コルセット&巨大ポケットの元鈴木さんが「女性の声を聞いて、ちゃんともうける」を大事にする理由

SNSで暴れ回る元鈴木さん。

「事業を通じた女性の自立支援」をテーマに掲げる彼女は、一人で着脱できるコルセットやアパレルを世に出してきた。

彼女のポストからも、女性たちへの励ましのメッセージが垣間見える。

「フェミニズムを大切にしている」という彼女。その背景にはどんな思いがあるのだろう。

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chika

元鈴木さん/株式会社Alyo 代表取締役社長
大橋茉莉花さん

1988年生まれ。獨協大学外国語学部を卒業後、アルバイトなどしながら日銭を稼ぐ日々をへて、26歳でイベントコンパニオンに転身。ウェブの美容ライターとして書いたコルセットに関する記事をきっかけに29歳の時にAlyoを設立。ECサイト『Pinup Closet』でコルセットブランド『Enchanted Corset』、アパレルブランド『CINEMATIQ」などを運営 XInstagram

「フェミニストなのにコルセット?」への挑戦

編集部

元鈴木さんはフェミニズムを大切にしていると聞きました。いつ頃から意識しているんですか?

元鈴木さん

最初にコルセットを作った時から意識はしていました。

というのも、コルセットは「女性を縛るもの」のメタファーとして使われているんです。

だから「フェミニストなのにコルセット屋ってどうなの?」って言われるのは分かっていて。私はそこにチャレンジしたかったんです。

編集部

そもそもコルセットがフェミニズムと相反するものなんですね。

元鈴木さん

その一方で、フェミニストで起業家のジュリア・ハートさんは補正下着の事業をやっています。

じゃあ、コルセットと補正下着の差は何? どう違うわけ? と思って。

編集部

確かにどちらも体を縛るものではあります。

元鈴木さん

コルセットだけが女性を縛るものとされているのは、編み上げのコルセットをギリギリ絞って女性が苦しむことが問題なんじゃない?

それなら、すごく快適なコルセットだったら問題ないわよね?

そんな反骨精神があって。

だから女性を締め付けるのではなく、抱きしめるようなコルセットを作ることで、「うちのコルセットは違うわよ!つけたら分かるはず!」って言いたかったんです。

元鈴木さん
編集部

元鈴木さんのコルセットは、従来のコルセットへのアンチテーゼでもあったんですね。

元鈴木さん

私、反骨心が根底にあるタイプなんですよ。振り返れば高校生くらいからフェミニズムの芽のようなものはあって。

編集部

どういうことですか?

元鈴木さん

新人の女性警官に密着した番組を見ていたら、ナレーターの芸人さんの話し方が子どもを相手にするような口調で。

「男性警官だったら絶対こういうナレーションにはならないじゃん!」と思って、新聞でテレビ局の電話番号を探して、抗議の連絡をしたことがありました。

編集部

高校生にして……!

元鈴木さん

そういう反骨精神は人よりも強いんだと思います。私は怒りと共に生まれた自覚がありましたので(笑)

「ありのままの体を愛そう」時代のコルセットの存在意義

編集部

一方、コルセットはくびれを作るものであり、ルッキズムの問題とも絡みますよね。

元鈴木さん

コルセットを扱って7年目になりますけど、フェミニズムやルッキズムの問題についてはずっと考え続けています。

元鈴木さん
元鈴木さん

私自身、起業前にイベントコンパニオンをしていた頃、見た目によってオーディションの通過率が変わるのを実感していました。

コルセットをバチバチに締めて体に特徴を出したらどうなるのか、実験をしたんですよ。結果、面白いくらいオーディションに通るようになって。

編集部

へー!

