その異動、本当にハズレ? 「配属ガチャに外れた」で転職する前に知ってほしいこと

その異動、本当にハズレ? 「配属ガチャに外れた」で転職する前に知ってほしいこと

異動や育休復帰などで新しい配属先に移る人が多いこの季節。新天地でのスタートに期待を抱く一方で、「希望通りではなかった」「正直、配属にもやもやする…」と感じる人も少なくない。

いわゆる「配属ガチャ」に外れた気がして、やる気を失ったり、転職を考えたりすることもあるだろう。

このまま踏ん張るべきか、それとも環境を変えるべきなのか――。

そこで今回は、「人事のプロ」である人材研究所代表・曽和利光さんにインタビュー。「配属ガチャ」の裏側と、配属にモヤついたときの向き合い方について話を聞いた。

人材研究所代表 曽和利光さん

人材研究所代表
曽和利光さん

主に企業の人事部への採用コンサルティングなどを行う。1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て90年に京都大学教育学部に入学、95年に同学部教育心理学科を卒業。 (株)リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーを務めたのち、(株)オープンハウス、ライフネット生命保険(株)などで人事を担当。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで執筆する。著書に『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』、『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)がある

「配属ガチャ」は存在しない?企業が見ている“3つの基準”

 「配属ガチャに外れた」で転職する前に知ってほしいこと
編集部

異動や育休復帰のタイミングで、希望と違う部署に配属されることがあります。

いわゆる「配属ガチャ」を理由に転職することをどう捉えますか?

曽和さん

まず前提として、企業は配属を「ガチャ」のように運任せで決めているわけではありません。誤解されがちですが、そこには必ず意図があることは知っていてほしいですね。

編集部

配属を決めた企業の意図、ですか?

曽和さん

通常の企業の配属では、まず最も重視されるのが、現場が求める「能力」との適合です。そのうえで本人の「希望」を見て、最後に「性格」、つまりチームや上司との相性が考慮されます。

これまでは「能力があれば、できるだけ希望を叶える」のが良い配属とされてきました。ただ最近は、それだけではうまくいかないことが分かってきています。

編集部

どういうことでしょうか。

曽和さん

希望通りの部署に配属しても、「3年で3割」といわれる離職率が大きくは変わらないことが明らかになってきています。そこで注目されているのが、「性格」、いわゆるカルチャーフィットです。

編集部

人との相性、ということですね。

曽和さん

はい。上司やチームとの相性は、想像以上に重要です。

私も多くの企業で組織コンサルティングをしてきましたが、性格を踏まえた配置は、離職防止に非常に効果があります

だからこそ企業側も、「この部署で、この上司のもとで働けば成長できるのではないか」といった視点で配属を考えています。

本人からすると「外れた」と感じるかもしれませんが、実際には意図を持って決められているケースがほとんどです。

編集部

とはいえ、企業側も本人のことを完全には把握できていないケースもありますよね。

曽和さん

その通りです。だからこそ、まずは自分から確認することが大切です。

「なぜこの配属になったのか」を、配属担当者や上司に聞いてみる。それだけでも見え方は変わります。

「希望と違う」「配属ガチャに外れた」と感じてすぐに転職を考えるのではなく、まずは配属の意図を理解する。そこから始めるべきですね。

「仕事がつまらない」は思い込み?評価される人のシンプルな共通点

「配属ガチャに外れた」で転職する前に知ってほしいこと
編集部

とはいえ、希望していた部署から大きく外れてしまうと、モチベーションや出せる成果は下がってしまいますよね。

曽和さん

そうですね。ただ、配属に関わらず「どんな部署でも高い成果を上げるハイパフォーマー」には、ある共通するスキルがあるんですよ。

編集部

共通するスキル?

曽和さん

目の前の仕事を、自分なりに面白くする力」です。 自分の価値観や好奇心に引きつけて、仕事の進め方を工夫していくスキルのことで、人事用語では「ジョブクラフティング」の力と呼ばれています。

編集部

「仕事を面白がれるかどうか」ということですね。逆に言うと、配属によって成果が左右されるわけではない、と。

曽和さん

ええ。この力は、どの部署においても普遍的に求められる、重要な能力です。

厳しい言い方にはなりますが、「配属ガチャに外れた」と感じてモチベーションを落としてしまう人は、この力が十分ではないとも言えます。

編集部

つまり、面白い仕事と面白くない仕事があるのではなく、仕事を面白くできる人と、そうでない人がいると。そういわれると耳がイタい……。

曽和さん

ただ裏を返せば、どんな環境でも仕事を面白くできる人が評価される、ということです。

たとえば、「営業はつまらないからマーケに行きたい」と言う人を、マーケティング部が積極的に受け入れるでしょうか。

編集部

正直、難しそうです。

曽和さん

ですよね。むしろ、営業で成果を出している人の方が、「次はうちに来てほしい」と思われやすい。 結果的に、希望が通りやすくなる近道にもなります。

編集部

なるほど。順番が逆なんですね。

曽和さん

「置かれた場所で咲きなさい」という言葉がありますが、まさにその姿勢で仕事に向き合える人こそが、結果的に自分のキャリアや配属を主体的にコントロールできるようになっていくのだと思います。

