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SEP/2020

広がる“文系フリーランス”の可能性。営業、人事・経理で独立した女性2人に聞く働き方のメリット・デメリット

「独立」と聞くと、どんな職業の人を思い浮かべるだろうか? 建築士やエンジニアなどの理系専門職や、デザイナー、弁護士、公認会計士など手に職のある人のみが目指すステージというイメージを抱くかもしれない。

実は最近、経理・営業・人事などの文系職種でもフリーランスという道を選ぶ女性が増えている。フリーランスとして働くのは、専門職と呼ばれる人たちだけの特別な選択肢ではなくなりつつあるのだ。

そこで今回は、現在フリーランスとして活躍する2名の女性をクローズアップ。なぜフリーランスという道を選んだのか、そしてフリーランスとして働くメリット・デメリットとは何なのか、話を聞いた。

大切なのは資格よりも「自分は何ができるのか」を言えること

フリーランスとして複数のクライアントの会計業務に携わっている武嶋雅美さん。コンサルティングファームでの勤務を経て大手銀行に入社。米国会計基準の決算業務を始め、新卒以降一貫して会計業務を担当していたという。

武嶋さん

銀行を辞めたのは約2年前。サラリーマンとして生きていくのに限界を感じたのがきっかけです。必要性は頭では理解しつつも、会社の体質やルールに合わせる続ける働き方に対して、総合職女性の働きにくさを感じていました

武嶋さん

子どもが2人いるのですが、残業や異動・転勤など、会社が総合職に求めるものに応えられないな、と思ったんです。2度の妊娠・出産・子育てを経験する中で、ずっと負い目のようなものを感じており、将来にわたって解消するとも思えなかったので、このまま働き続けることは無理だな、と退職を決心しました。

当時36歳。後先考えずに決めた退職だったが、「焦らずに、自分のわがままを聞いてくれる会社を探そう」と転職活動をした結果、税理士法人に入社することに。

武嶋さん

外に出て環境を変えてみると、『意外と私、できることたくさんあるじゃん』って思えたんです。銀行では営業を経験する人が大多数。そんな中で中途採用かつ営業経験なく会計の仕事をしていたこともあり、マイノリティーな存在として扱われていて自信がありませんでした。

逆に税理士法人では、そのニッチさを評価してもらえました。そのおかげで自分のスキルに自信がついて、さらに欲が出てきたんです。

時間や場所の制約がない中で自由に働きたい、そして仕事の幅を広げたいという思いから、独立を決意した。

武嶋雅美さん
武嶋さん

フリーランスになったことで、子育てや家族との時間をつくれるようになったのはもちろんですが、将来の自分のために勉強をする時間を確保できるようになりました。将来的にはファイナンス業務にも携わりたいと思っているので、そのための勉強を最近始めたところです。

仕事の幅を広げるのも狭めるのも、自分次第。フリーランスでは、会社が用意したキャリアコースに乗っかることはできないが、武嶋さんはそれが自身の性に合っていたと話す。

武嶋さん

社内のキャリアアップには興味がありませんでした。偉くなるよりも、自分のスキルアップがしたかった。ただでさえ育児で残業もままならない中、マネジメントや部下の育成に時間を費やすくらいだったら、自分のために使いたかったんです。

逆に、育成してもらえる立場にある、というのは会社員ならではのメリットだ。「会社員をやっていたからこそ今の自分がある」と武嶋さんは語る。

武嶋さん

フリーランスだと、最初から仕事ができて当たり前ですし、クライアントは『私たちにはあなたを育てる義務はありません』というスタンスです。

一人のプロフェッショナルとして見てもらえる、という点ではメリットですが、やはりプロとして働くには知識と経験が必要ですよね。育てようとしてくれる環境も資源もあるというのは会社で働く大きなメリット。会社で学んだことや、当時の人脈が、全て今の自分に生きています。

独立して約半年。自分で考え、行動し、自身の価値を高めていける今の働き方が楽しいと感じているという。

武嶋さん

待っていても、誰かが仕事を与えてくれるわけではありません。自分で考えて行動して、さらにそのフィードバックを次に生かしていくことが求められます。

それが楽しいところではありますが、逆にいえば、自分で考えて動ける人じゃないとフリーランスには向いていないのかもしれませんね。

米国公認会計士の資格を持ち働いている武嶋さん。やはり文系でも特定の資格を持っていることが重要なのだろうか、と思いきや、それよりも大事なのは「自分のスキルを言葉にできること」だという。

