転職して初めて知った事務職の現実――残業少ない、安定して長く働ける…それって本当?
結婚・出産等のライフイベントを目前に控えたとき、自分のキャリアについて考え直す女性は多いもの。「安定して長く働きたい」「働き方を見直したい」という気持ちで、事務系職種へのキャリアチェンジを希望する女性は少なくありません。
ですが、一般的に「事務職」と呼ばれる仕事については、誤解されていることがよくあります。そこで今回は、自分に合う仕事かどうか見極められるように、未経験で事務職に転職することについて、転職経験者の体験談も交えながら解説します。
※こちらの記事は『type女性の転職エージェント』より転載しております
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事務職の仕事内容を把握しよう
事務職は、従事する部署や内容によっていくつかの種類に分かれます。ここでは転職市場でよく目にする4種類の事務職について見ていきましょう。
一般事務
決まった部署の事務処理というよりも、会社を運営する中で発生する事務や庶務全般がメインになります。
例:郵便物の仕分け、消耗品・備品の在庫管理と発注、書類作成・整理、ファイリング、電話・来客・メール応対、会議資料議事録 請求書発行
営業事務
営業部の中で発生する事務業務がメイン。よって営業担当者のサポート、取引先のサポートが中心になります。
社員の仕事がスムーズに運ぶようにサポートを行うお仕事です。
例:見積もり書類の作成、商品の受発注、受発注伝票や請求書の発行、電話・来客・メール応対、商品の納期管理、顧客管理、営業用資料作成
経理事務
経理部門について、経理や会計、財務を担当します。企業として、金銭のやりとりが正確に滞りなく行われるようにサポートする仕事です。
例:帳簿作成、伝票の整理、経費精算、出入金の管理、伝票の仕訳
また、月次や四半期の決算等大きな金額を扱う際には、簿記など専門スキルが必要です。
総務事務
会社を運営するにあたり必要な庶務全てを管理するお仕事です。
書類作成業務が日常的に発生するため、エクセルやビジネスメール等の基本的なPCスキルは必要となります。
例:自社社員のデスクやPCの用意、社内備品の発注、建物の管理、社内イベントの運営など
事務職の転職市場:事務職の倍率はなぜ高い?
事務職への転職を考えるにあたって、事務職の求人を取り巻く転職市場のトレンド状況を把握しておきましょう。
事務職の仕事が激減? AI技術が事務職の席を奪う!
EY総合研究所によれば、AI関連産業の国内市場規模は2015年の3.7兆円から2030年に約87兆円に成長すると予想しています。
2018年度の国家予算が97兆円であることを比較すると、AI関連産業が今後どれだけ大きく成長していくかが分かりますね。高い成長性が期待されるAI技術は、すでに幅広い業界で積極的な活用が始まっています。
実際に大手金融機関3社が、AI技術の発展・活用に伴い今後大幅な業務削減を検討していると発表しました。3社合わせると今後10年間でなんと3万3000人分もの業務削減になります。
また大手保険会社も、事務作業のうち9割をAIなどで代替する旨を発表しています。「AI」というと、まだ身近では馴染みのない方も多いかもしれません。
ところが、職場で使用しているPCやソフトウェアのアップデート、業務システムの新規導入・刷新・拡張、自動化、パフォーマンスの改善、事務業務の社外へのアウトソーシングなど、企業の生産性改善や効率化に向けたシステム投資や新たな取組みがますます盛んになってきているという実感をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
さらには、クラウドソーシングの一般化、RPA(Robotic Process Automation)の研究・普及により、事務職を取り巻く環境はめまぐるしく変わってきています。
なぜAIへ代替されるのか?
従来、事務職にもっとも強く求められる要素は「素早く、正確に」こなすことですが、AIやシステムのほうが、人間の手作業よりもスピードも正確性も圧倒的に高いレベルを保つことができます。
また、事務職は会社の中で直接的には利益を生み出さない部門であり、最も人件費を削減したい職種であるというのが企業・企業経営者の本音です。その有効策として、AIをはじめとしたテクノロジーを活用することで大幅な人件費削減が叶うのです。
こういった理由から「事務職の仕事をAIへ」という代替は、他の様々な職種以上に加速度的に進み続けています。
事務職の有効求人倍率は0.47!事務職になるのは難しい
では、どれくらいの人が事務職として活躍できるのか?
