13 APR/2022

今の収入で二人目は無理? 子育て費用の不安をFPに相談「年収1000万円より年収700万円世帯の方が豊かに暮らせる」説

今の収入で二人目は無理?

第一子の出産から数年、育児と仕事の両立が軌道に乗ってきた頃。ふと頭をよぎるのは「二人目」のこと。

子どもが一人の今は、家計はそこまで苦しくない。でも、もう一人増えたらどうだろう……と、お金に対する漠然とした不安を抱えている人も多いのでは?

そこで今回、そんな不安をファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに相談。そもそも都内で子どもを育てるために掛かる費用っていくら? 利用できる手当や支援とは? など、「二人目」出産の後押しとなる情報を教えてもらいました。

相談者Aさんの収入状況

【年齢】
Aさん(妻):32歳
夫:35歳

【収入】
世帯年収700万円

※内訳
Aさん(妻):年収250万円(正社員/時短勤務)
夫:年収450万円(正社員/フルタイム)

【第一子の年齢】3歳
【居住地】東京都内

高山一恵さん

【回答者】
高山一恵さん

CFP(日本FP協会認定)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)/DCプランナー1級所持。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画し、10年間取締役を務め、退任。 2015年に株式会社Money&Youの取締役就任。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。また、『Money&You TV』や「マネラジ。」などでも情報を発信している。「女性」にお金の知識を伝えるべく精力的に活動を展開している。 「Money&You

子育て費用の大半は教育費。目安は、子ども二人で月7.6万円

近年ニュースなどで耳にする機会も増えたかと思いますが、少子化対策の一環として、国や自治体が子どもを産むこと・育てることへのサポートに力を入れ始めています。

例えば、子どもの医療費の助成範囲はどんどん拡大し、現在では全国の市区町村のうち半数以上が中学3年生まで、4割近くが高校3年生まで通院費の助成を実施。

また、2010年には「高等学校等就学支援金制度」が施行され、高校の学費が実質無料に(いわゆる高校無償化)。記憶に新しいものでいうと、2019年10月からは「幼児教育・保育の無償化」によって、幼稚園・保育所・認定こども園等の3~5歳児クラスの利用料が不要になりました。

とはいえ、育児における出費の大半が教育費という状況に変わりはありません。ここで、0歳~22歳の間に掛かる教育費を見てみましょう。


【小学校~大学まですべて公立校に通った場合】

⇒一人あたり約1000万円
(年間約45万円/1カ月あたり約3.8万円)

【小学校~大学まですべて私立校に通った場合】

⇒一人あたり約2500万円
(年間約113万円/1カ月あたり約9.4万円)

※学費、教材費、給食費、習い事に掛かる費用の合計金額の目安
 

年間・1カ月あたりの金額は単純に総額を22(年)で割ったもので、子供の年齢によりお金がかかる度合いは違いますのであくまでも目安ではありますが、進学先による費用の違いが分かってきますね。

さらに、近年では語学やプログラミングといった習い事に力を入れる家庭が増えているので、教育費は膨らみ続けている印象です。

仮に第二子を授かった場合、当然ですが教育費も倍。あくまでも目安にはなりますが、公立コースで月あたり約7.6万円、私立コースで月あたり約18.8万円を無理なく支出できるかどうかが「2人目は可能かどうか」の判断基準になるわけです。 

今の収入で二人目は無理?

今回のモデル世帯は夫婦の年収が合計700万円なので、月あたりの手取りは45万円ほどでしょう。住居費に月10万円程度掛かるとして、手元に残るのは約35万円です。これだけあれば、公立コースなら「子どもが二人いても、どうにかなるかも」と思えてきませんか?

しかし、私立への進学を視野に入れる場合や、緊急時の備えとして、お金に余裕があるに越したことはありません。ここからは、お金に対する不安をなくして第二子出産に踏み切るために意識したいポイントをお教えします。

都内で子どもを二人育てるために、見つめ直したい三つのポイント

①どこに住む?
→千代田区が実は狙い目。自治体ごとの支援の違いを把握して、居住地を選ぼう

東京都は全国の中でも子育て支援に積極的ですが、都内でも区によって施行されている制度が異なります。夫婦の価値観や教育方針に合う支援が手厚い区に移り住むことで、金銭的な負担を抑えられるでしょう。

私がおすすめする区の一つは、千代田区。「子育て」のイメージを持たない方も多いかもしれませんが、その印象を払拭するためか、千代田区の子育て支援は年々充実していっているんですよ。

たとえば、医療費。東京都の医療費助成制度では0~15歳の子どもの医療費が無料ですが、千代田区ではそれに加え、「高校生等医療費助成制度」を導入。高校生の医療費も無料です。また、児童手当が終了する高校生の子どもに向けて「次世代育成手当」を月額5,000円支給しています。

他にも、妊娠発覚後に受け取れる「誕生準備手当」(4万5,000円)を実施。区外からの転入を支援する「次世代育成住宅助成」もあるなど、子育て世代を呼び込む策も豊富です。

今の収入で二人目は無理?

