「結局、鈴木愛理って何してる人なの?」迷いながら選んだ道を“正解”にしてきた24年間

「結局、鈴木愛理って何してる人なの?」迷いながら選んだ道を“正解”にしてきた24年間

「私は今後どうしたいんだろう……」

28歳当時のインタビューでは、周囲の友人たちがライフステージの変化を迎える中、揺れる胸の内をそう明かしてくれた鈴木愛理さん。

あれから4年。歌に芝居、MCと活動の幅をさらに広げ、2026年10月23日(金)公開の映画『昨夜は殺れたかも』では、吉野北人さん(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)とW主演を務める。演じるのは、専業主婦を装いながら夫に仕事を隠して暮らす敏腕社長・咲奈という、一風変わった役だ。

新しい道へ進むたびに、迷いや不安がなかったわけではない。それでも彼女が「自分で選ぶこと」を手放さずにきたのはなぜなのか。32歳になった今の言葉に耳を傾けた。

新境地の役柄で見つけた「仕事が大好き」という共通点

鈴木愛理さん

鈴木愛理さん

1994年4月12日生まれ。千葉県出身。2002年、約3万名の応募から8歳で『ハロー!プロジェクト・キッズ』に合格。05年アイドルグループ「℃-ute(キュート)」を結成、07年に『桜チラリ』でメジャーデビュー。リリースしたシングル31作がすべてオリコンTOP10入り。17年にさいたまスーパーアリーナでのコンサートで解散。18年よりソロ活動を開始し、同年6月に1stアルバム『Do me a favor』をリリース。ソロ活動後に2度の武道館公演を開催した。俳優業、MC業など多岐にわたって活動の場を広げている X Instagram YouTube『鈴木愛理チャンネル』

映画『昨夜は殺れたかも』は、元ヤクザという過去を隠す夫・光弘と、素性を隠す妻・咲奈が織りなす、愛情と狂気が交錯するミステリーエンターテインメントだ。

鈴木さん

私が演じる咲奈は、普段はしおらしい専業主婦を装っているけど、実はやり手の若手社長という役柄。オーバーな発音で英語を話したり、身振り手振りを大げさにしたりと、コミカルなお芝居がすごく楽しい現場でした。

いつもは役づくりのために、役の立場や感情に共感しながら演じることを意識しています。でも今回は、スピード感と面白さが大切な作品だったので、「どれだけぶっ飛べるか!」に重きを置いた、新感覚のお仕事だったなと思います(笑)

作中画像

とはいえ、仕事に邁進する咲奈の姿には、鈴木さん自身と重なる部分もあったという。

鈴木さん

パソコンで黙々と事務作業をしたり、つい仕事に夢中になってしまったり。キャリアウーマンモードのときの咲奈からは、「仕事が大好き!」というエネルギーがあふれていて。

そういう部分は、普段の私によく似ているなと思いました。

互いの素性を隠して夫婦生活を送る光弘と咲奈は、相手を深く愛するがゆえに疑念や思い違いを重ね、何度も選択を誤り、愛情を殺意へと変貌させていく。

作中画像

劇中の2人ほど極端ではないにせよ、鈴木さん自身にも、迷ったり間違えたりする瞬間は今もあると、率直に打ち明けてくれた。

鈴木さん

「うわ、もっとうまく言えたのに…!」って思う瞬間、たくさんありますよ! 特にバラエティ番組はいまだに緊張しちゃいます。

関西の番組に出演させていただいたときは、周囲の芸人さんのテンポについていくのに必死で、考える前に言葉が出てきちゃって!「あれ、私今何話していたっけ?」なんて経験もたくさんありました。

鈴木愛理さん

瞬発力が求められる収録現場。鈴木さんはどんなことを意識しているのだろうか。

鈴木さん

自分が思うほど、人はそんなに自分に興味がないって思うようにしています。以前海外でお仕事をしたときに、周りの目をこんなに気にするのは日本人だけなのかもしれないと気付いて。それで少し気持ちが楽になりました。

それと、緊張をほぐすためにも、一度息を全部吐き切ってから話すように意識していますね。良くも悪くも、発言にはその人の意志が宿ると思うから。自分の言葉には、自分で責任を取れるようにしたいんです。

自分の言葉に、自分で責任を持つ。その姿勢は、人生の大きな選択への向き合い方にもつながっていく。

「結局、何してる人なの?」に揺れた日々

℃-uteの解散後、ソロアーティストとして歌いながら、芝居やMCにも活動の場を広げてきた鈴木さん。新しい仕事に挑戦することは、これまで築いてきた「鈴木愛理」のイメージから離れる怖さも伴った。

鈴木さん

何足もわらじを履くことで、「結局、鈴木愛理って何してる人なの?」とネガティブな言葉をかけられることも昔はあったんです。向かう先が見えない不安から、「私の方が知りたいよ……!」って苦しくなることもありました。

そんなとき、鈴木さんが立ち返ったのは「どの仕事をするか」よりも前にある、自分の思いだった。

鈴木さん

なぜ私がこの仕事をしているのかを思い出すんです。

「私は表現することが好きだから、この世界にいるんだ」って。自分が自分であり続けられなければ、きっと全てが崩れてしまうと思うから。

鈴木愛理さん

4年前のインタビューでも語っていた「表現することが好き」という思い。その軸から仕事を見つめ直したことで、新しい分野への挑戦も、鈴木さんにとって違った意味を持つようになった。

鈴木さん

どんな場所で、どんなお仕事をしていても、私の中にあるのは「表現者でありたい」という願いなんです。アーティスト以外の活動に飛び込むことで、今までの自分がなくなってしまうんじゃないかって怖さを感じたこともありました。

