野呂佳代「もっとかわいらしくしろ」居場所を見出せなくてもアイドルを6年続けてよかったワケ

野呂佳代「もっとかわいらしくしろ」居場所を見出せなくてもアイドルを6年続けてよかったワケ

転職や異動など、新しいフィールドに飛び込んだ時に、同僚が優秀に見えて自信を失ったり、そのままの自分では受け入れてもらえないように感じたり。そんな経験がある人もきっといるだろう。

「できる自分」「認めてもらえる自分」を必死に演じても、「ありのままの自分」を出せない働き方はそう長くは続かない。

転職すべきか、もう少し頑張るべきか――。そんな苦しさを感じている人に届けたいのが、元AKB48で、現在は俳優・タレントとして活躍する野呂佳代さんのストーリーだ。

野呂さん

アイドル時代は、デビューした初日から「もっとかわいく振る舞え」と、散々言われてきました。

「きっと私は何か違うんだろうな」「ここでは『ありのままの私』は受け入れられないんだろうな」って、ずっとそんな苦しさを感じていましたね。

それでも6年間アイドルとしての活動を続けた野呂さん。卒業後はずっと夢見ていた俳優の道へと踏み出し、今や名バイプレイヤーとして映画やドラマから引っ張りだこの存在となっている。

「アイドルを6年間頑張り切れてよかった」と微笑む彼女に、その真意を聞いた。

憧れのピクサー作品「エリオと自分が重なった」

「野呂佳代が出演するドラマにハズレなし」と言われるほど、今や引く手あまたの俳優となった彼女が挑んだ最新作は、ディズニー&ピクサー作品『星つなぎのエリオ』。

野呂さんが演じたのは、主人公エリオをサポートする「お助けコンピューター」の「ウゥゥゥゥ」役だ。

映画『星つなぎのエリオ』場面画像

自他ともに認めるディズニーファンである野呂さんに、ディズニー&ピクサー作品への出演が決まったときの心境を聞くと、心からの喜びを口にした。

野呂さん

ディズニー作品もディズニーのテーマパークも大好きなので、ピクサーの映像のお仕事ができるなんて、「うれしい!!!」しかありませんでした。

本作の主人公・エリオは、一番の理解者であった両親を失い、孤独な日々を送る。「ありのままの自分」は、どこにいても厄介者であるように感じてしまい、“本当の居場所”を求めて宇宙へと思いを馳せるようになる。

その願いが通じ宇宙へと旅立ったエリオは、自分と同じような孤独なエイリアンの少年・グロードンと心を通わせるようになっていく──。

野呂さん

誰に何を言われようと、「いつか宇宙に行って自分の居場所を見つけるんだ」と、エリオは信じ続けます。

私も「俳優業は無理だよ」なんて言われ続けてきたけど、自分だけは「できる」と信じていて。試練が訪れても自分だけは自分を信じて前に進んでいくエリオと自分を重ね合わせてしまう部分はたくさんありました。

野呂さん

地球には自分の居場所はないと、宇宙へと旅立つエリオですが、最終的にすごく大切なことに気づきます。11歳でここまで視野を広げることができたエリオは本当にすごいなと思いましたね。

映画『星つなぎのエリオ』場面画像

22歳でアイドルに。「ありのまま」が受け入れられない葛藤

地球で居場所を見つけられず、「どこかに本当の居場所がある」と信じて探し求めていくエリオの姿は、アイドル時代の野呂さんともリンクする。

野呂さんがAKB48に加入したのは、22歳のとき。一般的なアイドルデビューよりも遅いスタートだった。

野呂さん

デビュー時すでに、アイドルの中では「もう大人だね」という年齢だったので、かわいらしい振る舞いができなくて。「アイドルらしく」って言われても分からなかったんですよね。

デビューした初日から、私のアイドルらしくない振る舞いや体型について、厳しい声がたくさん耳に入ってきました

「痩せなきゃ」と思い、ダイエットに励んだこともあった。ありのままの自分を封じ込めて、“アイドルらしい”自分になるために必死に努力しているのに、「今回も選抜に選ばれなかった」「また私はできなかった」という経験ばかりが積み重なっていく。

そんな中でも彼女の中に「アイドルを辞める」という選択肢はなかった。

野呂さん

「この仕事は自分に合わないな」「ここは自分の居場所じゃないのかも」と思ったらまず、「自分がここでできることは、全部やり切ったっけ?」と考えるようにしていて。

合わないなら切り替えることも大事だと思うんですが、その前にやれることをやって、それでもダメだったら初めて転職を選択肢に入れます。

そうしないと、納得して次に進めないから。

野呂さん

私は多分、「辞めよう」と決めたら、スパっと辞められるタイプだと思うんですよ。

だけど、何か引っ掛かりがあるってことは、納得するまでやり切れてない証拠なんじゃないかなって。

インタビューに答える野呂佳代さん

今の仕事が自分に合わないと感じても、「自分がやれることはやり切った」と思えるかどうかで、次のフィールドへと踏み出す際の心持ちは変わってくる。

新しい居場所をより良いものにするためにも、自身の「納得感」に目を向けることから逃げない。

このスタンスを貫き、6年にわたるアイドル生活をやり切った野呂さんだが、周囲から求められる「アイドルらしさ」を必死に追求する中で、「何か違う」という違和感は膨らみ続けていった。

