転職活動でチェックしたい「リモートワークで自分らしく働ける会社」の見極めポイント/キンドリルジャパン

コロナ禍で一気に広まったリモートワーク。

働き方の選択肢が増えたことで、リモートワーク主体の柔軟なワークスタイルを求めて転職を検討している人もいるのでは?

ただ、一言で「リモートワーク主体の働き方」といっても、企業の環境や風土によって働きやすさは大きく異なる。

一体どのようなポイントで、自分らしく働くことのできる環境を見極めればいいのだろうか。

企業のIT変革を支援するキンドリルジャパンでデジタルワークプレースを提案する秋吉香織さんに、アドバイスを聞いた。

キンドリルジャパン

キンドリルジャパン株式会社
デジタルワークプレース事業部長 ウーマンコミュニティエグゼクティブ兼務
秋吉香織さん

日本アイ・ビー・エムにて、サービスデスク・センターやオフショア・センターなどを構築。新しい働き方改革を支援するスマホアプリやAIロボット展開までデジタルワークプレース領域の豊富な知識と経験を有する

デジタルワークプレースとは、「いつでも、どこでも、快適に自分らしく働くことのできるデジタルな仕事空間」であり、それによって働く人々の貢献意欲を向上させることを目的としたもの。

キンドリルジャパンでは企業にデジタルワークプレースの構築を提案する際、「ロケーションフリー」「デバイスフリー」「リミテーションフリー」の3つのフリーを重視しているという。

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「3つのフリーは、女性の皆さんが転職活動をする際、リモートワークで働きやすい環境があるかをチェックするポイントにもなると思います」と秋吉さん。具体的に紹介しよう。

ポイント1. ロケーションフリー

——「3つのフリー」について詳しく教えてください。まず、「ロケーションフリー」とは何でしょう?

ロケーションフリーとは、「場所にとらわれない」こと。

今までは職場に出社して働くのが基本でしたが、ご存じの通りコロナ禍になり、リモートワークでパフォーマンスを出すことが急速に求められるようになりました。

20〜30代の女性が転職先を探す際も、ロケーションフリーであるかどうかは非常に重要です。

ただ、注意点としては「リモートワーク=ロケーションフリー」ではないということです。

——どういうことですか?

企業によってはリモートワークの場所を自宅に限定するケースもあります。

最近はワーケーションでホテルやカフェで仕事をする人も増えていますが、それができない企業もあるのです。

——なるほど。転職活動の際に確認する必要があるのですね。

そうですね。その際、「在宅勤務ができますか?」「ずっと在宅で働きたいです」とお伝えする方が多いですが、それは働く場所を自宅に限定してしまうことになりかねません。逆にチャンスを狭めてしまうこともあると思います。

おすすめは「どれぐらい選択肢がありますか?」という聞き方。本当の意味での自由度が測れます。

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また、オフィスやコワーキングスペースなど、対面で協業できるワークスペースの存在も確認できるといいですね。

コツコツと一人で作業をすることはもちろんありますが、基本的にほとんどの仕事は顧客や同僚と接し、コミュニケーションをとる中でかたちができていくもの。

本人の状況次第という前提ですが、完全リモートワークではなく、リアルな場で働く選択肢もある方がより良い仕事がしやすいだけでなく、周囲の人と協業することで、より達成感も味わえると思います。

家族の事情や自宅周囲の環境変化などによって自宅での仕事が難しくなることもありますので、利用できるワークスペースがあるかは確認しましょう。

ポイント2. デバイスフリー

——二つ目の「デバイスフリー」はどういうことでしょうか?

従来は会社から支給されたデバイスを使うのが一般的でしたが、今はデバイスの選択肢が増えました。20代の方の中には小学生からタブレットを使っている人もいるでしょうし、自分の好みのデバイスがある人も多いと思います。

クラウドサービスが普及したことで、デバイスが変わっても仕事ができるようになりましたよね。ロケーションフリーになれば、出先で普段使っているPCとは別の端末で仕事をしたい場面も出てきます。

そういう意味で、仕事のパフォーマンスを上げるために、使うデバイスを自由に選べるニーズは増しているのです。

——仕事で使うデバイスの制限について、確認する際のポイントはありますか?

