影山優佳「期待に応えたくて自分を麻痺させてた」完璧なアイドルを目指した彼女が“素の自分”を愛すまで

影山優佳「期待に応えたくて自分を麻痺させてた」完璧なアイドルを目指した彼女が“素の自分”を愛すまで

2023年に日向坂46を卒業後、現在は女優・タレントとして活躍する影山優佳さん。大のサッカー好きとして知られ、先日のW杯でもその戦術眼や的確な分析が大きな話題を集めた。

人口の上位 2 %の IQを持つ人達が参加する国際グループ『MENSA』の会員でもある彼女に、「元アイドルで、サッカーに詳しくて聡明な女性」というイメージを持つ人も多いだろう。

影山優佳さん

影山優佳さん

2001年5月8日生まれ、東京都出身。16年にけやき坂46(のちの日向坂46)のオーディションに合格しデビュー。23年のグループ卒業後は、女優やタレントとして幅広く活躍。サッカー審判4級の資格を持ち、大のサッカー好きとしても知られる。最新エッセイ集『影まで愛して』(マガジンハウス) X Instagram

そのパブリックイメージから、何事もそつなくこなす「完璧な女性」と思われがちだが、実は「周囲に求められる自分」と「本当の自分」のズレに長年苦しんできたという。

25歳という節目に刊行された初のエッセイ集『影まで愛して』(マガジンハウス)では、これまで見せてこなかった葛藤や泥臭い「影」の部分を赤裸々に綴っている。

期待に応え続けることで自分をすり減らしていた過去から、彼女はどうやって「素の自分」を許せるようになったのか。

仕事でつい「しっかり者」を演じて疲れてしまう女性たちに向けて、影山さん流の「自分を置き去りにしないためのヒント」を聞いた。

「求められる私」に、自分を麻痺させていた日々

編集部

書籍『影まで愛して』では、人の言葉の裏を探してしまう一面や、そのままの自分をさらけ出せない苦悩など、影山さんのイメージからは想像つかないような本音が綴られていました。

今回、このタイミングで「本当の自分」をさらけ出そうと思ったのはなぜですか?

影山さん

芸能活動10周年、そして25歳という節目を迎えて、今まで関わってきてくれた方々に私の言葉で感謝を伝えたいという想いからでした。私に何ができるだろう?と考えたときに、今まで見せていなかった私のそのままを文章で差し出そうと思ったんです。

影山優佳さん
影山さん

世間の皆さんから抱かれている「影山優佳」のパブリックイメージとは少し違った「そのままの私」を見せることで、読んでくださった方にも「自分らしさってなんだろう?」と立ち止まるきっかけになったらうれしいな、と思って書きました。

編集部

影山さんは「サッカーに詳しい」「クイズに強い」「賢い」など、高い期待やイメージを寄せられることが多いと思います。ご自身ではどう受け止めていたのでしょうか。

影山さん

一番切ないのって「無関心」だと思うんです。だから、私を覚えてくださったり、何かしらの印象を持っていただけたりすること自体が、すごく光栄なことだと日々感じています。

もし「もっとこうすればいいのに」とか「影山ってこんな人間だよな」と言われたとしても、「精進します!」というスタンスで。どんな印象でも持ってもらえることはありがたく受け取っていますね。

影山優佳さん
編集部

そこまでのプロ意識があるからこそ、逆に苦しくなってしまう瞬間もあったのではないでしょうか?

影山さん

そうですね。中学3年生からこのお仕事をしているので、やっぱり「求められていること」と「本当の自分」のズレで葛藤する時期はありました。アイドルとして完璧な姿を崩しちゃいけない、常に期待以上の成果を出し続けなきゃ、と。

期待に応えるために、自分を麻痺させるしかなかった部分も正直あって。自分でも気づかないうちに、期待の型に無理やり自分を当てはめて、ガチガチに固まった氷みたいになっていたんです。

今回のエッセイは、その氷を溶かして、ほぐしていくような本になったかなと思います。

挫折から学んだ「裸の心」でいられる時間の大切さ

影山優佳さん
編集部

「周囲の期待」と「素の自分」の乖離に気付いたのは、どんなタイミングだったのでしょうか?

