「新卒入社して10年以上。20代で転職を考えたことも」先輩女性2人が明かす、それでも会社に残った理由
転職してキャリアを築くのが当たり前になった今、同じ会社で長く仕事をする意味って? キャリアの専門家、人事、先輩女性たちの話から「1社で長く働く」を見つめ直そう
新卒で入った会社に大きな不満があるわけでも、他の会社でやりたいことがあるわけでもない。
それでも転職をする人が周囲に増えてくると、「このままずっと同じ会社にいていいのだろうか」となんとなく不安な気がしてしまうこともあるだろう。
そんな人に届けたいのが、「新卒入社した会社で長く働いてよかった」と話す女性たちの声。
・GMOインターネットグループ株式会社 フジサワさん(入社12年目 )
新卒入社した会社で10年以上働く二人だが、「実はこれほど長く働くつもりではなかった」「過去には転職を考えたこともあった」と明かす。
それでも二人が同じ会社に居続けたのは、一体なぜなのだろう。
新卒入社16年目「同じ会社にいながら“転職に似た経験”を得ることはできる」

株式会社サイバーエージェント 鈴木 知佳さん
2007年に新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部で運用コンサルタントとして活躍。その後10代向けのスマートフォンサービスを運営する「teens事業部」の立ち上げやマッチングアプリ『タップル』のマーケティング担当、『ABEMA』の 広告本部での人事・経営管理・広報責任者などを経験。2度の育休・産休を経て現在はAI事業本部でAIを活用したプロダクト開発のPMとして活躍
新卒入社してから15年以上、サイバーエージェントに勤める鈴木さん。「入社当時はここまで長く働くイメージはしていなかった」と話し、「過去に二度、転職を考えたことがある」と打ち明ける。
最初に転職を考えたのは2年目の頃。仕事が全然うまくいかなくて、他に向いている仕事があるんじゃないかと思ったんです。
その後仕事で成果も出せるようになった一方で、29歳の時に同期が立て続けに転職していくのを見て、漠然とした不安が襲ってきて。その時にもう一度、転職を考えました。
しかし他の環境でチャレンジしたいことも明確に定まっていなかったため、現職にとどまることに。
すぐに不安解消というわけにはいかなかったけど、取りあえず「今の環境でやれることは頑張ろう」と思って。
そうするうちに、だんだんと同じ会社で働き続けるからこその醍醐味が分かってきたんです。
どのような場面でそう感じるのだろうか。
これまでにインターネット広告の営業やスマートフォンサービスの立ち上げ、『タップル』でマーケティング担当など、複数の部署で経験を積んできました。それによって、だんだんと会社全体のことを把握できるようになったんです。
また、社内に顔見知りが増え、うまく人を頼れるようにもなりました。新人の頃は分からないことがあっても、誰に聞けばいいのか悩んでうまく物事を進められないこともあって。
でも今は、何でもチャットで聞ける関係性の人が各部署に居るので、ストレスなく仕事ができています。

現在取り組んでいるAI領域の新規事業の立ち上げでも、そのメリットは存分に発揮されている。
例えば契約書の作成や確認を他部署にお願いすることになったとき、「一番その分野を理解している担当者は誰なのか」「その際にどんなことを伝えた方がスムーズに進むのか」などを、まず確認する必要がありますよね。
その時に社内の確認フローや組織図をよく理解しているからこそ、無駄なく進行することができています。
会社の「人」や文化に対する理解を深め、適応することが働きやすさにつながる。一方で、それに適応しすぎてしまうと他の環境に合わせることが難しくなるのでは。
そう疑問を伝えると、「社外の人とも積極的に関わるようにしていた」と鈴木さんは工夫を明かす。
外との関わりを持つことで、さまざまな視点からの意見を学べるだけでなく、自分がいる環境とそれ以外とのギャップを知ることができます。
特に私は元同僚と会って話すことが多いのですが、サイバーエージェントを出て初めて気付いたカルチャーの違いを教えてもらったり、内側にいると「当たり前」として見落としていた、会社の良いところを再確認したりすることができました。
鈴木さんは「転職して全く異なる環境を見るのも一つの手だけど」と前置きした上で、自身の経験を元に、同じ会社でより良く働く方法を教えてくれた。
まずは「会社に身を置きながらにして、新しい環境にチャレンジできる方法」を模索することが第一歩だと思います。
私はこれまでに異なる部署で複数の仕事を経験しましたが、その度転職をして新しいことにチャレンジしているような感覚がありました。
周りが転職するのを見て不安を覚えたことはあったけど、振り返って考えてみると、キャリアの停滞感はなかったんです。
今の会社で培ってきた経験や人脈を大いに生かしながら、自分にとって安心感のある環境で新しいことにチャレンジする。
それができたら、1社で長く働く良さと、転職で得られる経験のいいとこ取りができるのではないでしょうか。
新卒入社12年目「サービスの歴史が分かるアドバンテージは大きい」