単に「デバイスは選べますか?」と聞くのではなく、「使い慣れたデバイスの方が効率的に仕事ができるのですが、使用は可能でしょうか?」と、デバイスを選びたい理由を添えると前向きな印象を与えられると思います。

その際、「会社支給のデバイスのみ」なのか、「今は駄目だけど、個人のPCも使えるように働きかけている」なのかによっても、企業の風土が測れます。

また、個人がデバイスを選べるというのは、企業の従業員に対する信頼の表れでもあります。そういう観点で回答について考えてみるのも、企業のカラーを判断する一つのポイントになると思います。

ポイント3. リミテーションフリー

——最後の「リミテーションフリー」はいかがでしょう?

リミテーション(limitation)とは制限のこと。企業はサイバー攻撃や情報漏洩から企業自身を守るために、何かしらのルールを設けています。

「この仕事は必ずオフィスですること」「企業支給のPCを必ず使うこと」など、企業によってさまざまなリミテーションがあり、先ほどご紹介したロケーションフリーとデバイスフリーとも密接に関わってきます。

——転職活動の中で、どのように確認すればいいでしょうか?

実際に働く場面を想像しながら、「リモートワークで働く際のルールについて教えてください」と聞いてみてください。

積極的に安全な環境を望んでいることが伝わりますから、そういうスタンスで質問できるといいですね。

先ほどのロケーションのルールと合わせて働く環境の制限を確認する際は、「基本的には自宅で仕事をしたいけど、育児支援で実家に一時的に身を寄せることもある。その場合に実家から仕事をしても大丈夫ですか?」など、具体的なシチュエーションを想定して確認をしましょう。

それによって制限の内容をリアルにイメージできますし、制限がある理由を理解するチャンスにもなります。

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ポイント4. 評価制度

——3つのフリーを確認する以外に、リモートワークで働きやすい環境を判断するポイントはありますか?

評価制度ですね。リモートワークは働いている姿が見えませんので、出社の有無や勤務時間では評価ができません。

だからといって、目に見えるアウトプットだけが仕事の成果とは限らない。評価の難しさは各社が感じている状況です。

リモートワークでも一生懸命に働く人もいれば、孤立してしまって前進できない人もいる。何か疑問が沸いたり課題に直面したりした場合に、そのまま保留してしまうこともあるのではないでしょうか。

従業員が適切に働いているのか、企業にとっては不安に思う面もあるのです。

従って、単刀直入に「私はどのような指標で評価されるのでしょうか?」と聞くのがいいと思います。

コロナ禍でリモートワークが進んだ企業であれば、これまでの評価制度との変化を聞くのもいいですね。

——多くの企業がベストな評価制度を模索している状況なのですね。

そうですね。ちなみにキンドリルジャパンではコロナ禍以前より、従業員のエンゲージメント(貢献意欲)を高めることに主眼をおいた評価制度を採用しています。

年度初めにマネジャーとコミュニケーションを取り、「お客さまに対する目標」「スキルアップや学習の目標」「変革の目標」「ビジネスの目標」「同僚との協業の目標」の5つの指標に沿って個人が自ら目標を立て、数値化し、それらの目標にどれだけ到達しているかで評価を行っています。

自身が納得して設定した目標に対し、どの程度達成できたかが数字で可視化される。時間やアウトプットだけを根拠にしない、極めて明確な評価制度だと認識しています。

「自分にとっての柔軟な働き方」を具体的にイメージして

——柔軟な働き方を希望して転職活動をしている女性に対して、アドバイスはありますか?

