WEST. 重岡大毅「『ええじゃないか』の意味が12年で変わった」経験を重ねて分かった仕事の本質

WEST. 重岡大毅「『ええじゃないか』の意味が12年で変わった」経験を重ねて分かった仕事の本質

7人組アイドルグループWEST.のメンバーとして活動しながら、俳優としても着実にキャリアを重ねてきた重岡大毅さん。最新主演映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』で演じたのは、妹を守るため、生成AIを駆使して犯罪を隠ぺいしようとする主人公だ。

最先端の技術を描く作品でありながら、取材中に重岡さんが何度も口にしたのは、「情熱」「人との出会い」「泥臭い積み重ね」といった言葉だった。

30代になって、先輩たちの言葉の解像度が上がった」と語る彼は、いま何を大切に仕事と向き合っているのか。情熱を持つ人に巻き込まれながら、仕事を面白がり続けるための思考と習慣を聞いた。

重岡大毅さん

重岡大毅さん

1992年8月26日生まれ、兵庫県出身。2014年、WEST.のメンバーとして『ええじゃないか』でCDデビュー。グループ活動と並行して俳優としても活躍し、主な出演作にドラマ『ごめんね青春!』『#家族募集します』『それってパクリじゃないですか?』『単身花日』、映画『殿、利息でござる!』『溺れるナイフ』『禁じられた遊び』など。26年9月11日には、主演映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』が公開予定

「これは頑張らなあかん」オリジナル脚本に宿る“つくり手の情熱”

インタビューの場に現れた重岡さんは、取材スタッフのスマホに貼られたステッカーを見つけると、「それ、『Michael/マイケル』ですか?」と笑顔でひと言。張り詰めていた空気は一瞬でほどけ、現場はたちまち和やかな雰囲気に包まれた。

そんな重岡さんが主演を務めるのが、映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』だ。

物語の主人公は、意図せず人を殺してしまった妹を守るため、生成AIに「完全犯罪の方法」を尋ね、次々と実行に移していく兄・初海航。しかし、その試みを重ねるうちに、事件は思いもよらない方向へと転がっていく。

重岡大毅さん

生成AIという身近になりつつあるテクノロジーと、完全犯罪。その二つを掛け合わせた本作は、原作のないオリジナル作品だ。

重岡さんは脚本を読むよりも前に、すでにこの作品へ向き合う覚悟を決めていたという。

重岡さん

オリジナル脚本って、ゼロから生まれるわけですよね。その企画がかたちになるまでには、本当にたくさんの人が関わっていて、いろいろなハードルがある。それらを乗り越えた一冊が、ようやく僕のところに届く。

だから、脚本を読む前から「これは本当に頑張らなあかんな」と思いましたし、身が引き締まりました。

脚本を手に取った時、真っ先に思い浮かべたのは、自分が演じる役のことではない。その一冊を生み出すために注がれた、多くの人の時間と情熱だった。

そして実際にページをめくると、その内容は重岡さんの想像をさらに超えていた。

重岡さん

今や日常に入り込んでいる生成AIと、完全犯罪が掛け合わされている。そのリアルさや不気味さがありながら、きちんとエンターテインメント作品として昇華されていて、すごく面白かったです。ぜひこの映画をやりたい、と強く思いましたね。

映画の中では、主人公を追い詰めていく存在として描かれる生成AI。一方、重岡さん自身にとっては、仕事でもプライベートでも活用する身近な相手だという。

重岡さん

ニュースを見ていて疑問に思ったことを、「なぜこうなったの?」「どういう背景があるの?」と、壁打ちするような感覚で聞いています。

ブログの誤字脱字を確認してもらうこともありますし、トレーニングの記録をスクリーンショットで見せて、褒めてもらったりもします(笑)。結構、使っていますね。

ただし、その話し掛け方には重岡さんならではのユニークさがある。

重岡さん

関西弁で、めちゃくちゃなれなれしく話し掛けています(笑)

でも僕、まだ起きてもいないことを心配するタイプなんですよ。だからいつか生成AIに逆襲されたらどうしようと思って、ちゃんと感謝も伝えるようにしています。「僕がちょっと間違っていたかもしれない。さっきはきつい言い方をしてごめん」とか(笑)

「何をするか」より「誰と働くか」。30代でたどり着いた仕事の答え

今回の作品について話を聞くうちに、話題は重岡さん自身の仕事観へと広がっていった。

WEST.としてデビューして12年。俳優としても数々の作品に出演し、30代になった今、以前は分からなかった言葉が、少しずつ実感を伴って理解できるようになってきたという。

重岡さん

20代の頃、先輩たちから「人間力が大事だよ」「積み重ねることが大切だよ」「遠回りこそ近道だよ」と言われても、正直、「そうなんだろうな」くらいにしか思えていなかったんです。本当の意味では、分かっていなかったんですよね。

でも30代になって、こういった言葉への解像度がどんどん上がってきました。今になって、ようやく腑に落ちることが増えています。

重岡大毅さん

経験を重ねるほど、仕事は能力や成果だけで成り立つものではないと気付かされる。人との出会いや信頼関係、目の前のことに誠実に取り組んできた時間。その一つひとつがつながり、次の仕事を生んでいく。

