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MAR/2018

疲れた心を癒しに劇場へ。青山の夜を一人でそっと堪能する/舞台『Take Me Out 2018』

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NO残業デーは劇場で“非日常”な体験を。
ふらり~女の夕べ

プレミアムフライデーに、NO残業デー。働き方改革が進み、プライベートタイムは増えたけど、一体その時間に何をする……? 会社を追われ、行き場をなくし街を彷徨うふらり~女たちへ、演劇コンシェルジュ横川良明がいま旬の演目をご紹介します。奥深き、演劇の世界に一歩足を踏み入れてみませんか?

横川良明
演劇ライター・演劇コンシェルジュ 横川良明
1983年生まれ。関西大学社会学部卒業。ダメ営業マンを経て、2011年、フリーライターに転身。取材対象は上場企業の会長からごく普通の会社員、小劇場の俳優にYouTuberまで多種多彩。年間観劇数はおよそ120本。『ゲキオシ!』編集長


お花見に歓送迎会。春は何かとイベントの多い季節です。もちろん気の合う友人とお酒を呑んで賑わうのも楽しいですが、あまりに重なるとふっと人疲れを感じることも。ひとりで過ごす贅沢な時間が恋しくなるのも、何かと慌ただしい春の特徴です。

そんなあなたにぴったりなのが、ひとり観劇。今回、オススメするのは、舞台『Take Me Out 2018』です。周りの目を気にせず、作品世界に没入していると、何だか現実から遠く離れた世界に行った気分に。ちょっと疲れ気味の心のアンテナに、新しい刺激を与えてくれる効能が、演劇には含まれています。劇場という場所で、今までとは違う時間の過ごし方を発見してみませんか。

舞台『Take Me Out 2018』

舞台『Take Me Out 2018』

Point1:第51回紀伊國屋演劇賞 団体賞の対象作品に選出。演劇界が認めた傑作、再び

この『Take Me Out』はアメリカの劇作家、リチャード・グリーンバーグの代表作。03年にブロードウェイで最も権威ある演劇賞として知られるトニー賞で作品賞を受賞した、折り紙付きの作品です。日本での初演は2016年12月。私もこの初演を拝見しましたが、骨太の人間ドラマを非常にシックに仕立て上げ、数日間は作品世界から抜け出せないような、不思議な夢心地で過ごしたことを覚えています。

企画・製作のシーエイティプロデュースは、『Take Me Out』を含む様々な作品の成果が認められ、第51回紀伊國屋演劇賞 団体賞を受賞。この紀伊國屋演劇賞も、日本の演劇界で伝統と名誉を誇る賞のひとつ。つまり、ブロードウェイも日本も認めた上質な演劇作品がこの『Take Me Out』なのです。

それをDDD 青山クロスシアターという約190席の小空間で再演。しかも約1ヶ月のロングラン上演ですから、忙しい春の季節でも足を運ぶチャンスは多数。場所柄、上演の前後にオシャレなカフェやダイニングを覗くなど、プラスアルファの愉しみ方ができるのも○。この春こそは観劇デビューをしたいという方にもうってつけの1本です。

Point2:人気メジャーリーガーがゲイであることを告白。動揺と反発が渦巻く中、チームの行く末は……

作品の舞台となるのは、架空の野球チーム・エンパイアーズ。メジャーリーグで活躍するそのチームに、とある出来事から亀裂が走ります。それが、チームきってのスター選手・ダレンの“カミングアウト”でした。自らが同性愛者であることを告白した彼に、アメリカ全土が激震。差別や中傷の言葉が飛び交う中、チームに波乱と軋轢が巻き起こる……というのが大枠のストーリー。

しかし、いわゆるLGBTものにとどまらないのが、この作品の面白さ。セクシャリティを引き金に、人種や宗教観、社会階級など、人間の最深部に根づく“差別意識”が炙り出されていきます。それをロッカールームという特殊な空間で演じるのがポイントです。

(前回公演より 撮影:岡千里)
(前回公演より 撮影:岡千里)

ロッカールームは人が服を脱ぎ、意図せずとも裸を曝け出さなければいけない場所。一方で他者の視線を意識し、平時以上にガードを固くする場所でもあります。ロッカールームという場所そのものが、むき出しになった本音の象徴にも見えるし、規則正しく並べられた更衣室が、複雑に絡んだ人物相関図にも見える、という極めて暗示的な構造。そんな演劇的な趣向を孕んでいるから、この作品はなお味わい深く、観る人の心に静かな波紋を起こすのです。

狭いロッカールームで男たちは何度も衝突を繰り返し、互いに傷つけ合いながら、アイデンティティとは何かを模索していきます。その結末にあるものとは……? 深遠な人間ドラマをたっぷりと堪能してください。

Point3:演劇界の将来を担う気鋭の演出家と、11人の俳優による予測不可のケミストリー

そんな本作の演出を手がけるのは、俊英・藤田俊太郎。演劇に詳しくない人でも、蜷川幸雄という名前を聞いたことがある人は多いでしょう。日本の演劇界を代表するビッグネームのもとで、10年余り演出助手を務め、ニナガワイズムの継承者として活躍が期待されているのが、この藤田俊太郎です。個人的には初演のシャワーシーンが特筆すべき美しさで、汗の臭いまで嗅ぎ取れそうな生々しい人間ドラマに、ある種の幻想性を振りまいた名場面でした。この再演でまたどんな名場面を生み出すのか、期待して見守りたいと思います。

(前回公演より 撮影:岡千里)
(前回公演より 撮影:岡千里)

11人の俳優陣も注目株ぞろい。今回からの登板となるのが、近年は大河ドラマ『真田丸』など映像での活躍も目覚ましい劇団柿喰う客の玉置玲央、『50Shades〜クリスチャン・グレイの歪んだ性癖〜』で舞台初主演を果たし、舞台俳優として躍進著しい浜中文一、そしてMANKAI STAGE『A3!』で皇天馬役に抜擢されたD-BOYSの陳内将の3人です。初演からは、テレビでもおなじみの栗原類が続投。その他、味方良介、Spi、章平が初演で実に印象的な演技を披露してくれていたので、前作以上の好演を期待したいところです。華も腕もある男11人。心を揺さぶる俳優との出会いが、あなたを待っています。

<公演詳細>

■あらすじ
男たちの魂と身体が燃え滾る、「ロッカールーム」。彼らにとってそこは、すべてをさらけ出せる楽園だった。ひとりのスター選手による、あの告白までは-。

黒人の母と白人の父を持つメジャーリーグのスター選手、ダレン・レミングは、敵チームにいる親友デイビー・バトルの言葉に感化され、ある日突然「ゲイ」であることを告白。それは、150 年に及ぶメジャーリーグの歴史を塗り替えるスキャンダルであった。しかしダレンが所属するエンパイアーズ内には軋轢が生じ、次第にチームは負けが込んでいく……。

そんなときに現れたのが、天才的だがどこか影のある投手、シェーン・マンギット。圧倒的な強さを誇る彼の魔球は、暗雲立ち込めるエンパイアーズに希望の光をもたらしたのだが-。

■作
リチャード・グリーンバーグ

■翻訳
小川絵梨子

■演出
藤田俊太郎

■出演
玉置玲央、栗原 類、浜中文一、味方良介、小柳 心、陳内 将、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘

■日程
2018年3月30日(金)~5月1日(火)

■会場

DDD 青山クロスシアター ※各線「渋谷」駅/東京「表参道」駅より徒歩8分

>>公式ホームページへ

連載『ふらり~女の夕べ』の過去記事一覧はこちら

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