それを知るために、有効求人倍率を見ていきましょう。
有効求人倍率とは「求職者一人あたり何件いくつの求人があるか」を示した経済指標です。厚生労働省が発表している職業別一般職業紹介状況データによると、全体の有効求人倍率1.43に対して、事務系は0.47。
1年前のデータでも有効求人倍率1.26に対して、事務系は0.41と低水準に留まっています。
前年と比較すると、全体的な有効求人倍率は改善しており、一人あたりの求人数は増えています。しかし事務職に限ると有効求人倍率は逆に下がっており、全体的な有効求人倍率との差が昨年よりもさらに開いています。
つまり、仕事の件数に対して事務職希望者数が多すぎる状態なのです。
【年代別】未経験で事務職への転職を成功するポイント
先ほどテクノロジーやAIの話題に触れましたが、事務職の仕事量は今後減少していくため、事務職への転職はまさに狭き門といえます。その状況で事務職への転職に成功するためには、面接で果たして何をアピールすれば良いでしょうか。年齢別に見ていきましょう。
【20代】未経験・事務職へ転職する場合のポイント
20代、特に20代前半での未経験事務職への転職の場合はポテンシャルやマインドを重視されます。
よってビジネススキルだけでなく人物面のアピールも効果的です。
【1】主体的に業務に取り組めるか
20代女性が未経験事務職へ挑戦する場合、本人のやる気やマインドも重視されます。採用する企業の立場になって考えてみると、理由は明らかです。事務経験者ではなく未経験者を採用するということは、実務スキル以外の面で他の候補者に勝る必要があるのです。
例えば営業事務なら、サポートする営業職がスムーズに気持ちよく仕事できるように自分から立ち回るなど、主体的に取り組む姿勢は不可欠となります。
面接で主体性をアピールする際、注意したいのは転職理由の伝え方です。「前職が嫌だから転職したい」「逃げたい」というマイナスな理由は、入社後に活躍するイメージがもてないためNGです。
事務職の仕事に対して積極性を示すために「実際に業務の中でサポートに徹した際、自分の適性を感じた」「やりがいがあったため挑戦したい」など前向きに伝えることがベストです。
また主体性をアピールするためには、今まで自分から発信して行った業務改善のエピソードを伝えるとさらに更に良いでしょう。「●●という工夫をして業務時間を▲●時間削減した」「今までの業務フローを見直して、効率化したことで■●円のコスト削減に繋がった」など数字で見える成果とともに伝えるとより効果的です。
【2】基礎的なPCパソコンスキルがあるか
最低限、ブラインドタッチは求められますが、20代前半であれば、パワーポイント・エクセル・ワードを業務の中で使用した経験があれば可とする企業も多くありますので、PCパソコンでの作業をメイン業務としていなくても問題ありません。
基本的にはビジネスで使用していた場合のみが経験としてみなされますが、「学生時代に使っていたから問題なく使用できる」という場合は使える機能とともにアピールしましょう。
例えば「学生時代に心理学を専攻し、アンケートやリサーチ結果を集計・分析し所属ゼミで発表してていたため、表計算やグラフの作成・ピボットテーブルが使用可能」などです。
【30代女性】未経験・事務職へ転職する場合のポイント
未経験事務職への転職に限らず、30代の転職はポテンシャルややる気だけでは選考を通過できないケースが多くあります。これまでの経験とビジネススキルのマッチングが採用されるかどうかのポイントになります。
【1】PCスキルがあるか
経験者として求められるため、一定レベル以上のスキルが必要となります。例えばエクセルなら表計算、集計表作成、VLOOKUPをはじめ関数全般の扱い、ピボットテーブルの使用までが目安とされる中級レベルです。
【2】同業界での経験
経験者としてのスキルが求められるため、事務職としては未経験だとしても、例えば営業・販売など、同じ業界での業務経験があれば、業界知識を保有しているために業務習得や順応も早いと期待でき、プラスに評価されます。
【3】マネジメント経験があるか
面接を通過させるかどうかを判断するとき、採用担当者が目安にするのは「同じ年齢層の自社社員とのスキルバランス」です。つまりこの場合、30代の自社社員と比較し、スキルに大きな差があると「年齢とスキルのバランスがとれていない」と判断されお見送りになる可能性が高まります。
30代の場合、マネジメントや後輩・新人育成の経験があるかどうかはひとつの指標になるため、経験があれば面接で伝えましょう。伝える際には「最大何名をマネジメントしていたか」「チームとしてどんな成果を出したか」について言及してください。
「未経験で事務職へ転職」の落とし穴!事務職の勘違いイメージ3点
事務職の勘違いイメージ1:
事務職未経験なら、PCパソコンの資格を取ってから転職活動したほうがいい?