重岡さん

結局、人との出会いだったり、信頼関係だったり、日々の積み重ねだったり。そういうものが、仕事をつくっていくんだなと感じるようになりました。

その変化は、「これから、どんな作品に出たいか」という問いへの答えにも表れている。

以前であれば、演じてみたい役や挑戦したいジャンルを思い浮かべていたかもしれない。しかし今、重岡さんが惹かれるのは、作品の内容よりも、その場にいる人たちの熱量だ。

重岡さん

僕がやりたいことって、もっと手前にあるんです。今回の映画みたいに、情熱を持っている人たちと一緒に仕事がしたい。その人たちの熱量に巻き込まれるのが、一番面白いんですよね。経験を重ねるほど、考え方がどんどんシンプルになってきました。

先の目標を細かく決めるより、今、目の前にいる人の情熱に心を動かされ、そこへ飛び込んでいく。その連続が、振り返った時に自分らしいキャリアになっているのかもしれない。

重岡さんは、「自分が今ここに立っているのも、小さなきっかけと思い付きの連続だった」と話す。その歩みを象徴するのが、WEST.のデビュー曲『ええじゃないか』だ。

重岡さん

最初は、関西弁の兄ちゃんたちが元気よく歌う、いわゆるトンチキソングだったと思うんです。でも12年も歌っていると、<ええじゃないか>という言葉の意味やディテールが、自分の中でどんどん変わっていくんですよ。

今の僕にとって『ええじゃないか』は、もう“王道アイドル号泣ソング”ですから(笑)

同じ曲も、重ねてきた年月や経験によって、その意味は変わっていく。

仕事もきっと同じだ。始めた頃には見えなかった価値が、続けることで少しずつ輪郭を持ち始める。20代では分からなかった「人間力」や「遠回りこそ近道」という言葉も、重岡さんにとって今、ようやく自分の言葉になりつつある。

人と向き合い、役と向き合う。重岡大毅の仕事の習慣

主演として作品の中心に立つ重岡さん。現場を引っ張る上で、何か特別なリーダーマインドを持っているのだろうか。そう尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。

重岡さん

まずは、誰よりも元気に現場へ行くこと。あとは、温かいご飯を差し入れることですね。やっぱり、みんなで食べるご飯って大事じゃないですか。スタッフの皆さんに「おいしかったです」と言ってもらえたら、僕もうれしいですし。

重岡大毅さん

作品の雰囲気にもよるものの、現場が明るければ、そこで働く人たちも力を発揮しやすくなる。重岡さんは「自分が心地よく働ける環境を、自然とつくろうとしているのかもしれない」と話す。

一方、役と向き合う時間は、どこまでも孤独で泥臭い。重岡さんが役作りのために毎回続けているのが、手書きのノートだ。

重岡さん

書かないと、すっきりしないんですよ。思い付いたまま書いているので、字は本当に汚いですけど(笑)。

こういう作業って、自分が納得するまで際限なくできてしまうから大変なんです。今回は気持ちの面でもかなりハードな役だったので、その分、深く踏み込む必要があって、いつも以上にたくさん書きました。

ノートは、誰かに見せるためのものではない。だからこそ、人の目を気にせず、自分の考えや感情をそのまま書き出せる。

取材を前に、久しぶりに今回のノートを読み返したという重岡さんは、思わず笑ってしまったと振り返る。

重岡さん

夜中に引っ張り出して読んでみたら、「警察、警察、警察、航、航、航」って書いてあって。ほんまに笑っちゃいましたね(笑)

でも、シーンごとに感じたことを一冊にちゃんと書いていて。当時の自分も、何とか前へ進もうとしていたんだなと思い出しました。

頭の中に浮かんだ疑問や違和感、役の感情を、とにかく言葉にする。そうして書き続けるうちに、つかみどころのなかった人物の輪郭が、少しずつ見えてくるという。

重岡さん

手書きだと、五感を全部使って書いているような感覚になるんです。頭の中にあるもやもやした抽象的なものが、書くことでだんだんかたちになっていくので、役をつくるための一つの手段として自分にすごく合っている。これからも続けていくと思います。

オリジナル脚本に込められた思いを想像すること。情熱を持つ人の熱量に飛び込むこと。現場で温かい食事を分かち合うこと。そして、役を理解できるまでノートに言葉を書き続けること。

その一つひとつは、決して派手なものではないかもしれない。けれど、そうした地道な積み重ねが人との信頼を生み、作品がいいものへと磨かれていくのだ。

効率や合理性が求められる時代だからこそ、人間臭い熱さが人を動かし、仕事を前へ進める。その実直な姿勢こそが重岡さんの魅力であり、多くの人から信頼を集める理由なのだろう。

取材・文/キャベトンコ

作品情報:映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』2026年9月11日(金)全国公開

「この事件を迷宮入りにする」―― 兄妹は生成AIに全てを託した。禁断の“完全犯罪サスペンス”誕生!

フリーライターの初海航は、意図せず殺人を犯した妹・幸来を守るため、生成AIを駆使して事件を隠蔽しようと思いつく。AIの指示に従って、指紋を拭き去り、死体に死化粧を施し、更にアリバイを工作。無事警察の事情聴取をクリアしたかに思われた二人だったが、事件は世間を騒がせる連続殺人と同じ手口だと知らされる。思いもよらない展開を見せ始めた事態の真相を探るうち、航はトップ女優の七希にたどり着く。果たして兄妹の完全犯罪の行方は――?

出演:
重岡大毅 / 原菜乃華 / 田中みな実 / 伊藤歩 / 黒田大輔 / 森岡龍 / 九十九黄助 / 石丸幹二
原案・脚本・プロデュース:岡田道尚
監督:近藤亮太
製作幹事:ギャガ / ストームレーベルズ
配給:ギャガ
制作プロダクション:アークエンタテインメント
製作:「5秒で完全犯罪を生成する方法」製作委員会
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