これって虚言癖? 心理のプロに学ぶ“うそつき社員”タイプ別の適切な対処法【職場でうそをつく女性・上司・後輩…】
職場で同僚や上司・後輩と話していて、「この人、うそついてる!」「もしかして、この女性って虚言壁?」とピンと来ることもときにあるもの。
他愛ないうそなら笑って済ませられるが、業務に支障が出たり、トラブルやクレームにつながるうそは見過ごすわけにはいかない。
心理カウンセラーの中原謙一さんによると、人がうそをつく目的は、「何かを隠すため」が第一。目の前にある真実や事実、自分の中にある感情などを、箱に入れてフタをしてしまいたいという心境の表れだ。
そして、うそをつく理由にはいくつかのパターンがあり、それによって対処法も変わってくるのだという。
そこで、Woman type読者に「職場で同僚からつかれたうそ」についてアンケート調査を実施。
職場で実際に起きた事例に対し、「うそをついてしまう人の心理」と「適切な対処法」を、中原先生に解説してもらった。
ケース1「反射的に出るうそ」
男性の先輩社員が担当するWebサイトが期日になっても更新されないので問いただしました。
すると彼は、「システムの不具合だ」と主張してきました。でも実際は、更新作業を忘れていただけ。
システムの不具合だと主張するので、彼以外のみんなでシステムの点検をするはめになりました。
正直に「忘れました」って言えば済んだのに……。
【中原先生の解説】
これは「自分を守りたい」という理由でうそをつく“防衛”のパターンです。
やっかいなのは、「自分は悪くない」と思っていること。このようなうそは反射的に口をついて出てしまうもので、本人はうそをついているという自覚さえありません。
似たような例だと、すごく不機嫌な顔をしている夫に、妻が「どうしたの、何かあったの?」と聞いたとします。そして、このような時、夫のほとんどは「別に」と答える。
本音を言えば、あきらかに何かあったはず。でも、口をついて出てくるのは、本音とは全く違う言葉なんです。
このようなうそは特に男性に多く、ほぼ全員が本能的につきがちです。なぜなら、男性は自分の感情を表に出すのが得意ではないから。
特に日本には恥の文化があるので、「自分の弱みを見せるなんて」と考える人が大半です。そして「恥をかくこと自体が人から責められる」「攻撃される」という概念がセットになっている。
よって攻撃されたくないから、反射的に自分を守ろうとして防衛のうそをつくわけです。
このケースのように、自分の失敗やミスの責任を認めない人は、自覚がないため、うそを指摘しても「何を言ってるんだ?」と思うだけで理解はしません。
よって対処法としては、理論武装がおすすめ。このケースなら、Webサイトのログ解析など客観的証拠を示して、本人に突き付けることで、チーム全員が余計な仕事をする事態は回避できます。
ただし、それを本人に言うのは第三者に頼んだ方が良いでしょう。特に男性は権威に弱いので、自分より立場が上の人から指摘されれば、素直に聞き入れる可能性は高いと思います。
ケース2「責任から逃げるためのうそ」
「両親が同時に倒れた」と言って、大事なプレゼンを欠席した後輩男子。そのくせ、どこに入院したのか聞いても返事はあやふや。
どう考えても、うそついてるでしょ!? ってバレバレでした。
【中原先生の解説】
これは“防衛”と似ていますが、違うのは本人に「悪いことをしている」という自覚があること。罪悪感はあるのです。だからこそ、その責任を負いたくなくて逃げてしまう。いわば“逃避”のパターンです。
「思い込み」にも近いケース1と違い、ケース2は罪悪感があるので、追及したときにさらにうそをついて逃げようとします。
このケースも、「プレゼンがうまくいかなかったらどうしよう」「提案がクライアントに採用されなかったらどうしよう」と考え、その責任やプレッシャーから逃げたのだと考えられます。
このタイプの人は、叱ったり責任を追及しても、結局また逃げるだけ。だから最初から言い訳をさせないよう、逃げ道を丁寧にふさいでいくしか対処法はありません。
このケースであれば、後輩は過度のプレッシャーやストレスがかかると逃げるわけですから、それを少しでも感じさせないようにすればいい。
「プレゼンの本番がうまくいくように、一緒に練習しようか」「いきなり全部を担当するのは大変だから、今回はプレゼンの導入部分だけやってみようか」といった会話をしながら、親身になって関わるしかありません。
ある意味で最も手が掛かるタイプと言えますが、不安が払拭されれば真面目に働く可能性もありますので、しばらくは根気よく付き合ってあげてください。
ケース3「自分をおとしめるうそ」
しょっちゅう遅刻する新人。電車が遅れた、事故に遭った、家で飼っている鳩の体調が悪くて……など、毎回ありとあらゆる言い訳を並べる。明らかにうそだと分かるのに……。
【中原先生の解説】