残念ながら、資格を取得しても選考通過率アップには直結しません。
「MOS(マイクロオフィススペシャリスト)が必要なのでは」と考える人もいますが、企業が求めているのは資格ではなく「業務での使用経験」です。つまり、資格を持っていて、業務でパソコンを使用した経験がない人よりも、資格を持っていなくて、業務でパソコンの使用経験がある人の方が通過率は高いということ。
資格を取るために勉強し知識があることと、それを業務で活用できるかどうかは別ととらえられているためです。よって、資格取得を重視するあまり転職活動を後ろ倒しにする必要はありません。
事務職の勘違いイメージ2:
「正社員の事務職」と言えば「安定」。結婚しても長く働けそう!
「事務職」=「安定」ではありません。それはもはやひと昔前のイメージと認識して良いでしょう。むしろ事務職は、他の職種と比較して「長期的に安定して働くことが難しい職種」になりつつあると言えます。
まず説明したとおり、今までの事務職の仕事がAIやテクノロジー、社外へのアウトソーシングなどに代替され始めているため、事務職の仕事量は減り続けていきます。そのため、現時点で「正社員で事務職として雇用されること」自体のハードルが高まっています。
事務職希望者が転職マーケットに溢れている今、生き残るのは、例えば卓越した専門性を習得したり、事務部門をまとめるようなチームリーダーの能力を持っていたり、あるいは目の前の数字から売上改善や業務効率化に向けた企画提案を社内の関係部署にできるような、事務のスペシャリストに絞られるといっても過言ではないでしょう。
たとえ事務職として正社員で入社できたとしても、その先ずっと安定的に働き続けられる保証はありません。
例えば、結婚して産休育休をとこともあるでしょう。すると一度職場を離れることになりますが、その間AIへの代替が進めば、休暇明けにはそれまで従事していた仕事が既になく、同じ仕事での復帰が難しいというケースもあります。
実際、「出産のタイミングで退職することが暗黙のルールになっていて、育休産休を取得した先輩を見たことがない」、「仕事がなく育休産休取得後に復帰できない」、「復帰したら別部署への異動を言い渡された」という理由で転職せざるを得ない女性もいるのが現状です。
事務職の勘違いイメージ3:
残業が少なく、プライベートと両立していけそう!
「事務職」=「残業が少ない」ということではありません。どの職種も同様ですが、その企業によって異なります。事務職であっても残業の多い企業もあれば、少ない企業もあります。営業職であっても残業が少ない企業もたくさんあります。
残業が多いかどうかは、職種によっては決まりません。企業ごとに判断しましょう。
転職して気づいた現実
「事務職に向いてなかった……」ワタシの転職体験談
体験談1:25歳 アパレル販売職→営業事務
「ただ黙々とルーティーンワークをこなす毎日。人と話さないのがしんどい」
前職はアパレルの販売職でした。立ち仕事やシフト制が体力的にきつく、年齢的にも落ち着きたくて事務職へ転職。でも、ずーっと座って黙々とルーティーンワークをこなすことにすぐに飽きてしまいました。
思えば前職では毎日いろんなお客様を接客していたので、こんなに人と話さないことってなかったんです。今も取引先とのやりとりはありますが、営業部門から依頼された定型の用件を電話やメールで交わすだけ。
職場環境も大きく変わりました。人間関係に問題はないですが、社員の年齢層もバラバラなので前職のように店舗スタッフ同士で和気あいあいとした活気ある雰囲気でもなく。前職では顧客と仲良くなったり、お礼を言ってもらえることがやりがいでしたし、スタッフとたくさんコミュニケーションをとって店舗お店をまわしていました。
息つく暇もない毎日ではありましたが、それが突然無くなってしまって、想像以上に寂しいです。落ち着きたいと思って選んだ事務職でしたが、人と話すのが好きな私には合いませんでした。
体験談2:27歳 化粧品販売職→一般事務
「褒められるやりがいがなくなった」
事務職に転職してギャップに感じたのは「仕事は全部できて当たり前」だったこと。資料は速く正確にミスなく作って当然。全部こなして当然。だけど間違えるミスをすると怒られます。
もともと販売職で、売り上げを作ると店長や先輩から褒められる環境でした。個人の売上成績もそうですが、店舗の予算を達成できたときはスタッフ同士で盛り上がったりして忙しくも充実していました。
事務職は売上を作る立場ではないですし、考えてみれば普通のことなのでしょうが、褒められないとやりがいが感じられません。
体験談3:28歳 サービス職→一般事務
