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AUG/2017

女優・広瀬すずが語る“表舞台に立つ人”としての覚悟――「感謝の気持ちを込めて神経を削ること」

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一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります。

まだ10代ながら多数の映画に主演し、同世代の女優の中でも抜きん出た存在感を示す女優の広瀬すずさん。その実力を一躍世に知らしめたのが、豪華四姉妹の共演で話題となった映画『海街diary』だ。メガホンを取ったのは、世界的にも高い評価を集める是枝裕和監督。そんな恩師ともいうべき是枝監督と再びタッグを組んだ映画『三度目の殺人』が2017年9月9日より公開される。

広瀬すず
広瀬すず(ひろせ・すず)
1998年6月19日生まれ。静岡県出身。『ミスセブンティーン2012』に選ばれ、その後『Seventeen (セブンティーン)』の専属モデルとして活動。2015年、ドラマ『学校のカイダン』で連続ドラマ初主演。映画『海街diary』で第39回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。16年、映画『ちはやふる -上の句-』で第40回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、映画『怒り』で助演女優賞をW受賞。今後も映画『先生!』『ラプラスの魔女』など待機作多数

トップ女優への階段を順調に駆け上がる広瀬さん。なぜ彼女はこんなに眩しく見えるのか。多忙な若きプロフェッショナルの煌めきの秘密を探った。

「もう一度この場所に帰ってくるために走り続けてきた」

広瀬さんが是枝監督と初めて出会ったのは中学3年生のとき。地元の制服に身を包んだ15歳のちょっぴり猫背気味の少女を見て、是枝監督は四女・浅野すず役に大抜擢した。それから3年の時が過ぎ、18歳(撮影当時)となった広瀬さんは再び女優として是枝監督の前に立った。

広瀬すず

「私にとって是枝監督の現場はマイホームのような場所。『海街diary』から『三度目の殺人』までの3年間、いろいろな作品に出させていただきました。どの作品も楽しかったし大好きですが、今までずっとこの場所にもう一度帰ってくるために走り続けてきたような感覚があるんです。だから久しぶりに是枝組の現場に立ったときは、何だか1つのゴールに飛びこむような不思議な気持ちでした」

『海街diary』では、事前に台本は渡されず、台詞は撮影当日に現場で直接是枝監督の口伝えで決めていった。3年ぶりの是枝組の感想を聞くと「遂に台本をいただけるようになりました」と照れ笑いする。

「是枝組の現場って、他とは全く違うと感じます。この『三度目の殺人』もベネチア国際映画祭への出品が決まっていますが、海外を舞台に戦っているまさにプロフェッショナルと呼ぶにふさわしい監督、スタッフの皆さんとのお仕事からは学ぶものがたくさんあります。映像表現は全て言語化して説明できるものではありませんが、そういったものをチームで共有しながらビジョンをぶらさずに仕事進めていく皆さんの姿を見て、改めてすごいなって感動しました」

「自分にしかできない仕事とは何か」を模索する

『三度目の殺人』は、ある殺人事件の真実をめぐる、弁護士・重盛(福山雅治)と容疑者・三隅(役所広司)による緊迫の心理サスペンス。広瀬さんは、大きな秘密を抱えた被害者の娘・咲江を演じている。そんな咲江のもとを、重盛が直接訪ねるシーン。広瀬さんは、本心の見えない咲江を表現するために、演技の中である“こだわり”を忍ばせた。

広瀬すず

「重盛さんが話している内容について、『知っていたけれど知らないふりをしていた』ふうに見せたいなと思って、重盛さんの話の途中で敢えて目をそらしてみたんです。完成したフィルムを見たら、ちょうど私が目をそらした瞬間を監督が使ってくださっていて。事前に相談もしていなかったし、アングル的にも撮りづらい位置だったはずなのに、ちゃんと私の意図を見抜いてそのカットを拾ってくださったカメラマンさんの技術にもビックリしました」

撮影は一発勝負。その中で広く全体を見渡しながら、ほんの小さな仕草まで見逃さない。そんな真のプロフェッショナルに囲まれて、広瀬さんも女優として成長してきた。何でもないことのように話した上述のエピソードも、3年前の広瀬さんならきっと考えられなかったはず。