「遅刻を言い訳する」というのは、“防衛”の典型的なパターン。遅刻というミスを責められることを恐れて、自分を守ろうとするわけです。
ただ、いつも決まって遅刻をする人には、また別の心理が隠れています。このような人はわざと遅刻を繰り返しがち。
それを周囲の人にも認知させ、もっと大きなミスを起こしてしまったときに「あいつなら仕方ない」と言われるための予防線を張っているのです。
このように、自分を罰して価値がない人間のように扱うことで、結果的に自分の身を守っていることになります。
このタイプの人は、自分の価値を認められるようになれば変わる可能性があります。
このケースなら、その新人さんの良いところを探して褒めてあげたり、その人が本当にやりたいことにチャレンジする機会を与えたりすれば、本人が自分の人生に意味を見出せるようになるかもしれません。
それによって自分を罰しようとする考えが消えれば、自然と遅刻もしなくなるはずです。
ケース4「相手をおとしめるうそ」
上司にミスをなすりつけられたことがあります。やってもいないことを、私がやったことにして、上に報告していたのです。私のことを嫌っていて、はめようとしたんだと思います……。
【中原先生の解説】
これは明らかに、相手をおとしめたり、傷付けたりすることが目的の悪意あるうそです。
この“悪意”パターンは、“防衛”や“逃避”とセットになっていることが多い。相手をおとしめることで、自分の身を守ったり、責任から逃れようとするのです。
悪意あるうそのターゲットになってしまったら、自分で相手に反撃しようとしないでください。
悪意がある人間は自覚的にうそをついていることが多いので、用意周到に準備をしていて、ぼろを出さない可能性が高いからです。
この場合は、自分で自分の身を守ろうとするより、周囲に守ってもらうのが得策。普段から相手に利用されないように、自分の身を守ることを心掛けましょう。
そのためには職場の人たちと円滑なコミュニケーションを心掛け、信頼を得ておく必要があります。
たとえ自分が上司からミスをなすりつけられても、他の上司や同僚たちが「彼女はそんなことをする人じゃない」と弁護してくれるような環境を整えておくことで、相手が手出しできないようにすればいいのです。
番外編「本人は真実だと思って疑わないケース」
昨日も、一昨日も教えてあげたことなのに、毎回「え、そんなこと聞いてません」としらを切る後輩がいます。なんでそんな堂々とうそがつけるんだろう……。
【中原先生の解説】
この場合、本人がうそをついたことに気付いていないことが多い。昨日聞いたことをすっかり忘れて、本人は“本当のこと”を言っているつもりだということも考えられます。
この場合も、理詰めで対処するしかありません。教える度にメモを取らせて、「聞いていない」と言われたら、「じゃあ、昨日のメモを見てみよう」と言えばいいのです。
ここで重要なのは、「あなたを責めているわけではない」という姿勢を見せること。「責められている」と感じると、今度は“防衛”のうそをつくようになるので、堂々巡りになってしまいます。
ですからこちらも感情的にならず、「仕事をスムーズに進めるために、メモを取るようお願いします」と淡々と説明してください。
悪質なうそもある。専門家に相談するのもアリ
中原先生によれば、職場においてうそでトラブルが起こる時は、普段のコミュニケーションが足りていない場合がほとんどだという。
「どうして私がそこまで気を使わなくちゃいけないの? と思うかもしれませんが、自分がうそをつかれて苦労しないためにも、やっかいな相手とも日頃からコミュニケーションを取っておくことが大切です」(中原先生)
日頃のコミュニケーションを怠ると、あとで何倍にもなって、面倒なことが襲って来る可能性があるからだ。
しかし、どうしても太刀打ちできない“悪質なうそ”をつく人がいるのも事実。その人のうそによって職場で弊害が起きているなら、一人でなんとかしようとせず、上司など然るべき人に相談しよう。
社内でどうにもできないときは、専門家の力を借りることも有効だ。「労働基準監督署や弁護士などに相談してみましょう」(中原先生)
恋愛から対人関係、仕事、コミュニケーションなど、幅広いジャンルのカウンセリングをのべ1万人に行ってきた実績を持つ。現在はカウンセラー養成のための組織「カウンセリングスタディスクール」を主宰するほか、講演やセミナーでも活躍中 HP:http://counseling-ss.com/
【アンケート調査概要】
●調査方法:転職サイト『女の転職@type』の20代~30代女性会員およびWebマガジン『Woman type』サイト読者へのWebアンケート
●調査期間:2015年4月16日~20日
●有効回答者数:214名
※この記事は、2015年6月24日に公開し2023年6月26日に更新しています
取材・文/塚田有香