武嶋さん

自分は何ができるのか、を言えることが大事です。どんな経験も必ず役に立つはずですが、一体どんな経験をしてきて、その中で自分が何をできるようになったのか、今後何をしていきたいのか。それを言葉にできることが大切です。

そのためにも、転職や独立のタイミングでなくても、自身のスキルを棚卸しする機会を持つことをオススメします。

派遣社員からフリーランスの道へ「手を挙げることが次のオーダーにつながる」

独立して6年目になる伊倉妙子さんは、フリーランスとして幅広い企業の営業・人事関係の業務に携わっている。

新卒以降、求人広告の媒体営業や、会員制サロンの個人営業など、バリバリとフロント営業の経験を積んできた伊倉さん。父親の介護をきっかけに退職し、働き方を見直す中で、技術者派遣会社で勤務したことがターニングポイントとなった。

伊倉さん

派遣社員としての勤務でしたが、そこではたくさんのことを任せてくれました。採用部門のオペレーション担当をしておりましたが、母集団形成から面接、承諾、入社手続きに至るまでの一連の採用業務も経験することができました。

派遣期間終了とともに、契約社員として働き続けるのはどうか、という打診を受けたが、契約社員の評価体系に納得がいかず、一度は断った伊倉さん。しかしその後、業務委託という形での勤務継続を提案されたことにより、フリーランスとして仕事を受けていくことを決意した。

伊倉さん

手掛けているお仕事を続けつつ、別のお仕事にもチャレンジできるというのは、まさにフリーランスの魅力。転職せずにいろいろな方と出会い、いろいろなお仕事ができるのは面白いですね。

現在はメーカーの営業支援や、医療サービスの中途採用支援、IT企業の新卒採用支援など、多岐にわたる業界の営業・人事業務に携わっている。一見「営業」と「人事」は全く異なる職種のように思えるが、伊倉さんはそう捉えてはいない。

伊倉さん

営業支援も採用業務も、根本的には近い仕事だと思っています。私がずっとやっていきたいと思っているのは、クライアントの課題解決です。

社会や業界の流れによって重きを置くフィールドは変わっていくかもしれませんが、何をやるにしても、クライアントが困っていることに対して的確にお応えしたいですね。

伊倉妙子さん

独立してからの仕事について「エキサイティングな日々を送っています」とその面白さを語る伊倉さんだが、もちろんフリーランスとして働くことの厳しさも感じている。

伊倉さん

しんどいな、と思うのは、自分自身のスキルアップにそれなりのお金や時間が掛かること。会社員であれば、定期的に研修を受ける機会や資格試験を受ける際の金銭的な補助がありますが、フリーランスはそういった資源を自ら用意しなくてはいけません。

先日キャリアコンサルタントの資格を取得しましたが、もちろん自費でした。自分で勉強するにはお金も時間も掛かりますから、悩ましいところですね。

育成される機会を享受できるのは会社員ならではの良さ。それは武嶋さんも伊倉さんも共通認識のようだ。一方、伊倉さんは自分自身の育成機会のみならず、クライアント企業の社員との関わり合いについても言及する。

伊倉さん

業務委託だと、クライアント企業の社員さんに対する関わりが薄くなってしまうのは事実です。

例えば、若手の社員さんに対して『こう指導してあげたらもっと良くなるのに』『こう育ててあげたらいいのに』と思ってアドバイスしたくても、なかなか難しい。そこはやはり、同じ社員としての立場があってこそできることかな、と思います。

「自分自身で仕事を取りに行く自発的なタイプの人がフリーランスに向いている」と語る伊倉さん。逆に向いていない人は、と聞くと「他責思考の人」と返ってきた。どうやらこれには、文系フリーランスならではの働き方が関係しているようだ。

伊倉さん

人事や営業の仕事だと、業務の切り出しがとても難しいです。エンジニアやデザイナーは、仕様書など明確な指示の元で働くのが一般的だと思いますが、採用や営業の場合はどこまでが私の仕事でどこからがクライアントさんにお任せしていいものか、どうしても曖昧になってしまいます。

伊倉さん

いつも手探りで仕事をしていますが、逆にいえばそこがチャンス。これだったら私ができます、と手をあげることで次のオーダーにつながります。そこで『これは私の仕事じゃない』とつっぱねてしまったら、いい仕事はできません。そういう意味で、全てに前向きに、そして主体的に動ける人がフリーランスに向いているのではないでしょうか。

取材・文/太田冴 撮影/赤松洋太、吉永和久 企画・編集/天野夏海 

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