ベッキー『あいの里』シーズン3に学ぶ、大人の挑戦は“何かを足す”より“手放す”から始まる
新しいことに挑戦したい。でも、毎日にそんな余裕はない——。大人の挑戦を難しくしているのは、意欲のなさよりも、日々の“空き容量”のなさなのかもしれない。
「本当に新しい風を吹かせたいなら、手放さないといけない。容量を空けたら、その分だけ幸せが入ってくると思っているんです」
そう話すのは、Netflixリアリティシリーズ『あいの里』シーズン3で、田村淳さんとともにスタジオMCを務めるベッキーさんだ。
35歳以上の男女が、“人生最後の恋”を探す同番組。これまでに築いてきた仕事や立場、生き方がある中で、それでも誰かを好きになり、思いを伝える姿を、ベッキーさんは「本当にかっこいい」と話す。
住民たちを見守る中で感じた「大人の挑戦」の難しさと面白さ。そして、ベッキーさん自身が今、何を手放し、何を大切にしているのか。新しいものを受け入れるための“容量”のつくり方を聞いた。
ベッキーさん
1984年3月6日生まれ。2000年、テレビ東京系『おはスタ』でデビュー。以降、テレビ、ラジオ、雑誌、CMなどで活動。バラエティー番組などへの出演の他、音楽や演技、アートなどの分野でも活躍中 ■X:@Becky_bekiko ■Instagram:@becky_dayo
大人が「失敗」を見せるのは勇気がいる
『あいの里』シーズン3の舞台は、富士山麓の赤いヴィンテージハウス。集まった35歳以上の男女は、畑仕事や家の修繕をしながら、残りの人生を共に歩むパートナーを探す。
若い頃より背負うものが増えた大人たちが、誰かを好きになり、思いを伝える姿を、ベッキーさんは「本当にかっこいい」と話す。
学生時代だって、告白するのってめちゃくちゃ緊張したじゃないですか。振られたらかっこ悪い、怖いという気持ちもある。そんな世界に50代、60代の人たちも飛び込んでいくんです。
普段は「先生」と呼ばれているような人も、自分を全部さらけ出さなければならない。失敗する姿を見せる可能性もあるのに挑戦するのは、本当に勇気がいると思います。
今シーズンを一言で表すなら「学び」。中でも強く感じたのが、第一印象や一部の言動だけで、その人を決め付けてはいけないということだった。
例えば、動画配信業を営む39歳のしぃくん。常にテンションが高くて陽キャな彼に、最初は「私とタイプが違い過ぎる…」って感じていたんです。
しかし、しぃくんが過去の病気による後遺症を抱え、いつ発作が起きるか分からない不安と共に生きていることを知り、見え方が変わったという。
限りある時間の中で、少しでも多く「ありがとう」や「好き」を伝えたい人なのかもしれないと思いました。背景を知ると、「だからこの言動につながっているんだ」と結び付いて、最終的には大好きになるんですよね。
実生活でも、一部分だけを切り取って判断するのではなく、ちゃんとその人全体を見るべきだと思うようになりました。
スタジオでは、住民たちをただ見守るだけでなく、時には強めのツッコミも入れる。そこにも、住民一人一人の魅力を伝えるための、MCとしての判断がある。
例えば、淳さんがパクチー(※住民の一人)を立てるなら、私はあえて逆の視点からいこう、とか。
ただ言いたいことを言っているわけではなく、ポジショニングの感覚です。ツッコミを入れながらも、「この人のここはすてきだよね」と視聴者に思ってもらえるように意識しています。
「全部自分で」を手放すことも、大人の挑戦
『あいの里』で住民たちがさらけ出すのは、恋心だけではない。これまで「こう生きる」と決めてきた、自分なりのルールも揺さぶられる。
『あいの里』シリーズは、みんなが自分の生き方をぶっ壊して、何かにチャレンジしている。だから本当に最高だなと思います。
何かを始めることだけが挑戦ではない。仕事や家庭ですでに毎日が埋まっている大人にとっては、これまで正しいと信じてきたやり方を変えることにも、同じくらい勇気がいる。
ベッキーさんにとって最近の大きな“アップデート”は、長年守ってきた「できる限り全部自分でやる」というルールを変えたことだった。
私はこれまで、仕事も家のことも、子育ても、常に「自分でやらなきゃ」と思っていました。例えば家事代行を頼むことにも、罪悪感があったんです。「そこだけは頼まない。できる限り全部自分でやるぞ」って。
