22 NOV/2023

「副業=社外で稼ぐ」とは限らない! 入社4年目営業女性のやりたい仕事を“1社で欲張る”挑戦マインド【社内副業】

「やりたい」を欲張ろう!
会社員のパラレルキャリアライフ

新しいことを始めたい。別の環境に身を置いてみたい。でも、今の仕事を辞めたいわけではない……。そんな時、選択肢の一つになり得るのが「パラレルキャリア」。会社員としての本業を持ちながら、それ以外の活動をやる。それは一体どんな人生なのだろう。

NTTコミュニケーションズ

一般的に会社以外で行う活動を指す副業だが、最近では「社内副業制度」を導入する企業も出てきている。

これを利用すれば、現在の部署に居ながら副業として他部署での仕事に携わり、自分に必要なスキルセットを磨くことができる。

NTTコミュニケーションズ株式会社に新卒入社して4年目になる野々上帆香さんは、社内副業を実践する一人。営業部門で働きながら、副業としてマーケティング部門でのイベントの企画立案や運営に携わっている。

いち営業パーソンにとどまらず、理想の姿をかなえるために必要なスキルを獲得している彼女。

“社内で”パラレルキャリアを築くことで、どんな変化があったのだろう。

NTTコミュニケーションズ株式会社
第三ビジネスソリューション部 兼 スマートシティ推進室
野々上帆香さん
2020年NTTコミュニケーションズに入社。本業で不動産・デベロッパーに対するICTコンサル及び提案営業を担当する傍ら、23年4月より副業としてオウンドメディアおよびコミュニティー形成に携わる業務も担当

「営業とマーケの橋渡しをしたい」社内公募を見つけて副業スタート

私は現在営業として働きながら、当社が運営する『OPEN HUB for Smart World』というコミュニティーでイベントやワークショップの企画・運営、そして自社コミュニティー運営を通じたBtoBマーケティングを「社内副業」として行っています。

イベントは毎週水曜日に開催していて、私が担当するものは毎月2回くらい。

例えば「ロボティクス」や「GX」など、社会課題や当社が提供するサービスに沿ったテーマで企画し、興味を持ってくださる企業の方と共創を通じた社会課題の解決へつなげることが目的です。

NTTコミュニケーションズ

NTTコミュニケーションズが主催する事業共創プログラム『OPEN HUB for Smart World』は、社会課題を解決して「豊かで幸せな未来」を実現するための新たなコンセプトを創り、顧客とともに社会実装を目指す事業共創の場として機能している

入社以来私は、営業部門でデベロッパーやゼネコンに向けてICTインフラをはじめ、スマートシティへの実現に向けたICT提案をしていました。

自分のスキルセットを広げてさまざまな業務に挑戦したく、自身のキャリアを深く考えはじめたのが入社3年目の秋ごろ。

元々私は、学生時代に地域活性化団体で共創イベントの企画や運営に携わっていたこともあり、企業や団体間での共創や、コミュニティを通じた価値の創出に興味がありました。

営業の仕事にはやりがいを感じていたのですが、「マーケティングのスキルを身に付けることで、キャリアアップしていきたい」と考えていて。

外部の研修や副業をネットで調べて、東京大学大学院主催のデザインシンキングのプログラムに参加するなど、スキルを磨くための活動を少しずつ行っていました。

そんな時にたまたま社内ポータルサイトを見ていたら「社内副業制度(ダブルワーク)」を知って、「これだ!」とすぐに申し込んだんです。

NTTコミュニケーションズ

私が社内副業として携わっている『OPEN HUB for Smart World』の運営は、マーケティング部門で行っています。

応募した理由は、マーケティングのスキルを身に付けるだけでなく、その視点を取り入れることで営業で成果を出したいのと、二つの部署間での“橋渡し役”になりたいという思いを抱いていたからです。

実は当時、営業担当として二つの部署間の連携について少し課題を感じていました。

マーケティングは会社のサービスや商品を広めるための戦略を立てる部門。そして、その戦略を広める実践的な役割を担うのが営業部門です。

私が社内副業で営業部とマーケティング部の橋渡しができれば、部署間の意図や取り組みが双方に浸透して、相乗効果を生み出せるかもしれない。

私にとって社内副業制度は、普段の業務に対して抱いていた課題を解決しながら、理想のキャリアをかなえる画期的なものだったのです。

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両立は“タイパ”命。副業きっかけで頼れる人も増えた

本業の営業と、副業のマーケティング。本業ありきの副業ではありますが、副業だからといって本業より優先順位が低いわけではありません。

やるべき仕事をタスク分けして、本業、副業関係なく、優先順位の高い仕事から取り掛かっています。

きっかり曜日で決められているわけではないので、本業、副業、本業、副業……と、同じ日に交互に打ち合わせが入ることがほとんど。正直、二つが混じって頭が混乱することもありました。