編集部

なるほど……。ただそれでも、希望しない部署に配属されると、転職も選択肢に入ってきます。この「配属ガチャ転職」を、転職先の企業はどのように評価しているのでしょうか。

曽和さん

転職理由として「配属ガチャ」を挙げると、企業側からは、配属の意図を理解できていない人、あるいは仕事を選り好みする人と受け取られやすく、評価は高くならないでしょう。

結果として転職の可能性も狭まりかねません。「ガチャだった」と捉えてしまうこと自体が、自分の評価を下げてしまうのです。

編集部

厳しいですね……。

曽和さん

ただし、企業側の判断ミスによって、どう考えても適性に合わない部署に配属されてしまうケースもゼロではありません。

その場合は、何が想定と違っていたのか、その状況に対して自分がどのように行動したのかを、具体的に説明することが重要です。なぜ転職に至ったのか、そのプロセスを言語化できていれば、評価は大きく変わってきます。

編集部

たとえば女性の場合、育休復帰後に「配慮」で負担の軽い業務に回されてしまう、いわゆる“マミートラック”もありますよね。この配属についてはどうでしょうか。

曽和さん

これも本質は同じで、「言わなければ伝わらない」という問題です。人事は配慮のつもりでも、本人にとっては機会損失になっている。だからこそ、配属の意図を確認すること、自分の希望を伝えることの二つが重要になります。

キャリアは“できること”から広がる

「配属ガチャに外れた」で転職する前に知ってほしいこと
編集部

「配属ガチャに外れた」とがっかりする前に、配属の意図を知り、仕事を面白がることが大切だと分かりました。では、どうすれば「仕事を面白がれる人」になれるのでしょうか?

曽和さん

まずは、同じ部署で働く先輩に、その仕事の面白さを聞いてみることです。

人によって、仕事に意味を見いだすポイントは違うからこそ、一人だけでなく、複数の人に話を聞いてみるといいでしょう。自分なりに納得できる視点が見つかるはずです。

あとは「自分の希望が本当にやりたいことなのか」を、一度疑ってみることも大切です。

編集部

自分の希望を疑う……?

曽和さん

最近はキャリア教育の影響もあり、「やりたいこと(Will)」を明確にすべきだと言われますよね。ただ、それが本当に自分の意思なのかは、意外と曖昧なことが多いんです。

編集部

確かに、就活や転職活動のタイミングで「言語化しなければ」とむりやり考える人も多そうです。

曽和さん

「本当にやりたいこと(Will)」なのかを見極めるためには、3つの視点で考えることが必要です。

自分が「やりたいこと(Will)」は…
・なぜやりたいと思ったのか(きっかけ)
・その分野について自分の意見があるか(意見)
・その実現のために何か行動をしているか(行動)
曽和さん

実は、この3つを明確に説明できる人は意外と多くありません。

多くの場合、「やりたいことを決めなければ」という焦りから、後付けで設定しているんです。その状態だと、かえってキャリアの選択肢を狭めてしまうこともあります。

編集部

では、どう考えればいいのでしょうか?

曽和さん

キャリアがうまくいっている人の多くは、逆の順番で考えています。「やりたいこと」からではなく、「できること」から始めているのです。

「できることに取り組む → 成果が出る → 評価される → 面白くなる」。このサイクルで、仕事への納得感が生まれていきます。

編集部

最初から好きな仕事を選んでいるわけではないんですね。

曽和さん

できることに取り組めば成果が出て、評価される。その積み重ねが手応えや喜びにつながり、やがてその仕事自体が好きになっていく。

そうして振り返ったときに、「これが自分の天職だ」と思えるようになる。おおよそ30歳前後で、その感覚にたどり着く人が多い印象です。

編集部

最初に決めるのではなく、あとから見えてくる、と。

曽和さん

はい。最初からキャリアの正解を決める必要はありません

与えられた環境でできることに向き合い、積み重ねていく。その過程の中で、自分の軸は自然と形づくられていきます。

「配属ガチャに外れた」と嘆く前に、まずは目の前の環境でできることをやってみる。そうした選択もある、ということは知っておいてほしいですね。

文/宮﨑まきこ 取材・編集/大室倫子(編集部)

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