でも、限界が来て、最近初めて勇気を出してお願いしてみたら、めちゃくちゃ良かった。1回来てもらうだけでも、家の空気も、私の心の持ち方も変わりました。
「やらない」と決めていたことをやるようになったのは、私にとって大きなアップデートです。
「全部自分で」というルールは、掃除だけではない。料理も、以前は無添加やオーガニックの食材を使い、「100%自分で作る」と決めていた。それでも、こだわりを緩めてみると、生活にも気持ちにも少しずつ余白が生まれた。
本当に新しい風を吹かせたいなら、何かを手放さないといけないと思うんです。メモリースティックみたいなもので、容量を空けたら、その分だけ幸せが入ってくるんだなって。
……メモリースティックって言葉自体、もう古いかもしれないですけど(笑)
もちろん、容量を空けるために、大切なものまですべて諦める必要はない。何を手放すか迷ったとき、ベッキーさんはそのこだわりの重要度を0から10で考える。
無添加やオーガニックの食事は、以前の私にとっては重要度10。でも、今の生活で続けるのは無理だと思ったら、「本当に10かな。4くらいかも」と捉え直して手放す。そうやって振り分けながらやっています。
仕事でも、「全部自分で」を見直した。例えば、TV番組の事前アンケートがPDFで届いたとき。以前は回答しやすいようにテキスト化する作業まで自分でしていたが、今は周りに頼んでいる。
20代の頃は、それも全部自分でやらなくてはいけないと思っていました。でも、今は仕事に加えて家事や育児もある。
子どもが泣いてる横で、必死にアンケートをテキスト化していた時に「これは健全じゃない。パンクする前に誰かに頼まなきゃ」と気付きました。
20代の自分が決めた「全部自分で」というルールを守り続けるのではなく、今の生活や役割に合わせて、自分が担う範囲を更新していく。手放すことは、諦めることではない。限られた“容量”を何に使うか、選び直すことなのだ。
「悔しさ」が次の仕事のガソリンになる
手放すものを決めると、反対に、手放したくないものも見えてくる。ベッキーさんにとって、その一つが「もっと仕事を良くしたい」という思いだ。
私、まだ仕事で100点を出せていないと思っているんですよ。だから「もっともっと良くしたい」っていう気持ちがずっとあって。
その苦しさというか、悔しさがガソリンなのかもしれません。「今日、うまくできなかった」「私、やっぱりMCが下手じゃん」と思うことが、次の収録へのモチベーションになるんです。
収録後に一人で反省会をして、オンエアを見た後にも反省する。「ここが駄目だった」と頭の中にメモして、その記憶が新しいうちに次の収録へ行く。「前回はあれが駄目だったから、今日は頑張るぞ」って。
うまくいかなかった悔しさを、次の挑戦へつなげる。
その姿勢は、『あいの里』で、失敗する怖さを抱えながら恋に飛び込む住民たちにも重なる。番組を見た人の心もまた、恋愛に限らず、何か新しい方向へ動くかもしれない。
今回の『あいの里』シーズン3は、恋愛リアリティ番組が苦手な人や、「人生つまらないな」と感じている人にも見てもらいたいですね。
番組を見て、「これは自分も気を付けよう」かもしれないし、「私も何かに挑戦してみよう」かもしれない。何かしらの方向に、きっと心が動くはずです。
見たら絶対に沼りますから! 初めての方はシーズン3から見て、後から1と2に戻る“スター・ウォーズ方式”もおすすめです。どのシーズンから見ても楽しめるので、ぜひ見てください!
失敗する姿を見せることも、これまでの自分ルールを手放すことも、積み上げてきたものがある大人ほど勇気がいる。
けれど、手放すことは、これまでの自分を否定することではない。限られた“容量”の使い道を選び直すことも、大人の挑戦なのだ。
取材・文/大室倫子(編集部) 撮影/笹井タカマサ
Netflixリアリティシリーズ『あいの里 シーズン3』独占配信中
35歳から60代の男女が人生最後の恋を求めて、富士山麓のヴィンテージハウスで共同生活を送る。
笑いあり、涙あり。想像もしない過去を背負った大人たちの恋心が再び動き出す!
スタジオMC:田村淳、ベッキー
ナレーション:神谷浩史
主題歌:見つめていたい(Every Breath You Take) / ポリス(The Police)
・11月3日(火) 第21話〜第23話