GMOインターネットグループ株式会社 フジサワさん
2012年に新卒でGMOインターネットグループに入社し、アクセス(プロバイダー)事業部でWEBマーケティングを担当。現在はアクセス事業本部 とくとくBB事業部でリーダーを務める。広告運用責任者として、グループ会社であるGMO NIKKOと協力しWiMAXやドコモ光の集客を最大化するプロジェクトを発足し、売り上げ獲得に大いに貢献したことから社内イベント「GMOアワード」プランニング部門で最優秀個人賞を獲得した経験を持つ
続いて紹介するのは、GMOインターネットグループ株式会社のフジサワさん。
新卒入社以来、一貫してインターネットサービスプロバイダー『GMOとくとくBB』に携わって12年目になる。
フジサワさんは入社時からWEBマーケティング担当を希望していたが、当時は念願かなわず2年半ほどカスタマーサービスや代理店営業などを担当した。
やりがいを感じられる仕事だったけれど、やっぱりWEBでの販売戦略を学びたい気持ちが強くて、2年目の時に転職を検討しました。
IT業界は比較的人材の流動性が高いので、正直「数年経験を積めたらいいな」と入社当時から考えていたのもありましたね。
しかしその直後、同事業部のWEBマーケティング職への異動を打診されたことで、会社にとどまることに決めた。
11年以上同じ部署で同じサービスに携わってきたフジサワさんは、現在サービス全般の集客を主に担当する責任者の立場にある。これまでにサービスの立ち上げやサイト運営、集客、キャリアとの交渉などを、内外問わず担当してきた。
広告運用の責任者を務めていた時期には、グループ会社と協業した大手通信会社の売り上げを最大化するプロジェクトの立ち上げに携わるなど、WEBマーケティングチームをけん引する存在だ。
その中でチームの信頼を得られた要因は、「過去11年間で得た知識と経験があったから」と話す。
『GMOとくとくBB』の入会者数が伸び始めた時期から携わっているので、これまでの歴史が分かるんです。
だから集客のための戦略を考える時に「過去似たようなケースでは、こうしたら効果あったよ」と事例を伝えたり、反対に「このやり方は失敗する確率が高いから、他の方法を試そう」など、過去の失敗を繰り返さないためのアドバイスをしたりできます。

その結果、売り上げ獲得に大いに寄与したことが評価され社内で表彰をされたこともある。
成果を上げられたのは、自分の経験をチームのナレッジとして生かしたのはもちろん、同じサービスに10年以上携わり続けていることによってメンバーから信頼を得られたのも大きいと思います。
フジサワさんは今年4月に産休・育休から復帰した。そこでも長く働いたからこそのメリットを実感したと話す。
ずっと同じ環境で働いていると、嫌でも仕事のやり方が身体に染み込んでいて。
復帰直後は元通りのパフォーマンスを発揮することに苦労する人もいるかもしれませんが、私の場合はその心配はなかったですね。
そして、ここでも周囲のメンバーとの信頼関係を実感できたと振り返る。
復職のタイミングを伝えた時、チームメンバーから「戻ってくるのが待ち遠しいよ」「これからも期待してるね」と言ってもらえたのが本当にうれしかった。
実は、復帰後も本当に元のポジションを任せてもらえるのか、ほんの少しだけ不安に思っていたんです。
だからその言葉を聞いた時、今まで私が積み上げてきた実績をきちんと評価してくれていたのだと感じて、報われた気持ちになりました。
新卒から現在まで、同じ会社で、同じサービスを担当し続けていることを前向きに捉えているフジサワさん。
しかし過去には、「転職経験がないから、他社で通用するのか不安に思った時期も正直あった」と打ち明ける。どのようにその不安を払拭したのだろうか。
キャリアの“早回し”とも言われますが、20代の頃は誰よりも早く成長する意識で働いていました。与えられた仕事は何でも挑戦してみて、最後までやり遂げる。
そうやってできることを一つずつ増やし、他社でも通用するスキルを磨くことで、「他の会社では通用しない人材になってしまうのでは」という不安は少しずつ解消できました。
同時に、「不安な気持ちや希望を上司や会社の人に率直に伝えてみては?」とフジサワさんはアドバイスを送る。
先ほどもお伝えしたように、私も過去に転職を考えたことがありましたが、きっかけになったのは上司に「本当はこんな仕事がしたい」と伝えたこと。
本音を率直に伝えたからこそ、慣れ親しんだ環境で、ずっとやりたかったWEBマーケティングの仕事に挑戦する機会を得られました。
希望の仕事ができているから、同じ会社で長くキャリアを積むことへの不安を抱くこともなく、これまで続けてこられたのだと思います。
取材・文/柴田捺美(編集部)
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