千代田区以外にも、独自の子育て支援を行なっている区は多数あります。一部をご紹介しましょう。

【渋谷区】
・ハッピーマザー出産助成金
子ども1人の出産につき限度額10万円を支給

【練馬区】
・第3子誕生祝金
第三子以降、子ども1人につき10万円

【台東区】
・にぎやか家庭応援プラン
第3子以降の子どもの出生・小学校入学・中学校入学時にこども商品券・図書カード等を贈呈

【江戸川区】
・乳児養育手当
0歳児に対して月額1万3,000円を至急(最大12回)

 

こういった情報は、自治体のホームページやSNSアカウント、区報などで発信されています。積極的に情報を集めてくださいね。

②子どもの教育、どうする?
→進学先で差が出る費用。パートナーとの教育方針のすり合わせは必須

冒頭でお話した通り、今回のモデル世帯である「年収700万円」の場合、子どもが二人いても公立校への進学に限定すれば、教育費に対する不安はさほど必要ありません。

しかし、私立校に進学するとなるとどうでしょうか?

私立中学に通う家庭のうち、半数が世帯年収1000万円以上、800~1000万円家庭が約20%です。

つまり、Aさんのような年収700万円台以下の家庭で子どもが私立に進学するケースは3割前後。子どもの人数が二人となると、その割合はさらに減るでしょう。

今の収入で二人目は無理?

もちろん、教育費以外の家計を見直せば、年収700万円台でも子ども二人を私立に進学させることは可能です。

Aさん世帯よりも所得の低い都内在住の家庭であれば、「受験生チャレンジ支援貸付事業」の対象となり、学習塾等の受講料の補助を受けられるケースもあります。祖父母世代から支援を受けられそうならば、教育資金贈与の利用も検討してみてもいいですね。

しかし、教育費を優先することで貯蓄に回せる金額が減ったり、節約が必要になる場合もあります。だからこそ、親として「子どもに掛ける費用として、何を重視するか」を考えておく必要があるのです。

公立校には公立校の、私立校には私立校の良さがあります。価値観は人それぞれです。一番に尊重すべきは子ども自身ですが、まずはパートナー同士の教育方針を確認しておくことで、子育て費用の試算がしやすくなりますよ。

③資産はどう増やす?
→子どもに合わせた選択がとれるように、マネーリテラシーを高めよう

今年から、高等学校の家庭科に「資産形成」の内容が加わりました。「お金の知識を身につけて、自分でライフデザインをしてね」という国からのメッセージなのかもしれませんね。

普通預金の金利がわずか0.001%の今、「銀行に預けていてもお金が増えない」のは事実。子どもが成長していく過程で「こんなことがしたい」「あの学校に行きたい」という希望が出てきたとき、お金を理由に断念させないためにも、まずは親世代である大人がマネーリテラシーを高めていく必要があります。

キーワードにしていただきたいのは、「投資」と「節税」です。

今の収入で二人目は無理?

投資はハードルが高いと感じる方もいるかもしれませんが、今は手軽に始められるものも豊富です。まずはつみたてNISAなど、比較的分かりやすいものから始めてみてはどうでしょうか。繰り返しになりますが、預金でお金は増えません。ぜひ一歩踏み出してみてください。

節税対策も「よく分からない」と思い込んでしまいがちですが、少し調べてみるとさまざまな方法があることが分かるはず。生命保険控除やふるさと納税、セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)を積極的に利用していきましょう。

年収700万円前後の家庭は、実は「おいしい」? 年収1000万円世帯より豊かに暮らせる可能性も 

今回は、世帯年収700万円のAさんの家庭を例に考えてきました。

結論、年収700万円前後の世帯であれば、子どもが二人いても育てていくことは可能です。どこにお金を掛けるのか、どうやってお金を増やしていくのか。よく考えれば、決して不安になるような収入ではありません。

最後に、勇気が出るお話を一つ。実は年収700~800万円くらいの家庭の方が、年収1000万円の家庭よりも豊かに暮らせる場合もあるのです。

今の収入で二人目は無理?

なぜなら、日本は累進課税制度なので、稼げば稼ぐほど税金額が高くなる。年収1000万円以上、しかも片働きとなると、多額の税金を納める必要があるにもかかわらず、所得制限に引っかかって各種手当は支給されない……という事態になることも。

そう考えると、夫婦と子どもが二人で十分生活できて、かつさまざまな手当を得られる年収700万円前後の世帯は、意外とおトクな層とも言えます。

最近では、物価高騰の話題を目にすることが増えたかと思います。暗いニュースは印象に残りやすいですが、目先の情報だけで将来を決めてしまうのは避けたいところ。「もう一人育てられるかな」という不安も、懸念点を整理して情報収集していけば、解決方法が見つかるはずです。

お金に関する疑問であれば、時にはプロに相談することも視野に入れながら解決していってくださいね。

取材・文/夏野かおる 編集/秋元祐香里(編集部)