野呂さん

ある時ふと、「そのままの自分を応援してもらえないのなら、私の魅力って一体何なんだろう?」って思ったんです。

こんなに頑張っても選ばれないなら、認めてもらえないなら、もう仕方ないや!って吹っ切れて(笑)

「じゃあ、私だからできることって何だろう」って考えるようになりました。

「ありのまま」をさらけ出したら、チャンスが舞い込んできた

「ありのままの自分」を受け入れてもらえる場所を探し始めた野呂さんは、バラエティー番組での需要を見出す。

「バラドル」として、唯一無二の存在価値を発揮するようになっていった野呂さんだが、当時の心境は複雑だったという。

野呂さん

実は、もともと俳優志望だったんです。アイドルを卒業したら俳優を目指したいなと思っていたのに、「ぜひ野呂さんに!」と来る仕事は、体を張るバラエティーばかりで。

ある時、鼻毛を抜かれるドッキリがあって、あの時は本当にすさんでいました(笑)

「私は俳優がやりたいんだよ!鼻毛抜いてる場合じゃないんだよ!」って(笑)

カメラに向かってポーズを取る野呂佳代さん

しかし、この番組がきっかけで、野呂さんにドラマのオファーが舞い込む。ドッキリでの野呂さんのリアクションにドラマ関係者が目を留め、オファーへと繋がったのだ。

ここから、野呂さんの俳優としてのキャリアは加速度的に拓いていく。

野呂さん

今思うと、アイドルとして自分が納得できるまで頑張り切れたことが、今の俳優としての活動につながっているように思います。

バラエティーを全力でやって、もっと名前が知られるようになったら、もしかしたらドラマのオファーが来るかもしれない。そう信じながら、ずっとやっていました。

あの時頑張り抜けて本当によかったと思っています。

今、彼女の個性は、俳優・野呂佳代の一番の武器となり、彼女の未来を広げている。

「アイドルはこうあるべき」という先入観を捨て、素の自分をさらけ出してみたら、バラエティーのフィールドで居場所を見つけられた彼女のように、意外と「そのままの自分」を求めてくれる場所はすぐ近くにあるのかもしれない。もしかしたら、今いる場所だってそうなのかもしれない。

そこで納得いくまで頑張り切れば、きっと「私らしさ」を求めてくれるフィールドが自ずと拓けていくはず。野呂さんのストーリーは、私たちにそんな希望を与えてくれる。

『星つなぎのエリオ』でも、エリオは必死に自分の居場所を探し求める過程で偽りのない自分を恐れずに出せるようになっていく。そして、思わぬところに「ありのままの自分」を受け止めてくれる場所を見つける。

自分の本当の居場所を見つける一歩は、「ありのままの自分をさらけ出す」勇気を持つことなのかもしれない。

カメラに向かってポーズを取る野呂佳代さん

野呂佳代さん

1983年10月28日生まれ、東京都出身。タレント、俳優。2006年、AKB48の2期生として加入し、チームKで活動。09年からはSDN48のキャプテンも兼任。10年にAKB48、12年にSDN48を卒業。以降、バラエティー番組を中心に活躍した後、俳優として活動の幅を広げる。主な出演作に、『アンメット ある脳外科医の日記』(24年、フジテレビ系)、NHK大河ドラマ『光る君へ』(24年)など ■Instagram

取材・文/光谷麻里(編集部) 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)

作品情報

映画『星つなぎのエリオ』8月1日全国公開

映画『星つなぎのエリオ』ポスター
<あらすじ>
ひとりぼっちの少年・エリオは、一番の理解者の両親を失った寂しさを抱えて、大好きな宇宙にいつも思いを馳せていた。
「この広い世界のどこかに、“本当の居場所”があるはず」彼の切ない願いが届き、
星々の代表が集う夢のような“コミュニバース”に招かれる。そこで出会ったのは、同じように孤独なエイリアンの少年・グロードン。
「そのままの君が好きだよ」―心を通わせる彼らに迫る、“星々の世界”を揺るがす脅威。
それを救うカギは、グロードンがエリオに打ち明けた“ある秘密”にあった—。

監督:マデリン・シャラフィアン (『リメンバー・ミー』), ドミー・シー (『私ときどきレッサーパンダ』), エイドリアン・モリーナ (『リメンバー・ミー』)

製作:メアリー・アリス・ドラム (『リメンバー・ミー』)

日本版声優:
川原瑛都 (エリオ役)、清野菜名 (オルガ役)、佐藤大空 (グロードン役)、松山ケンイチ (グライゴン役)、野呂佳代 (ウゥゥゥゥ役)、渡辺直美 (オーヴァ役)、マユリカ中谷 (メルマック役)、関智一 (ヘリックス役)、沢城みゆき (クエスタ役)、安原義人 (テグメン役)、子安武人 (ユニバーサル・ユーザー・マニュアル役)

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