「仲良くて穏やか=心理的安全性が高い」は勘違い? どんな人でも意見が言える場をつくるための3ステップ【十束おとは】
働く女性が抱える仕事やキャリアにおけるメンタルヘルスのお悩みに、キャリア×メンタルヘルスの専門家、十束おとはさんが回答!心身ともにヘルシーに働き続けるためのヒントをお届けします。
チームの中に、自分の意見をはっきり言える人がいるのは、とても良いことです。
しかし、
「その勢いに押されて、他のメンバーからあまり意見が出てこない」
「他のメンバーが声の大きい人に流されている気がする」
と感じたことがあるリーダーも多いのではないでしょうか。
今回、「キャリア×メンタルヘルス」の専門家・十束おとはさんに寄せられたのは、そんな“心理的安全性”にまつわるお悩み。
「どんなタイプの人でも安心して意見を言えるチームをつくりたい」
そんな葛藤を抱えるリーダーに向けて、メンタルヘルスの観点から、“誰もが参加しやすい場づくり”のヒントを教えてもらいました。
十束 おとは(とつか・おとは)さん
アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」を2022年11月に卒業。会社員を経て、現在はキャリアコンサルタントとして芸能人のセカンドキャリアや学生・女性のキャリア支援にも取り組む。キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタル心理カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定、産業カウンセラーを取得。ゲーム・アニメ・漫画・映画といったサブカルチャーにも精通し、イベントMC・タレント・ライターなどパラレルキャリアを邁進中■X/Instagram
お悩み:控えめなメンバーが、発言力のあるメンバーに萎縮してしまう
あるプロジェクトチームのリーダーを担っています。
チームには、自分の意見をはっきり伝えられるタイプの後輩がいるのですが、その勢いに他のメンバーが萎縮して意見を言えなくなっているように感じます。
控えめなタイプのメンバーにも意識的に話を振るようにしているのですが、結局は声の大きいメンバーの意見に流されてしまうことが多く、議論が偏ってしまいます。
かといって、自分の意見をきちんと言えること自体は素晴らしいことなので、言える人に配慮を求めるのは違う気がしています。
どんなタイプの人でも安心して意見を言える心理的安全性の高い風土をつくるには、 どうしたらいいでしょうか。
ご相談いただき、ありがとうございます。
チームの中に自分の意見をはっきり言える人がいることは、会議が前に進みやすくなったり、風通しの良い職場環境に繋がったりと、大きな強みだと思います。
一方で、その勢いに圧倒されてしまい「本当は意見があるけれど言えない」という人が出てくることも少なくありません。
今回のご相談者さまも、まさにその狭間で悩まれているのだと感じました。
「意見を言えること自体は素晴らしい。でも、他のメンバーが萎縮してしまっている気もする」
この気持ちは、リーダーとしてチーム全体を丁寧に見ているからこそ強く感じる葛藤なのではないでしょうか。
今回は、相談者さまが書いてくださった「心理的安全性」について私なりの考えをお伝えできればと思います。参考になれば幸いです。
どんなタイプの人でも意見を言いやすくするための3つのコツ
そもそも心理的安全性とは、”何を言ってもいい空気”のことではありません。
簡単に言えば、このチームなら、自分のアイデアや考えを正直に伝えても大丈夫だと感じられる状態のことを指します。
例えば、
「こんな初歩的な質問していいかな」
「否定されたら嫌だな」
「場の空気を止めたくないな」
そんな不安を抱えずに発言できる状態とも言えるかもしれません。
逆に、特定の人ばかりが話していたり、いつも否定から入るような会議では、周囲は無意識に「発言するのはやめておこう」と感じやすく、遠慮がちになってしまいます。
特に真面目で控えめな人ほど、「ちゃんとした意見じゃないと話してはいけない」と感じたり、「なんだか割り込んで話すようで気が引ける」と思ったりしやすく、結果的に黙ってしまうことも多いのではないでしょうか。
会議の場では、「的外れなことを言って恥をかきたくない、変な雰囲気にしたくない」といった、他者から否定的に評価されることへの不安(評価不安)が働きやすいものです。
そのため、発言力のある人がいる場では、無意識のうちに「この意見が正解なのかもしれない」と感じることがあります。すると、評価不安の強いメンバーほど、自分の考えを引っ込めてしまうことがあるのです。
だからこそ、心理的安全性を高めるためには、発言できない人の性格を変えるのではなく、”発言しやすい環境”をつくることが大切です。
「誰もが発言しやすい環境」をつくるためには、下記の3点を心掛けてみてください。
【1】「その場で発言する」のが不得意な人も参加しやすいフローを取り入れる
「自由に話してください」という形式だと、どうしても発言が得意な人が中心になりやすいものです。
そんなときは、
・まず全員が一回ずつ話す
・最初にチャットやメモで意見を書いてもらう
・「まだ考えがまとまってなくても大丈夫」と最初に伝える
といった工夫を入れるだけでも、控えめなメンバーの声が見えやすくなります。
人によって、「安心して話せるかたち」は異なります。
その場ですぐ発言するのが得意な人もいれば、一度整理してから話したい人、口頭より文章の方が考えを伝えやすい人もいます。
だからこそ、さまざまな参加方法を用意することで、どのようなタイプの人でも意見が出しやすくなるはずです。
【2】すぐに結論を出そうとしない
会議ではつい、「じゃあこれでいこう」と早くまとめたくなることがあります。
でも、少し立ち止まって、「他の視点はある?」「まだ話していない人はどう思う?」と聞くだけで、安心して話しやすくなる人もいます。
また、リーダーの「最初の反応」も、チームの空気に大きく影響します。
たとえ意見が採用されなかったとしても、「言ってくれてありがとう」「そういう視点もあるね」と一度受け止めてもらえるだけで、人は「ここでは話しても大丈夫なんだ」と感じやすくなります。
心理的安全性は、特別な制度によって生まれるというより、「この場では話しても大丈夫そう」と感じる小さな日々の積み重ねで育っていくものだと思います。
【3】会議以外の場で一人ひとりの「強み」を伝える
会議以外のコミュニケーションもとても大切です。
例えば普段から、
「○○さんの整理の仕方、助かってます」
「前に言ってくれた視点、すごく良かったです」
と、一人ひとりの強みを言葉にして伝えていく。
そうすると、「自分はこのチームにいていいんだ」と感じやすくなり、その安心感が、少しずつ自分の考えを話すことにもつながっていきます。
一方で、発言力のあるメンバーを悪者にする必要はありません。
むしろ、その人の発信力はチームにとって大切な武器です。ただ、「いろんな人の意見も引き出したい」とリーダーが方向づけをすることで、チーム全体のバランスが取りやすくなります。
心理的安全性というと、「みんなが仲良く、波風を立てない」というイメージを持たれがちですが、本来は少し違います。
大切なのは、いろんな考えの人が、自分らしく参加できること。ただ空気が穏やかなだけではなく、安心して異なる視点を持ち寄れる状態こそが、本当の意味で心理的安全性の高い職場なのだと思います。
よく話す人も、慎重に考える人も、どちらもチームには必要です。
だからこそ、誰かを変えるより、全員が参加できる場を整えることが、リーダーの役割なのかもしれません。
相談者さまはすでに、控えめなメンバーに意識的に声をかけるなど、チーム全体を見ながら動かれていて、十分リーダーシップを発揮されていると思います。
きっと、少しずつ相談者さまの気持ちが伝わり、安心して働ける場所に近づいていくはずです。応援しています!
『十束おとはの「キャリア×メンタルヘルス相談室」』の過去記事一覧はこちら
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