「台本に書かれた台詞だけでなく、その行間に目を凝らし想像を広げることで、オリジナリティーを出していきたい。自分にしかできない仕事がしたいと今は思っています」

どんな仕事をしていても、個性が求められる時代だ。一人一人が自分の価値を高め、いい仕事を生み出すためには、台本に書かれていない“余白”をいかに自分流に扱うかがカギになる。

「たくさんの人の想いを背負う仕事だからこそ、自分に自信を持たないと失礼だと思う」

仕事に取り組む際のこだわりと聞いてみると、「感謝の気持ちを込めて神経を削ること」と広瀬さん。

広瀬すず

「1人でできる仕事ってほとんど無いですよね。私はこうして表舞台に立つ仕事をしていますが、そのためにカメラマンさんだったり、照明さんだったり、いろいろな方が地道な作業でその舞台をつくってくれている。例えば、立ち位置に関しても、『あと3cm横にズレてください』ってカメラマンさんから指示されることがありますが、私にはその3cmの違いは分かりません。でも1mm単位の違いに、どこまで一緒に神経を削っていけるか。モノづくりに携わる人たちのこだわりというのは、きっとそういうことを言うんだろうなという気がします」

そんなスタッフ陣の徹底したこだわりに触発され、広瀬さんも表に立つ者の責任を再確認するようになった。

「カメラの前に立つ度に感じるのは、感謝の気持ちと大きなプレッシャーです。スタッフの皆さんが今まで長い時間をかけて準備をしたものが、最後は私で決まってしまうんだなって……。私の演技次第でキャラクターの印象も台詞の意味も全部変わってしまう。責任が大き過ぎて、精神的にきつくなることもあります(笑)」

全てを放り投げたくなるような重圧と恐怖。それでも、広瀬さんが仕事から逃げることはない。

広瀬すず

「でも、自分が選んだ“私の仕事”なんだからやるしかないし、何もかも放り出して逃げ出す権利なんてないっていつも思い直します。私に期待してくれる人がいて、重要な仕事を任せてもらっているんだから、自信を持たないと選んでくださった方にも失礼だと思う。たくさんの人の想いを背負ってカメラの前に立たせてもらっているからには、自分にできることを精一杯やるしかない! それが、私が仕事をする上でのポリシーです」

広瀬さんの仕事論はシンプルだけに、どの業種や職種にも通じる本質がある。「周囲の人の仕事」に感謝の気持ちを持つことができると、自分の責任感も増し、パフォーマンスも変わってくるはずだ。

仕事して、美味しいものを食べて、皆で笑って。働くことで得られる「幸せの循環」

19歳、本来ならまだ学生として思う存分青春を満喫してもいい年頃。それでも、広瀬さんは「女優」という仕事を選び、そこで生きていくことを決めた。

「私にとって『仕事』とは『辞めたら生きていけないもの』。甘いことを言ってたら、自分の場所なんて簡単に誰かに取られてしまう。その覚悟みたいなものは、高校を卒業して、ようやく固まってきたような気がします」

エネルギー源は、大好きな人との食事。

「一生懸命仕事をして、それでお給料をいただいて、美味しいものを食べて、友達や家族といろいろな話をして笑い合って、そしたらまた明日からお仕事頑張ろうと思えるんです。これって、最高に幸せな循環じゃないですか?」

広瀬すず

そう屈託なく笑う姿は、女優という肩書きよりも、“ごく普通の女の子”というフレーズの方がよく似合う。けれど、その肩には数えきれないほどたくさんの人の期待がかかっている。自分が輝いて見えるのは、支えてくれるたくさんの人がいるから。そのことをよく知っているから、広瀬さんは一層眩しく見えるだろう。あらゆるプレッシャーをエネルギーに変えて、広瀬すずが放つ光はさらに輝きを増していく。

取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太


映画『三度目の殺人』2017年9月9日(土)全国ロードショー
監督:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功
公式サイト:http://gaga.ne.jp/sandome/

連載『プロフェッショナルのTheory』の過去記事一覧はこちら

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