影山さん

体調不良で仕事をお休みさせていただいたことがきっかけでした。元々感覚過敏な体質で、目や耳、鼻が敏感すぎて生きづらいなと感じることがあったんです。それでも頑張らなきゃと無理をし続けていたら、やっぱり限界を超えてしまって……。

編集部

エッセイでも、ご自身の感覚過敏について綴っていましたね。

影山さん

アイドルからの卒業を考え始めたのも、大きなライブ会場での音に耐えられなくなったのがきっかけだったんです。もっと頑張れたかもしれないのに、ファンのみんなにも、メンバーにも申し訳ない。自分を責めて、眠れない夜を何度も過ごしました。

編集部

卒業の裏に、ままならない事情もあったのですね。

影山さん

卒業して数年経ちましたが、今は自分の環境に心から感謝しています。

それに、仕事を休んだり立ち止まったりしたからこそ、体はもちろん、自分の心に無理を強い続けたら、いつかボロが出てしまうことに気付けたんだと思います。

影山優佳さん
編集部

ご自身のモヤモヤとはどう向き合っていったのでしょうか。

影山さん

社会に出て生きていく上で、自分の理想だけを押し通すことはできなくて、妥協だったり、いろんなものの折衷案だったりを考えることがどうしても必要になってくると思うんです。その瞬間は、やっぱり頑張らなきゃいけない。

だからこそ、頑張り続ける裏で、「裸の心」でいられる瞬間を意図的に設けることが大切なんだと思います。私だったら、美味しいご飯を食べたり、サウナに行ってリフレッシュしたり。自分を慰めて、労ってあげる時間をつくるのが、自分らしく働き続けるためには必要なんですよね。

選択肢に迷ったときは、あえて「楽しい方を選ぶ」

影山優佳さん
編集部

読者の中にも、職場で「しっかり者」を演じてしまい、帰宅後にどっと疲れてしまう人が多いと思います。そんな時、影山さんはどうやって自分を労っていますか?

影山さん

私、頭の中がぐちゃぐちゃして広がっちゃうタイプなので、気になったフレーズや疑問に思ったことをスマホのメモに書き留めているんです。

例えば最近だと、人に対して「ありがとうを伝えるって大切」だなぁという、ごく当たり前のことを書いていました(笑)

編集部

それはなぜですか?

影山さん

最近見させていただいた恋愛リアリティショーの番組で、告白を断る時にはみんな「まずは、気持ちを伝えてくれてありがとう」って言うんですよ! それを見て、自分の気持ちを伝える前に、まずは相手の思いに寄り添って感謝を伝えるのって、とても大切だなぁと。

仕事をしていく中で、周りの人に何かをお願いしたり、自分の意見を伝えたりするのってなんだか申し訳ないし、変に遠慮してしまうなと感じていたんです。

でも、まず「ありがとう」をクッションにすることで、自分も相手も心地よくコミュニケーションが取れる。これって、働く上での人間関係を円滑にする、すごく大事な処世術だなと気付かされました。

影山優佳さん
編集部

周囲の期待と自分の気持ちが板挟みになって、迷った時はどうしていますか?

影山さん

私が大切にしている言葉の一つに、「迷ったら楽しい方を選ぶ」というのがあります。普通は選べないことの方が多いからこそ、自分で選択できることに感謝して、楽しめるなら楽しもうっていうマインドは、意識して持つようにしています。

編集部

素敵な考え方ですね。

影山さん

あとは、周囲への自分の見せ方を少し工夫してみるのも大切かもしれません。

編集部

見せ方?

影山さん

「なんでもできます!」と言ってしまえばその場の体裁はよくなるかもしれないけど、長期的な目線で見たときに、本当に自分はそれでいいのか考える。できないとストレートに言わなくても、「できる限りがんばります」と気持ちを表現して、少しだけ自分を守るのもありだと思います。

「求められる私」を裏切らなくていいんですよ。ただ、その中に少しだけでも「本当の私」を混ぜていく。それだけで、健やかにい続けられる気がしています。

編集部

日々期待に応えようと頑張りすぎて、自己否定の沼にハマる必要はないのですね。

影山さん

はい。私ももともと思考が後ろ向きで、自分の愛し方も分からないタイプだったんです。でも、周りの人たちに支えられて大人になってきて、ようやく「自分を愛したい」と思えるようになってきました。

もし今、自分を見失ったり「自分ってダメだな」と落ち込んだりしている人がいたら、まずはそんな自分の弱さや影の部分を認めてあげてほしいです。自分のダメなところを見つけられたということは、多分「自分のことをもっと好きになりたい」と思っている証拠だから。

みんな、誰かの期待に応えようと毎日一生懸命働いているはずです。だからこそ、自分のことを責めるのではなく、もっと労ってあげてほしいなと強く思います。

取材・文/神田佳恵 撮影/笹井タカマサ

【書籍紹介】 『影まで愛して』(マガジンハウス)2026年7月30日発売!

影まで愛して

わたしの人生は秘密だらけである――。これまで一度も明かしてこなかった本音を等身大の言葉で綴った、影山優佳さん初のエッセイ集。

「ほめ言葉をそのまま素直に受け取れない自分」「自分に限界をつくり諦めてばかりの自分」…「本当の影山優佳」を文章で明かしています。

撮りおろしの袋とじページなど、影山さんのビジュアルも存分に楽しめる一冊です。

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