「就職活動」と「転職活動」の違いって? 第二新卒が初めての転職で気をつけたい六つのポイント

就職活動をへて社会人になって数年。他にやりたい仕事が見つかったり、今の会社が合わないと感じたりと、転職を考え始める人もいるだろう。
そんな時、若手だからこそ使えるのが「第二新卒」枠だ。学生時代の就職活動と同じように、未経験でもチャレンジできる求人が多い。
ただし、第二新卒での職探しはあくまで転職活動。「新卒の就職活動」と「第二新卒の転職」の違いはどこにあるのだろう?
キャリアカウンセラーの水野順子さんにポイントを聞いた。

キャリアカウンセラー
水野順子さん
官公庁、企業人事、人材紹介会社勤務をへて、キャリアカウンセラーとして独立。こころとキャリアの専門家として、女性のキャリアデザイン、ダイバーシティ、女性の働き方を中心に幅広く活動中。今までに2万人以上のカウンセリングと、6万人以上への講演・研修によるキャリア支援実績がある
■HP
新卒と第二新卒の決定的な違いとは?
「第二新卒」はほとんどの場合、入社3年目以内の人を指します。中には第二新卒に限定した採用枠を設けている企業も。
第二新卒採用は人柄や潜在的な能力を重視したポテンシャル採用であり、その点は新卒採用と同じです。
入社後すぐの給与テーブルも新卒と同水準であることがほとんど。
ただし、基本的に第二新卒は社会経験がある前提での採用です。社会人としてのマナーや基礎的なPCスキルが身についていることを期待されるのが、新卒採用との大きな相違点となります。

なお、多くの場合、入社4年目以降は通常の「中途採用」として選考を受けることになり、即戦力が求められるようになります。給与や待遇面は経験やスキルによって異なりますし、募集職種の幅もグッと広がる。
ですので、社会人3年未満の人が転職を考える場合、第二新卒のうちに行動するか、もしくは現職でもう少しキャリアを積んだのち、通常の中途採用でチャレンジするか、自分の経験やスキルを踏まえて考えることをおすすめします。
さて、この前提を踏まえて、就職活動と転職活動の具体的な違いと注意点を、六つのポイントに分けてお伝えします。
違い1. 就活は「会社」選び、転職は「職種」選び
就活では事業内容や会社規模など、「どんな会社なのか」を重視して選ぶ人が多いです。
企業も総合職採用をしていますし、学生自身も働いたことがないため、まずは幅広い業界や企業を見て就職先を決めるのが一般的な流れだと思います。
一方の転職では、職種を絞ることが大切。短くても会社で働いた経験があるので、「これからどんな仕事がしたいか」というイメージが持てるはずです。
それが分からなかったとしても、少なくとも「現職を辞める理由」がありますよね。それを払拭できる職種や会社であることを、次の仕事選びの軸にしましょう。

また、新卒の頃は見えていなかった「30歳ごろの理想の自分」がリアルになってくるとも思います。女性の第一子出産時の平均年齢は30歳ですから、そこから逆算してキャリアを設計しやすいのも第二新卒の利点です。
違い2. 転職は「不定期採用」でスピード勝負
就活では、エントリー開始日や入社日が明確に決まっています。
一方、転職は不定期採用です。予定している採用人数に達した時点で募集を締め切るので、早ければ数週間で求人がクローズしてしまうことも。
次の募集がいつ始まるかも分からないため、スピード感を持って行動することがカギになります。
そこで注意したいのが、現職を退職するタイミングを明確にすること。入社時期を伝えられなければ、企業も採用可否を判断できません。
退職希望時期のどのくらい前に申告すればいいかは、企業によって異なります。
会社の就業規則を確認し、退職するまでにどのくらいの期間が必要になりそうか、おおよその目安を把握してください。
それなら先に退職してしまおうと考える人もいますが、転職先が決まらないまま今の仕事を辞めるのは極力避けましょう。

失業中の収入はゼロですが、住民税などの支払い義務は続きます。
失業期間が長くなれば金銭面の負担は増えますし、精神的にもつらくなってしまう。焦って条件が悪い会社に転職してしまうリスクにもつながります。
採用側も、理由のないキャリアブランクに良い印象を持たないことがほとんどです。
ハラスメントや劣悪な労働環境など、辞めざるを得ないケースは別ですが、先に退職するリスクがあることは理解しましょう。
違い3. 転職は企業探しの選択肢が豊富
就活での企業探しは、ある程度方法が限定されています。代表的なのは就職サイトや学内説明会、就活フェアのような合同説明会でしょうか。
一方の転職では、転職サイトや転職フェアだけでなく、転職エージェント、リファラル採用(自社の社員に友人や知人を紹介してもらう採用手法)、スカウトサービスなど、さまざまな手法があります。
さらにサービスは細分化されており、転職サイトを例にとっても、第二新卒専門、女性向け、業界特化型など、バリエーションが豊富です。ぜひ自分の希望に合ったサービスを選んでみてください。

