「働きやすい環境」と「やりがい」は両立する? ライフステージが変わっても働き続けるために気をつけたい会社選びのポイント
やりがいのある職場で長く働き続けたい。でも、出産や子育てでハードな働き方はできない……。女性は特に、キャリアとライフイベントの節目でさまざまな悩みに直面する。そんなとき、ワーキングウーマンたちはどんな判断を下し、どう行動したのか? 幼い子を抱えながら転職活動を行った丸井智子さんと、あえて全くの異業種へと飛び込んだ小林沙央里さん。株式会社アイ・ピー・エルで活躍中の、ライフステージが異なる2人の女性に、どんな転職活動をし、何を決断のポイントにしたのかを伺った。
丸井智子さん(35歳)
小林沙央里さん(29歳)
間もなく設立22年目を迎えるアイ・ピー・エルの主力事業は、大手企業を顧客とするシステム開発と自社開発。理系出身の男性エンジニアが多く働くシステム会社だ。
現在コンサルタントアシスタントとして働く小林沙央里さんは、文系出身。これまでの仕事も接客や広告・宣伝業務を手掛けてきたため、「転職活動をしていた時は文系的な業務の会社をピックアップし、女性が長く働けそうな制度がある会社ばかりを探していました」と振り返る。
「前職は大きな裁量を与えてくれて、かなり大きな広告予算を任せてもらっていたんです。でも、小さな会社であるために担当は私ひとり。同僚の女性社員は、結婚や出産を機に退職していました。ですから、転職活動においてはライフイベントに対応できる会社かどうかを一番に考え、制度やそれを使ったことのあるロールモデルがいる会社を条件に探していたんです」
一方、IT関連企業で働いてきた丸井智子さんは、出産によって一時キャリアを途絶えさせた経験がある。
「SEは激務で当然といった環境だったので、働き続けることは不可能と判断しました。その後、大学の有期職員として女性研究者の支援事業に携わりましたが、やはりシステムの仕事が好きで、そういった仕事に携わりたいと思い、再び転職活動を開始しました」
【ポイント1】制度や条件面では選ばない!
希望の働き方は会社と相談
転職活動当初は、「女性社員がたくさん活躍している」とか「時短勤務が可能」などの条件を第一に、入社できそうな会社を探し続けていたという丸井さん。
とはいえ、プロジェクトが佳境を迎えれば、長い時間会社に詰める必要も出てくるのがシステム会社の働き方。条件を優先して探し続けたものの、なかなかフィットする会社に巡り合えなかった丸井さんは、ある時こう決意した。
「条件ではなくて、自分自身の興味を優先させたんです。その上でどう働くかは、会社と相談すればいい。『基本的に定時で帰れないと困る』という私の条件を認めてくれなければ、ご縁がなかったということで諦めればいいと思いました」
視点をがらっと変えてみたところ、独自技術を強みに地図分野に進出しているアイ・ピー・エルの存在に気付いた。場所は、子どもが通う保育園から徒歩5分。制度などの条件を最優先にしていたときには、見つけることができなかった会社だった。
結果的に丸井さんは、願ってもない環境を手に入れることができた。
【ポイント2】自分の専門領域を決め付けず
異分野の業種にも目を向ける
その丸井さんが第二子を妊娠中に面接を担当したのが、文系出身の小林さんだ。長く働き続けられる制度が整っていることを条件に、経験してきた業種を中心に転職先を探していた小林さんは、転職エージェントで意外な話を聞いた。
「広告宣伝をやっていたので説得力ある文章が書ける、接客をやっていたのでコミュニケーションが得意というのは、ある意味当たり前のことだと思っていたんです。でも、それこそが私の強みだと言ってくださって。その強みを活かせるのは、私が経験したことがない理系の企業だと教えてくれたんです」
小林さんの話に、丸井さんも大きくうなずく。
「当社のお客さまには文系職種の方もたくさんいらっしゃいます。そんな方々にコンサルティングを行って適切なアドバイスをするには、専門用語に慣れているエンジニアよりも、同じ目線に立って話せる文系の人が伝わりやすい場合も。だから、当社には小林さんのような文系スキルに秀でた人が必要だったんです」(丸井さん)
小林さんは、自分が想像できる範囲の業界から思い切って離れ、あえて理系業務の会社に目を向けてみた結果、自分の強みを評価してくれる企業に巡り合うことができた。
【ポイント3】女性のロールモデルにこだわり過ぎない
男性が育児に参加している会社はワーキングママにもやさしい
一方、転職してから第二子を授かった丸井さんは、アイ・ピー・エル初の産休・育休取得者となった。しかし、自分が女性社員のパイオニアだという気負いは全くないと話す。
「入社してから気付いたのですが、当社の男性社員は、みなさん育児に積極的に参加しているんですよね。近隣に住んでいる人が多い関係で、子どもとの時間を大切にされているんです。そのせいか、私のこともいろいろとフォローしてくださって、早く帰れるような工夫をしてくださいます。そこは、とても嬉しいポイントでした」
転職活動にあたっては、つい女性のロールモデルを探しがち。女性社員が少ないだけで転職先候補から外してしまう人もいるのでは? けれど、男性がどれだけ育児に参加しているかを面接などで確認することで、働きやすい環境か否かを判断することもできそうだ。
【ポイント4】個人で仕事を抱え過ぎない
「補い合う」仕組みがある
「でも、子どもがいない人だって、早く帰りたい日もありますよね」と、丸井さん。小林さんも笑顔でうなずく。そんな小林さんにとって、チーム制でそれぞれの力を発揮し、補い合うアイ・ピー・エルの働き方は、持続可能な働き方だと感じているという。
「一人に大きな権限を与えてもらうのも魅力的ではありますが、背負うものが大き過ぎると『全部自分でやらなきゃ』と無理をし過ぎて辛くなることもあります。その点、理系出身者と文系出身者がお互いを補い合い、チームで仕事に取り組むアイ・ピー・エルの働き方は、とても自然で理にかなっていると感じました」
誰かが無理をしなくても仕事を進めていけるチーム体制があるか否かは、長く働く上で欠かせないチェック項目だといえそうだ。
入社後は、買われた能力が自分の強み!
より磨きをかけて手を抜かないことが大前提
こうして、働きやすさとやりがいの両方を得ることができた丸井さんと小林さん。そんな2人が最も大切にしているのは、自分の強みに磨きをかけていくことだという。
6歳と0歳の2人の子育てに追われている丸井さんは、こう話す。
「『私の都合で仕事を止めさせない』ということは、常に意識しています。お客さまとの会議が夜にセッティングされてしまうということも起こりますが、事前に言ってもらえば、家族との調整をして参加するなどの工夫は当たり前だと考えています。代替できる部分は素直に甘えつつ、代替できない、私にしかできない強みの部分は責任を持って全うする。お互いに気持ち良く働くためには、その気持ちが大切です」
同じく小林さんも、アイ・ピー・エルに入社してからというもの、自分の強みを意識するようになったという。
「私は、文章作成能力やコミュニケーション能力を期待されて入社しました。だからこそ、そこは意識してブラッシュアップするようにしています。例えば議事録一つをとっても、コンテンツの並べ方で理解のしやすさが格段に変わってきます。そういった工夫は怠らず、でも、過度に無理せずに自分の強みを活かせる働き方ができるようになったと感じています」
「働きやすさ」と「やりがい」は、両立できる。2人の転職活動やその後の気付きから、あなたらしい働き方を見つけるヒントを探してほしい。
取材・文/朝倉真弓 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)