他社の商品を勧められる? 目先の営業成績に縛られない人の売上がみるみる伸びる理由
毎日必死に営業活動をしているけれど、成果につながらない……。その状況を打開するヒントが、営業のカリスマ・和田裕美さんの最新著『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)には詰まっています。


作家/株式会社HIROWA代表取締役/都光華女子大学客員教授
和田裕美さん
事務職を経て、外資系教育会社に入社し営業職に。お客さまの98%から契約をもらう「ファンづくり」のスタイルを構築し、日本でトップ、世界142カ国中第2位の成績を収める。その後、独立し、“愛されて売れ続ける”人材を育成するコンサルタントとして、1300社以上、延べ34万人以上を送り出し、サポートし続ける。著書にベストセラー『成約率98%の秘訣』(小社)、小説『タカラモノ』(双葉社)、『人生を好転させる陽転思考』(ポプラ社)、18年目となる『和田裕美の営業手帳』(クラーケン)などがある
店も人も「売らない」ことが主流になる
営業が変わる必要があるのは、何も少子高齢化だから、コロナ禍だからという理由に限ったことではありません。
消費者のマインドが変化しているので、売る側もどんどん変化する必要があるのです。
まず、消費が下がったとはいえECサイトでの売上は上がっています。ここに買い方の変化があります。
私たち消費者はモノの評判、機能、金額を前もってネットで調べて買うことができます。
今、目の前に営業の人がいてプレゼンをしていても、手元のスマホでそれが信用できるものなのか、すぐに調べることもできる。だからプレゼンがうまいことよりも人柄のほうが大事なのです。
人柄が好かれたら「ネットでの評判はいまいちだけど、この人は信用できる。ネットの書き込みは大げさ。だけど、私はこの人を信じてみよう」となる可能性があるからです。

また商品の品質向上によって次に買い換えるまでの時間が長くなりました。環境的にはとてもいいことですが、もっと売りたい営業にとっては悩ましいことです。
それに流行があっという間に変わってしまうようにもなりました。だから、1つの商品の販売数はどんどん減っていきます。その上、シェアリングエコノミーの普及によって「持たない」人が増えたのです。
こんなふうに変化している消費者サイドの気持ちに沿ってみると、営業も変化せざるを得ないということが見えてきます。
実際に、世界でも「売らないお店」がどんどん増えています。店舗では、体験のみして、その後気に入ったらネットで購入するという仕組みがあります。
たとえば、『AZLM CONNECTED CAFÉ(エイゼットエルエム・コネクテッド・カフェ)』や『明日見世(あすみせ)』『b8ta Japan(ベータジャパン)』など。
「売らない」という言葉は、これからどんどんパワーワードになっていくでしょう。そんな時に、まだ意識も言葉も変化できていないと、じわじわと時代から取り残されていきます。
お客さまの幸せのためなら、他社の商品を勧める
「セールスポイントを伝える」ことは、営業にとって何より重要です。しかし、ファンづくりを機軸にするとこれは違ってきます。
商品やサービスの魅力を伝えるだけでなく、「欠点を正直に伝える」ことや、場合によっては「他社商品を勧める」ことがもっと大事になってくるのです。ライバル商品を勧めるなんて、今までの営業では考えられません。

以前「芸人先生」というNHK Eテレの番組でコメンテーターをしていた時に、欠点を正直に伝えることで売上が爆上がりしたスーパーを紹介したことがあります。
そのスーパーのPOPには「このグレープフルーツはまだ少し酸っぱいです。もうちょっと後で買ってください」と書いてある。まったく「売り込み」がないのです。
しかし、だからこそ、そんな誠実さに惹かれるファンの方がたくさんいて大手スーパーに負けない売上があるのだそうです。
ある日、アップルストアに行ってスマホを買おうとした時に、説明してくださった担当の方が「今使っているスマホがドコモさんなんですよねだったらドコモさんのポイントがついてるから、ここで買わないほうがいいですよ」と言ってくれました。
天下のApple なので売上に対する余裕だったかもしれませんが、やっぱり誠実さを感じて嬉しい気持ちになり、ますますApple のファンになりました。
数字を追うべき営業が目先の自分の成績ではなく、目の前のお客さまが得することを一番に考えることができる。これがファンづくりです。
だからこそ、お客さまは営業を信頼し、さらにファンになり「今度買う時はこの人から買おう」、もしくは「この人の言葉は信用できるから今買ってしまおう」というふうに心が動くのです。

私たちはコロナ禍で不安な日々を過ごしてきました。既存の価値観が揺らいだ現在、みなさんのビジネスが3年後、5年後、10年後、20年後も続いていることって、とても大事なことではないですか?
もちろん目先の利益を追うことも大事です。でも、目先の利益のためにやるのではなく、さらに先も見据え「私はこの人の役に立っている」という、お客さまのことを第一に考えたセールスをして欲しいと思います。
それがあなたと、あなたの会社の未来にも必ずつながるのですから。
ゴリ押し営業をしても「もう関わりたくない」と思われるだけ
ただ、「自分の成績のため」「自分のノルマのため」という概念を完全に捨てることはできないかもしれません。
あなたが会社員で評価基準が、まだ「目先の(今月の)ノルマ達成」であれば、あなたの上司は月末の売上達成に向けてあなたを指導するでしょうし、あなたが個人事業主であったなら、家賃や必要経費の支払いに追われていれば今月の売上が何より気になってしまうはずです。
経営者である私もそれは同じです。今の段階では気持ちの上での比重を少しずつ変えていくことをお勧めします。

ですが、何よりも大切なのはいつも「自分がお客さまだったら、どういう気持ちになるだろう?」と相手のことを想像すること。
それを続けていると、自分のための数字が少しずつ目の前の人のための数字に変わってくるのです。
それでも、「あおってクロージングをかけたほうが売れる」と言う人はたくさんいるかと思います。
それに、一定層のお客さまにはそのやり方でも売れるし、結果も出せる。一時的に営業成績が社内トップになるかもしれません。
しかし、継続して結果を残せる保証はやっぱりありません。考えてもらいたいのは、ある一定層のお客さまの中には、申し訳なくて断れなくなる人がいるということです。
日本人は特に「NO」と言うのが苦手です。断っても営業から「私なら後で損したくないので、今すぐに絶対に買いますね」と、何度も何度もしつこく勧められて断れなくなり買ってしまった人は、クーリングオフするか、「まぁ買っちゃったしいいや」「断ったらまた強く言われるな」とあきらめるかのどちらかです。
とはいえ、そんな気持ちで買った商品をリピートしようとは思わない。むしろ、「あの営業とはもう二度と関わりたくない」と思ってしまう可能性があります。そうすると良いファンづくりにはつながりません。
次回の記事では、リピート受注や紹介受注が多い営業の特徴についてご紹介。お楽しみに!
書籍紹介

『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)
営業のカリスマ和田裕美が新しい時代の営業の極意を、佐藤尚之氏が提唱するファンベース®を元に紹介!
『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/knowhow/fan-sales/をクリック