瀬戸朝香さん初のカンヌへ! 「自分の子どもに見せたい作品に出られたことがすごく幸せ」

瀬戸 朝香

瀬戸 朝香(せと・あさか)

1976年生まれ。愛知県出身。1993年、女優デビュー。94年、『君といた夏』のヒロイン役でブレイク。96年、『Age,35 恋しくて』で19歳ながら愛人役を好演し、女優としての評価を高める。映画『とらばいゆ』(01年)で第24回ヨコハマ映画祭 主演女優賞を受賞。以降も映画・ドラマと幅広く活躍

「目指すはカンヌ」という気持ちがずっと心にあった

華やかな美貌はそのままに、年々女性らしい柔らかさが増している女優の瀬戸朝香さん。2015年11月21日(土)に公開された『リトルプリンス 星の王子さまと私』では、主人公である女の子のお母さん役を日本語吹き替え版の声優として演じている。これまで20年以上にわたって女優として活躍してきた瀬戸さんだが、アニメーション映画の吹き替えは本作が初めて。オフィシャルブログでも、本作の出演にあたって自らの「新たな挑戦」と位置付けていた。

「『星の王子さま』は世界中で愛されている作品。だからアニメの吹き替えの経験はなかったのですが、お話をいただいた時はすぐに『やりたい!』って気持ちが湧いてきたんです」

だが、新しい挑戦をするときは「いつも不安がある」と胸の内を明かす。本作でも慣れない声だけの演技に、最初は戸惑いも大きかったようだ。

「役者としての演技では、相手の方とのキャッチボールがあって自分の台詞を返します。だけど、アニメの吹き替えは、キャラクターの口の動きに合わせて台詞をはめこまなくてはいけません。自分が演じるときは感情の込め方も自分次第ですが、アニメでは既に台詞を入れるタイミングがしっかり決まっているのでそれがなかなか慣れなくて。何度も失敗しながら、違和感のない吹き替えができるようテストをさせていただきました」

不安を抱えながらも新しいことへの挑戦を瀬戸さんが続けてきた理由は、「その先にある達成感」からだという。本作は第68回カンヌ国際映画祭の特別招待作品として現地でスタンディングオベーションを受けた。瀬戸さんも日本語吹き替えキャストの一人として、初めてカンヌのレッドカーペットを踏みしめた。

「女優というお仕事をしている以上、『目指すはカンヌ』という気持ちはこれまでずっと持ち続けていました。だから、一度でもカンヌに行けたというのは、声だけの出演であったとしてもそれだけで幸せなこと。それにこの映画は、年齢を重ねるにつれて見方も捉え方も変わってくる作品なので、自分の子どもにも大きくなるたびに見せてあげたい。『自分の子どもに見せたい』と思える作品に携われるって、すごく幸せなことですよね」

自分がしたいことより周囲の人に求められる仕事をしてきた

瀬戸さんが本作で声優として演じたのは、愛する娘を女手一つで育てるワーキングマザーの「お母さん」。徹底した効率主義で、娘の人生計画を何十年先まで綿密に設計しているキャラクターだ。役と同じく仕事を持つ母親として、瀬戸さんはどんな想いを持って演じたのだろう。

「私自身は子どもに窮屈さを感じてほしくないので、本人の選択を大事にしてあげたいとは思いますね。でも、子どもに将来困ってほしくない一心でいい学校に入れようとしたり、細かく人生設計をしてあげたくなっちゃう気持ちも分かりますね(笑)。『お母さん』は一見すると厳しい母親なんですけど、それだけじゃなくて、根っこには娘への深い愛情があるし、娘を思って必死になってしまう気持ちの変化がしっかりと描かれている。そんなところがとても魅力的なキャラクターだったので、私もそこはしっかり表現しないといけないと思いながら台詞を入れていきました」

長期的ビジョンから逆算し、日々のTO DOを設定する「お母さん」というキャラクターは、生産性やキャリアプランといった言葉にとらわれがちな現代女性の映し鏡のようだ。しかし、瀬戸さん自身は、「行き当たりばったりで、逆にそれが楽しいタイプ(笑)」だそう。自らのキャリアも、「周りの意見を参考にしながら動いてきた」と振り返る。

「“私はこうだから!”っていう型にとらわれすぎると、新しいものが入ってきにくくなると思うんですよね。私は『自分が何をしたいか』よりも、『周囲の人が自分に何を求めているか』を重視して仕事をしてきました。だからこそ、自分では思いもよらないような経験ができたり、キャリアの幅を広げてこれたんじゃないかと思うんです」

「もしかしたらそれは“自分がない”ということなのかもしれませんが」と照れ笑いしながら付け加える。そのさっぱりとした表情に、力みはまるで感じられない。この飾らなさこそが、コメディからサスペンスまで、瀬戸さんの活躍の幅を広げる魅力となっているのだろう。

  1. 1
  2. 2