なので、お客さま相手の営業の打ち合わせはフォーマルな服装をして、マーケティングの打ち合わせやイベント対応ではカジュアルにして……などと、形から意識して切り替えるように工夫していましたね。

仕事量でいうと本業8割、副業2割程度ですが、イベント前などの繁忙期にはその割合は反転する日もあります。

基本的には就業時間内に仕事を終えるようにしていますが、新たな仕事に向き合うときには、スキマ時間を活用して知識のインプットをすることも。

ただ、好きで学んでいることなので、つらいと感じることは全くありません。

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副業を始めたからと言って本業をセーブできるわけではないので、全体的な業務量は増えました。

でも、社内副業制度は「本業と両立すること」が大前提。そのため以前よりも、仕事の効率を意識するようになりましたね。

例えば、業務内で分からないことがあるとき、以前は時間をかけて全て自分で調べていました。でも今は、限られた時間をうまく使って二つの仕事を両立させなくてはいけません。

なので「10分調べて分からなかったら人に聞く」と決めて、人にうまく頼ることを心掛けて仕事をするようになりました。

結局自分一人では、全ての仕事をすることはできません。

私よりも詳しい人が居るのだから、もっと人を頼って、信頼して仕事を進めるべき。そんなふうに仕事への意識が変わりました。

また、副業を始めたことは、社内での人脈を広げることにもつながっています。

悩みを共有できる同世代の社員や、働き方のお手本となる先輩にも多く出会えたことで、自分のキャリアビジョンをより明確に描くことができました。

さらに、副業を通じて子育てと両立しながら働いている女性社員と知り合う機会も増えました。彼女たちの働き方が、将来自分にライフイベントが訪れた際、仕事と家庭を両立させるためのロールモデルにもなっています。

“メッセンジャー”として、二つの部署の役に立てた

NTTコミュニケーションズ

社内副業だからこそ得られたメリットもありました。

当社は社員数が多い上にリモート勤務がメインの会社なので、お互い顔も知らない社員がほとんどであり、他の部署の誰が何をやっているか詳しくは知らないことが多いんです。

なので副業を通じて他部署の仕事内容をよく知ることで、以前よりも会社全体を俯瞰した上で、「自分はどう動けばいいのか」を意識して行動するようになりました。

特に、営業とマーケティングは親和性の高い部署。この二つを連携させることで、新しい取り組みを行うこともできました。

例えば、お客さまとの共創で新しいサービスを認知拡大させるために、どんなマーケティング手法を取ればいいのか営業部門が悩んでいた時、私がマーケティング部門の方に相談すると「リアルイベントで広報すると密にコミュニケーションが取れるから、効果的だよ」と提案してくれて。

営業とマーケティング部門、そしてお客さまと一緒にイベントを開催することになったんです。

副業として携わっているマーケティング部門主催のイベントは、あくまでも当社のサービスや取り組みを広報することが主な目的。

社内主催のイベントだけではなく、お客さまと共創してイベントを開催することができたのは、営業とマーケティングの二つの部署を行き来したからこそだと思っています。

ほんの少しでも、会社に貢献できたと実感できてうれしかったですね。

「社外で稼ぐ」と正反対の副業だから得られたもの

社内副業って、やはり業務量は増えますし、大変だなと思うこともあります。

二つの部署を掛け持ちしてもお給料に上乗せされるわけではないので、手取りを増やすために副業をしている方にとっては、むしろ損な制度だと思うかもしれません。

でも自分のキャリアを長期的な目線で見たとき、マーケティングスキルはどうしても身につけたいスキルでしたし、そのスキルを身につける上で、当社のマーケティング部門は最善の場所でした。

何よりも「社内」だからこそ、人脈が広がってさらに働きやすくなったほか、全社的な視点で仕事を考えられるようになれたのがよかったですね。

それに、社内副業での取り組み実績が評価されれば、やりたい仕事を任されたり、将来希望する部署へ異動のチャンスをもらえるかもしれません。社内副業が、今の会社で最適なキャリアを築くことにつながると思っています。

NTTコミュニケーションズ

私の長期的な目標は、イノベーションによってより豊かな社会を作っていける存在になることです。

将来的にはNTTグループで社会課題の解決や社会変革に携わるポジションで働ければと思っているので、まずは自身のスキルセットをどんどん広げ、さまざまな視点を養っていきたいですね。

取材・文/宮﨑まきこ 編集/柴田捺美(編集部)