でも、一歩ずつお仕事の幅を広げていったら、それぞれの仕事がいい循環をつくっていると感じるようになって。お芝居の経験が歌に生きるし、歌を通じてお芝居が磨かれていく感覚もある。

「表現者」という原点から見つめ直したら、迷う瞬間が少なくなりました。今はむしろ、お仕事の幅を広げることが、自分らしさを深めてくれるんだと信じています。

迷いが生まれそうになったら、自分の原点に立ち返る。“表現者”としてのアイデンティティが、鈴木さんの枠に囚われない挑戦を支え続けてきた。

自分の選択に「絶対後悔しない」なんて、無理

鈴木愛理さん

仕事でも人生でも、正解の見えない選択を前にすれば、誰だって不安になる。間違えるのが怖くて選択を人に委ねたり、本心を押し殺して決めたりした結果、かえって後悔が深まることもあるだろう。

では、人生の大きな選択を前にしたとき、鈴木さんはどう向き合っているのか。

鈴木さん

正直、自分の選択に絶対後悔しないことなんて、無理だと思うんです。どんな場面においても、「あの時ああしていれば……」って思うことがあるし、その感情自体は悪いものじゃないと思う。

後悔する気持ちそのものは、否定しなくていい。ただ、鈴木さんはそこで立ち止まらない。

鈴木さん

それでも私は、そこで終わりたくない。自分で選択したその先の未来は、自分が正解にしていくんだって気持ちを、大切にしたいんです。

自分で選んだ道だから、最後までやり切る。自分で飛び込んだ場所だから、何か一つでも前進させる。過去の自分に、「あの時選んだ道に間違いはなかった」と言ってあげられるように生きよう。大きな選択を前にしたときは、そんなことを考えているかもしれません。

明るい声で、笑顔を浮かべながらそう語る鈴木さんを見ていると、選ぶことは怖いことばかりではないのだと思えてくる。

選択の正しさより「これが私」と胸を張れる生き方を

鈴木愛理さん

「自分で選んだ道だから、最後までやり切る」。その言葉を裏付けるように、2027年に芸歴25年を迎える鈴木さんには、ちょっとした“自慢”がある。

鈴木さん

幼いころから、ずっと仕事がそばにありました。生活の中に仕事が染み込んでいる感覚。どこにチャンスが転がっているか分からないから、いただいたお仕事はきちんとやり遂げたい思いがずっとありましたね。

だからなのか、今まで一度も仕事を休んだことがなくて、これが一つの自慢なんですよ。自分の中のギネスを更新したい!って使命感が年々強くなっちゃってます(笑)。負けず嫌いな性格も影響しているかもしれないです。

キャリアを重ねる中で、少しずつ変わってきた意識もあるという。

鈴木さん

グループで活動していたときは、「グループの一員としての鈴木愛理」として自分を客観視していました。

個人で活動するようになった今は、グループの肩書きがないから、自分の言動や発信すべてが「鈴木愛理」としてのイメージに直結するという意識になっていますね。

鈴木愛理さん

常に多くの視線を浴び、評価にさらされ続ける芸能界。『昨夜は殺れたかも』の咲奈のように、表と裏の顔を使い分けて生きる道もあるだろう。だが、鈴木さんが選ぶのはその逆だ。

鈴木さん

簡単なことじゃないかもしれないけれど、どの部分を切り取られても、本心と差異がない生き方をしていきたいです。どんなときも自分の気持ちに素直に生きていれば、表も裏もない、ありのままの自分を見ていただけるじゃないですか。

たくさんの方に歌や言葉を届ける一人の人間として、一つひとつの言葉にうそ偽りのない自分でありたい。どんな瞬間も「これが鈴木愛理です」と言えるような状態で生きていけたらいいなと思っています。

思えば『昨夜は殺れたかも』という物騒なタイトルも、「あの時、ああできたかも」という“たられば”の言葉だ。

人生には、そんな“かも”がいくつも残る。けれどいつか過去の自分に「あのとき選んだ道に間違いはなかった」と言えれば、それでいい。鈴木さんの明るい笑顔が、それを教えてくれた。

作品情報

映画『昨夜は殺れたかも』10月23日(金)全国公開!

昨夜は殺れたかも

ハロウィンの夜に運命的な出会いを果たした光弘と咲奈。それぞれ平凡な会社員のふりをしたものの、実は光弘の正体はヤクザで、咲奈の正体は若くして起業した敏腕社長だった。やがて結婚した2人は互いに素性を明かさないまま、幸せな夫婦生活を送っていた。しかし、それぞれが浮気をしていると勘違いしたことから、互いの殺害計画を企てるようになっていく。

原作:藤石波矢・辻堂ゆめ『昨夜は殺れたかも』(講談社タイガ)
監督:松木 創
脚本:ブラジリィー・アン・山田
出演:吉野北人 鈴木愛理
工藤阿須加 王林 佐津川愛美 ISSEI 田中美久 オラキオ 河本準一(次長課長) 菅田俊/本宮泰風
企画・制作:共同テレビジョン
企画・プロデュース :栗原美和子
配 給: ポニーキャニオン
公開日: 2026 年 10 月 23 日(金)
公式 HP:https://sakuyare-movie.com/
公式 SNS:【X・Instagram・TikTok】@sakuyare_movie
©2026 映画『昨夜は殺れたかも』製作委員会

ヘアメイク/福間友香/Tomoka Fukuma(VANITÉS) スタイリスト/森宗大輔(Daisuke Morimune)
取材・文/神田佳恵 撮影/笹井タカマサ 編集/大室倫子(編集部)