「事務=安定」はウソ!? 事務職への転職で後悔する女性に共通する3つの勘違い
女性の転職市場で常に高い人気を誇る事務職。Woman typeが実施したアンケート調査でも「事務職なら長く働き続けられそう」というイメージを抱く女性が実に6割以上を占めており、事務職への転職を希望している人も多かった。
事務職に対するイメージを聞いてみると「残業が少なそう」、「仕事が楽そう」などの意見が多く、「子育てとの両立もしやすそう」というコメントも寄せられていた。ライフステージの変化を見据え、事務職への転職を考える女性も少なくないようだ。
一方、「事務職といっても、企業によって働き方はさまざま。事務職に求められるスキルや資質も、旧来の常識とは変わりつつあります」と『type転職エージェント』キャリアアドバイザーの松本浩史さんは指摘する。
「安易に事務職を選ぶと、あとで後悔する可能性が高い」と警鐘を鳴らす松本さんに、女性たちが転職活動前に見直すべき「事務職についての“勘違いイメージ”」を3つのポイントで教えてもらった。
勘違いポイントその1
→事務職の仕事は簡単! ワークスタイルも安定している
「最近では、事務職を募集する企業は老舗の大手メーカーよりもIT・WEB系の中小・ベンチャー企業が中心。よって、事務職といっても業務量は比較的多く、ルーティン作業をコツコツこなすだけの人は必要とされません。周囲に指示されたことをコツコツとこなすよりも、業務改善を提案したり、自ら意見を発信しながら仕事を生み出せる事務職が求められています」(松本さん)
一言に事務職といっても、業界や企業規模が異なれば、ワークスタイルや仕事量は異なるものだ。
また、松本さんによると、「とにかく事務職になれればいい」と安易に転職先を決めてしまう人も多く、新しい会社に入ってもまたすぐに転職活動を再開する人もいるのだとか。
「特に、休日が不定期で立ち仕事の多い販売サービス系の職種で働いていた女性たちが、 “楽そう”というイメージで事務職を希望する場合が多いです。でも、実際に入社してみると『1日中デスクに座ってPCと向き合う仕事が案外つらかった』、『一緒に働く人のタイプが自分と違う』など待遇面以外の理由で辞めてしまうという話もよく聞きますね」(松本さん)
転職で後悔しないためには、自分が働く上で大切にしたいことや、自分に合った社風、仕事内容までしっかり熟考した上で転職先を選ぶことが大切。「事務職にさえなれればいい」と視野を狭めることがないよう注意しておこう。
勘違いポイントその2
→PCスキルが高いことが何より大切!
「高いPCスキルを持っていれば事務職としての市場価値が上がると考える人は少なくないのではないでしょうか。しかしながら、AI(人工知能)などの技術発展にともなって事務作業の機械化が著しく進んでいる今、高度なスキルがあるかどうかはそこまで重要とされません。むしろ大切なのは、“機械には代えられないモノ”を持っているかどうかです。
例えば、『この人がいると職場の雰囲気が明るくなるよね』と思われるような人間力とか、『あの人はいつもいい指摘をしてくれるよね』と思ってもらえるような課題発見能力など。そういった要素を重視する企業は多いと思います」(松本さん)
スキルはあるにこしたことはないが、それだけでは長く事務の仕事を続けていくことは難しい時代。「PCスキルさえあれば続けられるだろう」という安直な考えで事務職を選んでしまうと、採用する側とのミスマッチも起こりやすい。
勘違いポイントその3
→事務職なら育児と仕事を両立できる
「『出産や結婚を経ても長く働きたい』と将来を見据えて事務職への転職を希望する女性は多いのですが、事務職になったからといって出産後に同じポジションで働けるかどうかの保証はありません。
これは事務職に限った話ではありませんが、育休明けにまったく違う部署への異動を命じられる人も少なからずいるというのが現状です。結果的に、理想としていた両立生活ができずに退職してしまう女性もいます」(松本さん)
育休明けに自分が理想とする働き方を継続するためには、出産前にしっかりと会社で実績を残していることが大前提。たとえ子育て中でも「この人にいてほしい」と思ってもらえる人材でいることが、理想の働き方を実現するための第一歩だ。
安定しているイメージが強い事務職だが、安易に転職するリスクはさまざま。転職で後悔することがないように、いま一度自分の転職動機や大切にしたい価値観を見直してみよう。
【アンケート調査概要】
●調査方法:転職サイト『女の転職@type』の20代~30代女性会員へのWebアンケート
●調査期間:2016年12月13日~20日
●有効回答者数:308名
取材・文/藤本那奈子(編集部)