当時自分の年収を低いと思っていたので、「転職しても今より下がることはないだろう」と思っていました。
でも、内定時の提示年収が想像以上に低くてびっくり。サービス系の仕事から事務職へ転職しました。転職したては仕方ないと思いましたが、長く勤めている方から聞く話だと「年収は入社時からほぼ上がらない」とのことでした。
営業職の方は売り上げで評価されるので昇給していますが、事務職って指標もないので評価されづらいんですね。この年収では生活が厳しいので、転職を考えています。
女性のためのおすすめ職種2選
「正社員・事務職は女性が自分のペースで長く安定して働ける」など、誤ったイメージが一人歩きしてしまっていますが、それは過去の話。実際は、年収や長期でのキャリアプランに折り合いをつける必要があることに加え、スキル習得に向けた努力なしには生き残ることが難しい職種なのです。
事務職は、「事務のスペシャリストになりたい」「自分からどんどん発信して業務効率化・改善していきたい」と、業務内容自体にやりがいや適性を感じられる方が目指すべきキャリアです。
自分が事務職に合っているかを深く考えず、なんとなくイメージで「事務職がいいな」と思っている女性には、正直おすすめしません。そうでないと、理想の働き方から遠ざかってしまいます。
「じゃあ何の仕事を選べばいいの?」と思った方。女性が安定して長く働けるおすすめ職種をご紹介します。
クライアントと長期的に関係を築ける!顧客サポート職
お客様が個人なのか、法人なのかによって仕事内容が異なりますが、法人相手の顧客サポートの場合は、営業がサービス導入の契約をとった後のフォローがお仕事の中心です。
自社サービスを導入いただいた企業に対して、細やかなフォローで顧客満足度を上げ長く自社サービスを利用し続けてもらえるようサポートを行います。売って終わりの商品ではなくサービスの継続利用が目的なので、お客様と長く良好な関係構築ができます。
「お客さんに喜んでほしい。ノルマのためにいらないものを売りつけるのは嫌」
「販売のように売って終わりではなく、お客様と長く付き合って関係構築したい」
「1社1社の顧客に対して長期的にサポートし、貢献したい」という方におすすめです。
条件面でも、法人対応になるため土日休みの可能性が高く、人と話すのが好きな方であればやりがいをもって長く続けることができる職種です。
安定して長く働きたいなら営業職
「営業職」という言葉を聞いただけで「ノルマがきつそう」「大変そう」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それは事務職と同様、大きく偏ったイメージです。
営業はそもそも「お客様にサービスを提供する部隊」。厳しい労働環境で働かなければいけない必要はどこにもありません。
むしろ「営業職に転職して働き方が改善された」という転職者がたくさんいらっしゃいます。実際、営業職に転職するメリットがこちら。
・様々なお客様と交流でき、仕事を楽しめる
・AIに代替されづらい。長期で活躍できる
・働き方の改善の可能性が高い→シフト制の改善、残業削減
・約60~70万円の年収アップが見込める
・営業職を経験すると、別職種へのキャリアも拓ける
特に年収について注目すると、営業職は29~30歳で400万円を超える平均年収となっています。
20代女性の正社員・契約社員で働く方のうち、年収400万円以上をもらっている人が4人に1人しかいないことを考えると、年収を上げやすい分野の職種であることが分かります。
「人と話すのは好きだけど、働き方を変えたい」
「女性として無理な働き方をせず、長く働きたい」と思っている方にはぴったりの職種です。
まとめ
おすすめ職種をご紹介しましたが、これはほんの一部です。
世の中にはなんとは約156万件もの求人案件があると言われており、ネット上で探すことができる公開求人はごく一部に過ぎません。
社名や職種名など、求人票の基礎情報には記載しきれていない情報ほど、その求人が自分にフィットしているかどうかを確認する重要なものだったりするのです。
実際の仕事内容や配属部署の環境、職場のカルチャー、今後のキャリアに活かせるスキル習得のチャンスなどを知ることができれば、意外にも好条件の案件はいくつも存在します。
それを見逃して「なんとなく事務職かな」と考えてしまうのは非常に勿体無いことではないでしょうか。
転職で叶えたいことは何か?
残業を減らしたいのか、土日休みにしたいのか、年収を安定させたいのかなど、希望を細かく分解してみましょう。
それが叶う正しい求人を求人を選ぶのが、転職成功の一番の近道です。
※こちらの記事は『type女性の転職エージェント』より転載しております