい姿をプランニングした上で今できること、自分が今本当にしたいことをやっていきたいものです。
いま、「産める体」になっている? セルフチェックを

そして最後にお伝えしたいのが、「産みたいときに産める体であるためのセルフチェック」の大切さです。
「基礎体温をつけたり、排卵検査薬で排卵状態を確認したり……不妊治療というと大げさに感じるかもしれませんが、『産みたいときに産める状態』を日頃から意識しておくのも大切なことです」(戸田さん)
まだまだ不確実なことも多い不妊治療への保険適用ですが、不妊治療に対するハードルが下がり、より若いうちから取り組めるようになるのは画期的なことです。
キャリアの中で「産むこと」をどうとらえていくのかーー改めて考える機会になりますね。
(※1)厚生労働省「不妊治療と仕事の両立サポートブック」より

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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