09 MAR/2023

OECD加盟国内「男女格差ワースト1」の日本で女性リーダーが増えると何が変わる? “明らかなメリット”三つを解説

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昨日、3月8日は国際女性デーでしたね。

最近では、経団連が副会長として外資系企業の日本法人でトップを務める野田由美子さんの起用を発表したり、日本マイクロソフトの新社長に津坂美樹さんが就任したりと、女性リーダーの就任ニュースが相次いで入ってくるようになりました。

いずれもジェンダー平等やDE&Iの観点から非常に喜ばしいニュースです。

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一方で世界銀行が先日発表した調査によれば、経済的な権利をめぐる男女の格差で日本は世界の中で104位となり、OECD加盟国では最下位になったという報道もありました。

世界的に見ると、日本はまだまだ男女の格差が非常に大きい国です。

7割以上の働く女性が、過去10年で「働きやすくなった」と回答

そんな中、私が共同代表を務めるWaris(ワリス)では「女性×働く」の10年を振り返る調査を企画・実施しました。

調査結果からは女性の働き方に関して現状と課題が見えてきました。

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まず、過去10年を振り返って「働きやすくなった」と感じる人は全体で72.4%と過半数を超えました。

皆さんは、10年を振り返ってみていかがですか?

「働きやすくなった」と感じますか? それとも「働きにくくなった」と感じますか?

結果を現在の就業形態別に見ていくと、興味深い傾向が見られました。

経営者やフリーランスとして働く人たちは実に約8割~9割が「働きやすくなった」と感じていて、過去10年を振り返って「働きやすくなった」と感じている人の割合が他の就業形態の人たちと比べて高くなりました。

また、正社員でも、過去10年と今後10年の「働きやすさ」を前向きに感じている人の割合が74.9%と高めでした。

過去10年で女性活躍推進法が施行されたり、DE&I推進の機運が高まったり、コロナ禍でテレワークを取り入れる企業が増えたりしたことなどが背景にあると推測されます。

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しかしながら、離職中またはパート・アルバイトとして働く人たちに関していうと、過去10年、今後10年の「働きやすさ」はいずれも全体より低い結果となりました。

派遣社員は、過去10年で「働きやすくなった」と感じる人は、全体(72.4%)と比較して20ポイント近く低い結果に。

非正規雇用の人たちは総じて「働きやすくなった」と感じる人の割合が低かったのです。

女性の非正規雇用率が高い日本。主体的なキャリア構築が「働きやすさ」実現のカギ

この調査結果は、とても重要な示唆を含んでいます。

例えば、2020年における非正規雇用労働者の割合を見ると、女性は54.4%、男性は22.2%で、女性が2倍以上高くなっています。

新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めで非正規雇用の人たちが大きな影響を受けたのは記憶に新しいですよね。

そういったリスクがあるから非正規雇用がダメと言いたいわけではありませんが、それが性別と結び付いて「女性=非正規雇用」という形で定着している点が問題です。

実際、日本の女性管理職比率は12.3%で、30~40%を中心とする他の先進国のケースとは大きな開きがあります。

私たちWarisが実施した調査では、「転職・独立・離職・再就職・新たな職域への挑戦・リスキリング(学び直し)など、自らの意思を持って主体的にキャリアを移行・形成をしていくこと」を「キャリアシフト」と定義し、キャリアシフトと働き方との関係性も探ってみました。

その結果、「キャリアシフトしている人」ほど、過去10年を振り返って「働きやすくなった」と感じていることが分かりました。

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女性が生き生きと働き続けるうえでは、主体的にキャリアを切り拓くことがポイントになると感じさせる結果です。

今後、女性の働き方の多様性という意味では、正社員として働く人の割合や、女性のリーダーをどれだけ増やせるかがカギとなります。

女性リーダーの増加が働く女性にもたらす三つのメリット

では、女性が生き生きと働き続け、世の中に女性リーダーが増えると、現場で働く女性たちにとってはどんなメリットがあるのでしょうか? 三つご紹介します。

【1】キャリアの選択肢が増える

女性のリーダーが増えれば、それが現場で働く女性たちにとって、良いロールモデルとなります。

私の会社では、企業に向けて女性役員を紹介する事業も展開していますが、新たに女性役員が誕生した企業では、現場で働く女性たちから「(女性役員の存在に)励まされた、勇気づけられた」「女性が役員を目指してもいいのだと気づいた」などの声が寄せられることもあります。

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女性役員の存在によって、「リーダー=男性がなるもの」といったアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が払拭され、現場の女性たちの今後のキャリアの選択肢が広がっているのです。

【2】多様な働き方が可能になる

これも新たに女性役員が就任した会社での事例ですが、その女性役員の進言で1時間単位での有給休暇の取得が可能になったそうです。

その女性は自身の子育て経験をもとに、柔軟な働き方がワークとライフの両立には不可欠との気付きがあったのです。

このように女性がリーダーに生まれることで、より多様な経験・視点が加わり、結果としてワークライフバランスを意識した経営や、多様なメンバーが活躍しやすい職場環境へと改善される可能性があります。

こうした多様な働き方の実現は女性にかぎらず、男性にとってもより自分らしいキャリアをつくるうえで強力な後押しになるはずです。

【3】新たなアイデアの創出が可能になる

みなさんは「黄金の3割」という理論を聞いたことはありますか?

これは集団の構成人員の3割をマイノリティーが占めると、意思決定に影響力を持つようになるというものです。

例えば、女性リーダーが集団の3割に満たない少数にとどまっている場合、周囲は女性リーダーの言動やその結果を、性別と結びつけて「女性だから成功した・失敗した」などと評価しがちです。

そのような環境では女性側もプレッシャーを感じ、思うように振る舞えなくなってしまいます。

これが3割を超えてくると、マイノリティがマイノリティでなくなり、より自由に自然体でその人らしさの発揮が可能になります。女性リーダーが増えることで、新しいアイデアや発想の転換が生まれることが期待できます。

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日本はジェンダーギャップが大きい国ですが、それでも近年、さまざまな変化が生まれているのは良いことです。

国際女性デーに、改めてご自身の今後のキャリアについて考えてみてはいかがでしょうか。

田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事