元鈴木さん

コルセットを脱いでも私自身は何も変わらないのに、コルセットで体のラインが変わるだけで私に対する評価が変わる。

こんなちょっとのことで変わるのかってほくそ笑みながら、「これって変じゃない?」って思いもあって。

編集部

コルセットは「ありのままの体を愛そう」という現代の流れと逆行するものでもありますね。

元鈴木さん

だから、私はコルセットが売れなくなる未来が理想だと思っているんです。

コルセットがなくても「私はすてき」と自信を持てるのなら、いつでも卒業してほしい。

でもそうじゃないから、コルセットの存在意義があるんだと思います。

編集部

自分の体をそのまま受け入れるのは難しいですもんね……。

元鈴木さん

ありのままの自分の体を美しいと肯定できたら最高だけど、そう思える人がどのくらいいるんだろうって思います。

少なくとも私は毒親オブザイヤー受賞みたいな家庭で育って、自己肯定感マイナススタートだったので、そうは思えなかった。

だからコルセットをすることで少しでも自信を持って、自分を好きになるきっかけにしてほしいんです。

元鈴木さん
元鈴木さん

世の中はいきなり変えられないけど、今この世界を生きる私たちが快適に過ごせるものを作りながら、少しずつ世の中を変えていけたらいいなと思っていて。

生きる上で何かしら支えが必要な人たちにとってのお守りになるようなものを手掛けていきたいと思っています。

編集部

「くびれがなければダメ」ではなく、「簡単にくびれを作って自信を持つきっかけにする」ためのコルセットなんですね。

元鈴木さん

そう。だから男性から女性へのプレゼントにはあまりお勧めしていないんですよ。

女性が欲しがっていれば別だけど、そうでない場合は「くびれていなければいけない」という押し付けになりかねないですから。

みんなで面倒くさい人になれば、変な態度を取る人も減っていく

編集部

体のことに限らず、ありのままの自分で生きるのは難しいですよね。つい「こうあるべき」を考えすぎてしまう……。

元鈴木さん

教科書を欲している人が多いように感じます。「私はこれでいいんだ!」と判断する自信がない。

先生の言うことが絶対だった学校から社会に出て、一人で歩くのが不安なのかもしれないですね。

編集部

その点、元鈴木さんは「私はこれでいいんだ!」を体現していますよね。

なぜそれができるんだと思いますか?

元鈴木さん

よく見せようとし過ぎず、見栄を張りすぎないのが大事だと思います。

「こうあるべき」にとらわれている人は、きっと大きい理想があるんだと思います。でも、理想と自分が全く違うときって、すごくつらいんですよ。

だから理想は一回全部捨てるのをおすすめしたいです。

良い人間でいようとするのは大事だけど、汚い部分や不出来な部分もあっていいし、完璧にきれいに見せようとしなくていい。それは特に若い女の子たちに伝えたいですね。

編集部

人と違うことをするとたたかれたり、マウントを取られたりすることもあるじゃないですか。特に若い女性ってだけで軽く見てくる人も時にはいて……。

元鈴木さん

そういう時はまばたきしないで相手を3秒見つめるといいですね。「ちょっと聞こえなかったんですけど、もう1回いいですか?」みたいな感じで。

編集部

なるほど……!

元鈴木さん

で、もう一歩いけそうだったら「どういう意味ですか?」って聞いた方がいい。

言葉をにごしながら言ってくる人も多いけど、「それってはっきり言うとこういうことですよね?」って。

「そういう意味じゃないんだけどさ」「いやそういう意味ですよね? やめた方がいいと思いますよ」まで言えば、相手は困るじゃないですか。

編集部

たしかに。

元鈴木さん

愛想笑いで流しちゃうと何もなかったことになっちゃうから、できそうな人はやれる範囲でできるといいと思いますね。

面倒だと思われたら同じことはされなくなるし、そういうリアクションを取る人が増えて、みんなで面倒くさくなれば、変な態度を取ってくる人も減っていくじゃないですか。

元鈴木さん

元鈴木さんによるお手本「そいつが2度と関わってこないように、目が合うたびにこの2種類の表情を交互にして理解不能の恐怖を与えますね!」(参照

 

元鈴木さん

私の場合、最近は変な人に絡まれることも減ってきました。

そういう人たちって自分より弱い人を対象にするじゃないですか。たぶん、私が彼らの考える社会的強者になったことで対象から外れたんだと思います。

たまに変なことを言われても相手にせず、変な動きの動画であおって、ついでに商品をPRして終わり。

「PRの機会をありがとうございま〜す!」って、ポケットから酒瓶出してね(笑)

元鈴木さん

もちろんみんながみんな私のようにアグレッシブじゃなくてもいいし、できない自分を責めないでほしい。

ただ、声を上げられる人は、ぜひネットでガンガン言っていただきたいですね。

編集部

「声を上げられる者は上げ、作れる者は作り、そして女性であることで諦め疲れ何もできなくなった者の分は、動ける者が動けば良い」という発信もしていましたね。

元鈴木さん

そう、「製品にできるものなら私に任せてちょうだい!」ってつもりでいますから。

元鈴木さん
編集部

実際にコルセットも600mlボトルが入る『マジカルポケット』も、どちらも女性たちの声から生まれたわけですもんね。

元鈴木さん

マジカルポケット付きのアパレルブランドを立ち上げて6年くらいたつのに、つい最近もXでは女性のポケットの問題が話題になっていました。

つまり、まだ解決していないということ。社会が女性の声を全然聞いていない証拠でもあるけど、その分ビジネスチャンスもたくさんある

元鈴木さん

私は「女性の人生や生活を良くできたらいいな」と思いながら事業をやっています。

そのベースとなるのは女性たちの声。「女性の声を聞くとちゃんともうかる」と世の中に広く伝えることで、女性の生活はより良くなっていくはず。

そんな未来に向けて「引き続き闘っていくわよ!」って気持ちでいるので、それぞれができるやり方で、一緒に頑張っていきましょう。Go Girl!

取材・文・編集/天野夏海 撮影/赤松洋太