初めての転職であれば、まずは転職エージェントに登録することをおすすめします。
大前提として、初めての転職活動は不安なもの。まずは「他人の力を借りる」ことを考えましょう。
キャリアアドバイザーから自分の経験やスキルの客観的な評価を聞ける他、アンテナを張っていなかった企業や職種についても幅広く情報が得られます。
違い4.「職務経歴書」で仕事の経験をアピール
実際に選考を受ける段階では、どのような違いがあるのでしょうか。
まず書類選考では、就活は履歴書とES(エントリーシート)を企業に提出しますが、転職ではESの代わりに「職務経歴書」が必要です。
職務経歴書とは、これまでの仕事の経験やスキル、実績などを記載するもの。
ここで注意してほしいのは、「職務経歴書には社会人になってからのことを記載する」という点です。

中にはESと同じように「学生時代に頑張ったこと」を書いてしまう人がいるのですが、それでは「会社で何の経験もスキルも得ていない人」と評価されてしまう。
これは非常にもったいないです。新卒入社後半年以内で退職している場合はまだしも、それ以上の就業経験があるのであれば、仕事での経験をアピールしましょう。
第二新卒の採用で企業が知りたいのは、「社会人として基本的なスキルがあるか」「主体的に仕事に取り組める人であるか」です。
今までの業務で取り組んだことを、具体的なエピソードとともに説明できるといいですね。
とはいえ、仕事で取り組んだことや実績を客観的に評価し、わかりやすく整理するのは難しいもの。特に第二新卒の人は、「アピールできることがほとんどない」と悩む人も少なくありません。
その場合はキャリアカウンセラーに相談し、一緒にキャリアの棚卸しをしてもらいましょう。
違い5. 面接で「退職理由」を聞かれる
面接での違いで大きいのは「転職では退職理由を聞かれる」ことです。
退職理由は大なり小なりネガティブなものです。正直に話すべきか悩む人も多いですが、ポイントはポジティブな転職理由とセットで伝えること。

例えば、「残業が多くて体力的につらかったから転職を考えたが、せっかくならより専門性を身に付けられる仕事に挑戦したいと思った」といったイメージです。
また、面接で聞かれる質問内容も具体的になります。
就活では「将来どんな人になりたいか」というような抽象的な質問が多いですが、転職では「今までどんな仕事を経験して、どんな実績を残したか」など、具体的な数値や明確なイメージが求められます。
違い6. 服装に“転職者スタイル”はない
もちろん企業によって異なりますが、就活では「リクルートスーツを正しく着用する」「髪を一つにまとめる」など、一般的にイメージされる“就活生スタイル”があります。
最近ではこうした画一的なスタイルを払拭しようとする動きもあるものの、面接の案内に明確に服装の規定が記載してある企業もまだまだあるのが現状です。
しかし、転職に“転職者スタイル”はありません。第二新卒も同様で、社会人としてきちんとTPOをわきまえた外見であれば大丈夫。

大切なのは、選考を受ける企業の雰囲気にマッチしているかどうか。
外見だけが要因で落とされるケースはほとんどありませんが、堅い社風の企業であればカジュアルすぎる服装に違和感を持たれてしまうことがありますし、私服の人がほとんどの企業ではビシッとしたスーツが浮いてしまうこともあるでしょう。
初対面の印象は大切ですから、「うちの会社のカルチャーとは合わなさそうだ」と思われてしまった場合、採用することに不安を覚えてしまう企業もいることは事実です。そういう意味でもTPOを踏まえた服装が重要です。
「この先50年続けられる仕事か」を意識して
「人生100年時代」と言われる今、転職先を決める上で意識してほしいのは、「この先50年続けられる仕事か」ということ。
長く働ける仕事を見つけるには、「これだけは絶対にゆずれない」という条件をきちんと持っておくことが大切です。

転職を考えているということは、現職に何かしら不満を感じているのだと思います。それは裏返せば、自分にとっての「長く働ける仕事」の条件を見つけるヒントにもなる。
その際、例えば「忙しすぎるから楽な仕事がしたい」のであれば、「その楽な仕事を50年続けられるか」を想像してみましょう。
特に女性の場合、出産などのライフイベントが仕事に影響しますので、これからの人生設計をきちんと考えた上で、長期的な視点で理想のキャリアを描くことが重要です。
また、ゆずれない条件を満たす方法は、転職だけとは限りません。
現職の上司に相談することで不満が解消される可能性もありますので、辞める前に会社に相談してみるのも一つの手です。

最後に、今の第二新卒の皆さんにお伝えしたいのは、コロナ禍で新卒採用を中止した企業が採用を再開し始めているということ。
就活で志望業界や企業にチャレンジできなかった人にとっては絶好のチャンスです。
その場合、当時と同じ志望動機を伝えるのではなく、「社会人として経験を積んだ今の志望動機」を意識しましょう。
「一度別の仕事を経験したからこそ、改めてその仕事がしたい」という思いを伝えられるといいですね。
コロナ禍で思うように就活ができなかった今の若い人たちにとって、第二新卒枠は大きな意味を持ちます。皆さんの転職が良いものになることを心から願っています。
取材・文/柴田捺美(編集部) 編集/天野夏海