yutori片石貴展「自分が楽しくなかったら意味がない」上場しても“品よくぶっ飛ぶ”を続けられる理由
過去の成功法則が、明日にはもう通用しないかもしれない。そんな変化の激しい時代、未来がどうなるかを待つよりも、自分から面白そうな方へ踏み出せる人の方が強いのかもしれない。
今回話を聞いたのは、30を超えるD2Cブランドを展開し、2023年にアパレル業界で最年少上場を果たしたyutori代表・片石貴展さん。
次々と新しい挑戦を仕掛ける彼は、変化の激しい時代をどう捉え、どんな考え方で未来を切り拓いているのか。片石さんの仕事観から、正解のない時代を前に進むためのヒントを探る。
※本記事は2026年11月発売予定の雑誌『type就活』から先行公開しています。
yutori 代表取締役社長 片石貴展さん
1993年生まれ。2017年に開設したInstagramアカウント『古着女子』が話題となり、18年にyutori創業。23年東証グロース市場上場。最新著書『自分の言葉で話せるようになりましょう。』(ダイヤモンド社)yutori採用サイト
自分が楽しくなかったら意味がない
上場しても「好き」を追求し続ける
yutoriは、『9090』『PAMM』など30を超えるD2Cアパレルブランドを展開し、23年には上場を果たしました。
でも、上場企業になったからといって、大人しく収まるつもりはありません。
僕が大切にしているのは「いかに資本主義のルールを守りながら、自分の『好き』を追求するか」。
会社がどんなに成長しても 、自分が楽しくなかったら意味がありません。経済のルールを知らずに暴れるんじゃなくて、理解した上で、徹底的に遊ぶ。
その“品の良さ”を大事にしながら、面白いことを仕掛け続けたいと思っています。
今年、会社のビジョンも「若者帝国」から「偏愛帝国」にアップデートしました。
僕は、若者の中には「怒り」が渦巻いていて、そこに流行の原点があると考えています。怒りは瞬発的で、若者が成り上がっていく過程では大きな力になる。
でも自分も30代になり、その熱源をよりサステナブルなかたちで表現するなら、「怒り」ではなく「愛」を中心に置くべきだと考えました。
若者らしい初期衝動を捨てるのではなく、大人になっても別のかたちで持ち続ける。そのアップデートが「偏愛帝国」です。
事業も、以前はZ世代向けのストリートブランドが中心でしたが、最近では『Her lip to』や『GDC』といった20代〜40代を対象としたブランドも加わり、会社としての幅の広がりを実感しています。
将来的には、時代が変化しても色褪せないブランドを育てたいですね。例えばルイ・ヴィトンのように、何十年も世代を超えて愛され続けるブランドをyutoriから生み出していきたいです。
稚拙で不器用でもいい
「体温」のある言葉に価値がある
ファッションは流行の変化が激しい世界ですが、僕らは未来をゼロから予測しているわけではありません。
例えば時代のトレンドは「喧嘩(力・暴力)」と「サブカル(知性・知恵)」の行き来を繰り返していると考えています。
2000年代前半には格闘技やナイトカルチャーが隆盛しましたが、震災を機に、これらのカルチャーは不謹慎とされ、代わりにサブカル的価値観が台頭しました。そしてコロナ禍を境に同じような変化も起きています。
最近は装飾的なシャツがファッショントレンドですが、それはサブカル的カルチャーに時代が進みつつあることの現れでしょう。
そうやって時代ごとのトレンドを分析しながら、「今は過去のどのパターンに近いのか」「時代の振り子はどちらに動いているのか」を考えています。
こうしたトレンド予測は、歳を重ねて多くの時代を肌で感じるほど詳細にできるようになるものです。だから僕自身は、今は若者代表のように言われていますけど、年齢が上がっていくことに希望しかないですね。
新しいブランドや事業への挑戦も、「怖いけど飛び込む」という感覚ではやっていません。怖いのは、単純に未知だから。
成功した時の利益も、失敗した場合の損失も、僕らは細かく計算します。一見ぶっ飛んだ挑戦に見えても、裏側では未知を極限まで減らしているのです。
ただ、そこまで計算しても思い通りにならないのがブランドづくりの面白いところ。
クリエーティブには情熱がいる。でも、事業には冷静さもいる。この矛盾する二つを社内でぶつけながら、本音で話して乗り越えていく。僕は、その衝突自体がクリエーティブに必要なプロセスだと思っています。
ちなみに僕自身は最近、音楽活動でメジャーデビューしました。上場企業の社長としてはまあまあ意味が分からないですよね(笑)。でも、面白いからやる。
僕が丸く収まっていたら、社員だって平凡なアイデアしか言わなくなってしまうかもしれない。だったら僕自身が、ちゃんと遊んでいた方がいい。だからこれからも「品よくぶっ飛び続けたい」と思っています。
『ゆとりくん』の音楽活動が本格化し、26年夏に大手レーベルからメジャーデビュー発表。内面の感情を自らの作詞で歌い上げる
そして、皆さんに伝えたいのは、「自分の言葉で話そう」ということです。
AIを使えば論理的で、それらしい言葉はいくらでも手に入れられるようになりました。でもよく分からないまま自分の言葉として使ってしまうのは、ちょっと危ないと思っています。
レポートや志望動機をコピペするように、自分の生き方もコピペして、それで人生を攻略した気になれるかもしれません。でも、人生ってそんなものじゃないでしょう。
どんなに稚拙で不器用でもいい。自分の中から出てきた「体温のある言葉」は必ず人に伝わります。
だからこそ、自分が何を好きなのか。何にムカつくのか。何に違和感があるのか。なぜそれを選ぶのか。きれいに説明できなくても、自分の言葉にする。その「体温」は、これからますます大事になると思います。
書籍情報『自分の言葉で話せるようになりましょう。』(ダイヤモンド社)発売中
借り物の言葉で話している人は自分の人生を生きていない。
アパレル業界で史上最年少&最短上場を果たした起業家「ゆとりくん」による、ありのままの自分で人生を変える秘法が書かれた自己啓発書。
人望を集める人にも、センスのいい人にも、運のいい人にも、すべてに通じるのが、自分の言葉で話すということだ!(ダイヤモンド社HPより)
取材・文/一本麻衣 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)