希望する働き方のスタイルを隠す必要はありません。自分が会社に何を求めているのか、率直に伝えた方がいいと思います。

なぜならば、企業側も「変わらなければ」と強く思っているからです。採用候補者が何を優先したいのか、聞きたいと願っています。

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例えば、「週末にやっている趣味のバンド活動を細く長く続けていきたいと思っています。週末の作業はどの程度ありますか?」という質問によって、お互いのイメージをすり合わせることができますよね。

入社後のギャップを減らすことにもつながりますから、具体性を持って希望を話すことは、企業にとってもありがたいことなのです。

——単に「柔軟な働き方がしたいです」ではなく、もっと具体的に伝えることが重要ということですか?

その通りです。「ワークライフバランス」「柔軟な働き方」「働き方の多様性」といった言葉が目立ちますが、その中身は個人によって異なります。

ぜひ、「私にとって柔軟な働き方とは?」を考えてください。

そして、その目的を考えましょう。「在宅勤務で出勤時間がなくなる分を副業の活動に当てたい」「リモートワークで集中する時間を確保しつつ、週1回出勤することで同僚との協業の時間も確保したい」など、伝えられるといいですね。

プライベートの事情を必ずしも公開しなければいけないわけではありませんが、面接は双方が選ぶ場ですから、ある程度具体的なイメージができなければお互い決め手に欠けてしまいます。無理のない範囲で事情を伝え、すり合わせをする必要はあるでしょう。

——そもそも働き方の具体的なイメージができていないと、先ほどの3つのフリーの度合いをどの程度求めればいいのかもわからないですね。

制限は少ない方がいいと考えがちですが、ロケーションフリーやデバイスフリーによる弊害もあります。

例えば、リモート会議が休む間もなくひっきりなしに入っている人も多いと思いますが、最近だとPCでオンライン会議に参加しながらタブレットで別のオンライン会議にも出ているといったケースも耳にします。

他にロケーションフリーによって、仕事とプライベートの切り替えが難しくなってしまった人も増えていますよね。

そういう意味でも、自分にとって最適な環境をイメージし、それを実現するためのやり方を自分で調整することが求められるのです。

自ら自分に制限をかけている女性は多い

——だからこそ、実際にリモートワークで働く場面を想像して、面接で確認をし、すり合わせることが重要なのですね。

その際の注意点として、自分で自分にリミテーションをかけないでほしいなと思います。

特に女性の場合、「育児時間を確保したいのでその時間帯は仕事ができません」という言い方をしてしまう方が多い印象です。働く制限として、希望を伝えてしまっている。

一方、「子どもが小学校に上がるまでは育児の時間を大切にしたいので、私はこの時間帯を育児時間として確保したいです」という言い方をすると、先ほどと内容は同じですが、印象は違いますよね。

——確かに、後者の方が前向きな感じがします。

そうやって制限ではなく、今の自分の希望として、望む働き方を伝えられるといいですね。

あとはもう一つ、「在宅勤務だけ」というリミテーションも外した方が、仕事の幅は広がります。

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デスクでじっとしていると煮詰まってくるけれど、シャワーを浴びたらアイデアが浮かんだ経験はありませんか? 人間は目に入るものを瞬時に判断して情報収集をしているので、ずっと同じ場所にいると入ってくる情報も限られてしまう。変化は重要なポイントです。

つまり、ワーケーションをはじめ、仕事をする場所を変えることで入ってくる情報は倍増する。その観点からもロケーションフリーは重要なのです。

そういう意味では、出勤時間は必ずしも無駄なものではないとも言えます。街行く人の様子から社会の動向や世の中の変化を感じる時間になっていると捉えれば、全てが否定的なものではありません。そこから仕事の発想につながることもあるでしょう。

実際、リモートワーク中心の働き方がうまくいっている企業の多くは、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッド型です。

大切なのは、自分で働き方を選ベること。デジタルワークプレースを提供する当社としても、自社の従業員に対して、自分で働き方を選べる環境をつくることをとても大切にしています。

「在宅勤務しかしない」「出社はしない」と制限をかけるのではなく、その時々の自分にとって最適なワークスタイルを選べる環境であること。

それこそが柔軟に自分らしく働く上で重要だというのは、ぜひ頭の片隅に置いていただければと思います。

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企画・取材・文・編集/天野夏海 撮影/竹井俊晴